製造業のカーボンニュートラルとは|メリットや取り組み事例を解説

カーボンニュートラルとは、二酸化炭素やメタンをはじめとした温室効果ガスの排出量から、植林や森林管理による吸収量を差し引いた合計を実質的にゼロにすることです。日本における二酸化炭素排出量の割合は産業部門が最も多く、産業部門から排出される二酸化炭素のうち9割以上を製造業が占めています。

当記事では、製造業にカーボンニュートラルが求められる理由や、製造業がカーボンニュートラルに取り組むメリット、取り組み方と事例などを解説します。製造業におけるカーボンニュートラルの重要性が知りたい方は必見です。

1.製造業にカーボンニュートラルが求められる理由

現在、気候変動に伴う地球温暖化が深刻化し、世界中で自然災害が多発しています。日本でもゲリラ豪雨や猛暑などのリスクが高まることが予想されている深刻な問題です。そこで、世界中の企業が二酸化炭素排出量を減らすための取り組みを行い、地球温暖化に歯止めをかけようと努力しています。

数ある業種の中でも、製造業におけるカーボンニュートラルの重要性の高さは注目すべきポイントです。全国地球温暖化防止活動推進センターによると、2021年度の日本における二酸化炭素排出量の割合は産業部門が最も多く、35.1%でした。

【日本の部門別二酸化炭素排出量(電気・熱配分後)】

産業部門 35.1%
運輸部門 17.4%
業務その他部門 17.9%
家庭部門 14.7%
工業プロセス 4.0%
廃棄物 2.8%
エネルギー転換部門 7.9%

出典:全国地球温暖化防止活動推進センター「日本の部門別二酸化炭素排出量(2021年度)」

産業部門から排出される二酸化炭素のうち、9割以上が製造業によるものです。製造業は電気や熱の使用量の多さが二酸化炭素の排出につながっているため、省エネが求められています。

カーボンニュートラルとは何か簡単に解説|取り組み方法と必要性も

2.製造業がカーボンニュートラルに取り組むメリット

製造業がカーボンニュートラル化を進めていけば、時代の要請に応えられるだけでなく、さまざまなメリットがあります。以下では製造業がカーボンニュートラルに取り組むメリットを3つ紹介するため、参考にしてください。

2-1.電力コストの削減につながる

製造業は膨大な電力を消費する業種であり、カーボンニュートラル化を進めるためには省エネを推進しなければなりません。省エネを推進すれば、二酸化炭素の排出量を抑えられるだけではなく、電力コスト削減につながる点が大きなメリットです。

工場やオフィスの節電はもちろん、生産過程で生じるエネルギー消費量の削減にも取り組むことで、電気やガスといった固定費の削減が期待できます。また、原材料や加工費のコストダウンに成功すれば、利益の拡大にもつながるでしょう。

2023年現在、物価高やガス・電気料金の値上げは続いており、今後の価格高騰も懸念されています。今から省エネに成功すれば、将来的なコスト増加のリスクも抑えられるでしょう。

2-2.資金調達で優位に立てる

金融機関では、融資先の評価基準の1つとして、温暖化対策への取り組みを加味するケースが増えています。国際的に脱炭素化に向けた動きが高まる中、カーボンニュートラルを全く意識していない企業は金融機関からも厳しい目で見られることは避けられません。一方、カーボンニュートラル化に取り組んでいる企業は長期的な成長が見込めるとして信頼性が高まりやすく、資金調達で優位に立てる点が大きなメリットです。

また、脱炭素経営を進める企業への融資条件の優遇や、再生可能エネルギーの導入などに対象を限定した融資の実施に取り組む金融機関も増えています。将来的な企業の資金調達のためにも、企業のカーボンニュートラルの推進は今や必須と言えるでしょう。

2-3.企業イメージが向上する

企業のカーボンニュートラル化に向けての取り組みには消費者も注目しています。そのため、脱炭素化に向けた取り組みを行えば企業への信頼感が高まり、イメージアップが期待できる点がメリットの1つです。

二酸化炭素排出量の削減に成功すれば、先進的な企業として自治体などから表彰されたり、メディアで取り上げられるケースもあります。環境問題と向き合う姿勢が消費者に届くと、企業のファンが生まれ、製品やサービスの売上アップにもつながるでしょう。

企業のイメージアップにより、競合他社との差別化ができ新たなビジネスチャンスを掴める可能性も高まります。また、カーボンニュートラル化によって若い世代の関心を引ければ、人材確保においても優位に立てるでしょう。

3.製造業にできるカーボンニュートラルの取り組み方と事例

企業は、カーボンニュートラルに向けての具体的な取り組みを実施して、二酸化炭素排出量の削減を実現させることが大切です。カーボンニュートラルを進めるために、製造業にはどのような取り組みができるのか、事例を交えて解説します。

3-1.工場や社屋全体の二酸化炭素排出量を計測する

自社の現在の二酸化炭素排出量を把握しなければ、カーボンニュートラルに取り組んだ後にどのような効果を得られたかが分かりません。そのため、カーボンニュートラルに取り組む前に工場や社屋全体の二酸化炭素排出量を計測し、削減量の見える化につなげることが大切です。

二酸化炭素排出量は、業務日報や請求書等を用いて算定できます。具体的には、活動量(電気や燃料の使用量)に活動量当たりの二酸化炭素排出量を掛けることで算出が可能です。日々の業務や事業活動で発生する二酸化炭素排出量を知ることで、カーボンニュートラルに向けた取り組みへの理解が深まるでしょう。

また、設備が老朽化・劣化している場合は稼働効率が落ち、排出量に悪影響を与えるため、機器の稼働状況の可視化も重要です。

3-2.機器や設備の省エネ化を進める

工場などの二酸化炭素排出量の計測結果を元に、どのような削減対策が可能かを洗い出しましょう。小さな案もすべて持ち寄り、社内で議論して可能な限りアイデアを集めることが大切です。例えば、明かりを蛍光灯からLED電球へ切り替えるだけでも省エネ対策になります。冷房設定温度の緩和や照明のこまめな消灯といった小さな行動も、積もり積もれば二酸化炭素排出量削減につながるでしょう。

省エネ性能の高い機器や設備を導入し、エネルギー使用量を節約することも重要です。老朽化・劣化している機器や設備があれば、この機会に省エネ化を進めるとよいでしょう。

また、自社で発電した電力を生産に利用する再エネも重要な取り組みです。実際の事例として、太陽光発電設備を導入し、消費電力を再エネ化した例もあります。発電した電力を自家消費することで、2021年度の全消費電力の内、日照時間の多い時期には約70%を太陽光発電でまかなえています。

3-3.工場をスマート化・DX化する

テクノロジーの急速な発展に伴い、生産現場のリアルタイムなデータの収集・蓄積やAIによる高度な分析・将来予測が可能となりました。これらのIT技術を駆使することで生産性の向上や品質管理などの効率化を図ることをスマート化と言います。工場をスマート化することで、カーボンニュートラルも効率的に推進することが可能です。

工場のスマート化によって自社の二酸化炭素排出量の95%を10分ごとに見える化することに成功した例もあります。さらに二酸化炭素排出量における無駄な部分を特定し、削減につなげる独自技術を研究開発して、脱炭素化の推進に貢献しています。

4.カーボンニュートラル達成のための製造業の課題

カーボンニュートラルに取り組むことによる製造業のメリットは大きいものの、目標達成のための課題も少なくありません。カーボンニュートラルに取り組む上で製造業が抱える課題は主に以下の2つです。

導入コストがかかる
製造業がカーボンニュートラルを達成するためには、節電やエネルギー消費の抑制だけでは足りません。省エネ設備の導入や工場のスマート化などが必要になり、都度導入コストがかかります。二酸化炭素排出量の削減は費用対効果が高いものから選択するため、目標が高いほどコストが増加するのも注意点です。

費用面での負担を抑えながら効率よくカーボンニュートラル化を目指すためには、太陽光発電システムなどの再エネ設備の導入を検討するのがおすすめです。

モチベーションの維持が必要になる
カーボンニュートラルに向けた取り組みでは二酸化炭素という目に見えないものを扱うため、効果を実感しにくいという特徴があります。特に製造現場においては削減効果が分からず、モチベーションの低下につながりやすいため注意が必要です。

これから脱炭素経営を始める場合は、取り組みの結果を見える化して全社で共有し、モチベーションの維持に努めるとよいでしょう。

まとめ

2021年度の日本における部門別二酸化炭素排出量は産業部門が35.1%と最も多く、産業部門のうち9割以上を製造業が占めています。カーボンニュートラルに取り組むには、工場や社屋全体の二酸化炭素排出量を計測したり、機器や設備の省エネ化を進める必要があります。

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