コンクリート試験とは?回数や試験項目・基準値を一覧で解説

コンクリートは建築や土木構造物を支える重要な材料であり、その品質管理には「コンクリート試験」が重要です。施工前後に実施される各種試験は、流動性や作業性を確認するものから、鉄筋腐食の原因となる塩化物イオン量の測定、温度管理、圧縮強度や曲げ強度を確認するものまで多岐にわたります。これらはJIS規格や日本建築学会、土木学会の仕様書などに基づいて行われ、結果は構造物の安全性と耐久性を左右します。

当記事では、コンクリート試験の基本的な考え方や実施回数、代表的な試験方法と基準値について解説します。

コンクリート試験機のレンタルはこちら

 

1. コンクリート試験とは

コンクリート試験とは、生コンクリートが適切な流動性や分離抵抗性を持ち、硬化後に十分な強度や耐久性を発揮できるかを確認するための試験です。日本産業規格(JIS A 5308:2019 レディーミクストコンクリート)をはじめ、建築分野では日本建築学会の「建築工事標準仕様書・同解説JASS5」、土木分野では土木学会の「コンクリート標準示方書」や発注者の仕様書に基づき実施されます。

主な試験方法は、一般的な圧縮強度試験、舗装コンクリートに用いる曲げ強度試験に加え、必要に応じて割裂引張試験や静弾性係数試験などがあります。コンクリートは施工後にしか強度が確認できない特性を持つため、試験は品質確保の上で欠かせない工程です。

 

1-1. コンクリート試験の回数

コンクリート試験の回数は、検査の種類や打設量によって異なります。生コンの強度検査には、JISに基づく受入れ検査とJASSに基づく構造体強度推定検査があり、それぞれ供試体の採取方法が異なります。

JISでは1日1回以上、または150m³ごとに任意の運搬車から供試体を採取し、1材齢につき3本の平均値で評価します。JASSでは打込み日や工区ごと、かつ150m³ごとに行い、3台の運搬車から1本ずつ採取した供試体を用います。

また品質試験としてスランプ・空気量・温度・塩化物イオン濃度の4項目を実施し、必要に応じて圧縮強度試験のテストピースも作成します。品質試験の頻度は、1日の打設量が150m³を超える場合は午前と午後の2回、150m³以下は1回が目安です。

出典:全日本建築士会「生コン強度検査」

 

2. 主なコンクリート試験の種類と基準値の一覧

コンクリートの品質を確保するためには、施工前後でさまざまな試験を行い、基準値を満たしているか確認することが重要です。ここでは、スランプ試験や空気量測定、塩化物含有量試験、温度測定、強度試験といった代表的な方法と基準値について解説します。

 

2-1. スランプ試験・スランプフロー試験

スランプ試験は、生コンクリートの流動性を確認するための代表的な試験です。スランプ値とは、硬化前の作業性(ワーカビリティー)を示す指標で、単位はcmで表します。値が大きいほど流動性は高く、建築用では一般に15~18cmが適正とされます。ダムなどの土木工事では、強度を重視してより低い値が用いられます。

試験は、スランプコーンと呼ばれる円錐状の器具にコンクリートを3層に分けて詰め、突き棒で突き固めた後、コーンを垂直に引き上げて残った試料の沈下量を測定します。通常30cmの高さから何cm下がったかを測り、0.5cm単位で評価します。流動性が過度に高く、コンクリートが水たまり状に広がる場合には、沈下量の代わりに広がりの直径をスランプフロー値として測定します。測定により、構造物の種類や施工条件に応じた適正な品質管理が可能になります。

 

2-2. 空気量測定

空気量測定とは、生コンクリート中に含まれる気泡の量を測定し、適正範囲に収まっているかを確認する試験です。コンクリート中の気泡には、自然に混入する大きな気泡(エントラップトエア)と、AE剤により均一に分散させた微細な気泡(エントレインドエア)があり、特に後者は作業性の改善や耐凍害性の確保に重要な役割を果たします。空気量が不足すると凍害に弱くなり、過剰になると圧縮強度が低下するため、適切な管理が必要です。

JIS A 5308では、普通・舗装・高強度コンクリートで4.5±1.5%、軽量コンクリートで5.0±1.5%が基準値とされています。測定方法には、空気室圧力方法(JIS A 1128)、質量方法(JIS A 1116)、容積方法(JIS A 1118)が規定されており、骨材の性質や条件に応じて使い分けます。特に圧力法が一般的ですが、多孔質骨材を用いる場合は質量法を選ぶなどの注意が必要です。

 

2-3. 塩化物含有量試験

塩化物含有量試験とは、硬化コンクリート中に含まれる塩化物イオン量を測定し、鉄筋やPC鋼材の腐食リスクを評価する試験です。塩化物イオンは鋼材腐食を促進する代表的な劣化因子であり、その濃度把握は構造物の耐久性評価や将来の劣化予測に必要です。試料はコア採取やドリル削孔粉により得られ、規格としてJIS A 1154やNDIS 3433が用いられます。

測定方法には、湿式分析(電位差滴定法や電量滴定法)、機器分析(蛍光X線分析)、さらにEPMAによる面分析があります。湿式分析は精度が高く、電量滴定法は迅速性に優れます。蛍光X線は非破壊かつ現場適用が可能で、EPMAは塩化物イオンの分布解析に有効です。これらの結果を基に、設計基準で定められた限界値と比較し、耐久性確保のための補修・補強計画に活用します。

 

2-4. 温度測定

温度測定とは、生コンクリートの温度を確認し、品質や施工性、耐久性に影響する温度管理を行うための試験です。規格はJIS A 1156「フレッシュコンクリートの温度測定方法」に定められており、接触式の温度計を用い、試料を容器に入れて直射日光や風を避けた環境で測定します。

温度計は容器中央に垂直に挿入し、感温部を十分に浸漬させて安定した示度を読み取ります。表示は1℃単位で、採取から5分以内に記録するのが原則です。測定に用いる温度計にはガラス製棒状温度計、抵抗温度計、熱電対式、バイメタル式などがあり、それぞれJIS規格に準拠します。一般に挿入深さは60mm以上とし、測定値の誤差を避けるため熱的平衡を確保することが求められます。適切な温度管理は、硬化不良やひび割れの防止に直結し、コンクリートの長期耐久性を確保する上で必要な工程です。

 

2-5. 強度

コンクリートの強度は構造物の安全性に直結する重要な性能の1つであり、一般的には圧縮強度を指します。建築物や土木構造物の設計基準にも用いられ、道路舗装や滑走路では曲げ強度が重視されます。また、変形特性に関わる静弾性係数や、引張性能を確認する割裂引張強度も重要な指標です。強度試験は、建築分野ではJASS5、土木分野では発注者仕様書に基づき実施され、規格としてはJIS A 1108(圧縮強度試験)などが基本となります。

試験方法は圧縮強度試験(JIS A 1108)、曲げ強度試験(JIS A 1106)が代表的で、供試体の平面度はJIS A 1132で厳格に定められています。試験時には耐圧試験機を用い、必要に応じて供試体を研磨し精度を確保します。さらに静弾性係数試験ではコンプレッソメータやひずみゲージを使用し、割裂引張試験では圧縮荷重から引張強度を算出します。これらの試験により、構造物の長期的な耐久性と安全性を担保することが可能になります。

 

まとめ

コンクリート試験は、生コンが施工後に必要な強度や耐久性を発揮できるか確認するために行われ、JIS A 5308をはじめ各種規格や仕様書に基づき実施されます。

主な検査には、流動性を確認するスランプ試験、作業性や耐凍害性に関わる空気量測定、鉄筋腐食リスクを評価する塩化物含有量試験、品質管理に直結する温度測定、さらに圧縮強度や曲げ強度、静弾性係数などを測定する強度試験があります。これらを組み合わせることで、施工後の構造物の安全性と長期的な耐久性を確保します。

コンクリート試験機のレンタルはこちら