pHの基準値とは?水道水や排水の基準値と測定方法を紹介

水の性質を知る上で欠かせない指標の1つが「pH」です。pHとは、液体が酸性かアルカリ性かを示す数値で、身の回りにある水や飲み物、土壌の状態にも関係しています。pHは、飲料水の品質管理や農業、工業排水の環境基準など、さまざまな分野で重要な役割を果たしています。

当記事では、pHの基本概念から、用途ごとの基準値、測定方法を詳しく解説します。日常生活や専門分野でpHを正しく理解し、活用するための参考にしてください。

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1.pHとは?

pHとは、液体が酸性かアルカリ性かを示す指標で、水素イオンの濃度によって計測されます。pHは0から14までの数値で表され、pH7が中性、pHが7より小さいと酸性、7より大きいとアルカリ性です。

水の中では、水分子がごくわずかに水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)に分かれて存在します。水溶液内に水素イオンが多ければ酸性、水酸化物イオンが多ければアルカリ性を示します。

 

1-1.pHの違いによる水質の違い

pHの違いにより、水質は酸性・中性・アルカリ性の3種類に分類されます。

・酸性(pH0~6)

酸性の水は水素イオンが多く、すっぱい味が特徴です。pHが低いほど強酸性になります。たとえば、レモン果汁や酢はpH2前後、胃酸はpH1~2程度と非常に強い酸性です。

・中性(pH7)

中性の水は水素イオンと水酸化物イオンのバランスが取れた状態です。純水はpH7で、水道水や河川の水もほぼ中性に近い値を示します。

・アルカリ性(pH8~14)

アルカリ性の水は水酸化物イオンが多く、苦みやヌメリを感じる傾向にあります。pHが高いほどアルカリ性が強くなり、たとえば石鹸水はpH9~10程度、強アルカリの灰汁はpH13前後です。

水質管理を行うときは、pHの測定が欠かせません。特に工場排水や飲用水の管理では、環境基準を満たすpH範囲に調整する必要があります。

 

2.pHの基準値

水のpHは、その用途や環境によって適切な範囲が決められています。水道水やミネラルウォーターのpHは飲みやすさや健康に影響があり、工場排水のpHは環境保護の観点からきちんと測定する必要があります。また、土壌のpHは作物の成長に影響を与えるため、農業分野でも管理が必要です。以下では、それぞれのpHの基準値を解説します。

 

2-1.水道水

水道水のpH基準値は、水道法の水質基準によりpH5.8~8.6に定められています。

出典:厚生労働省「水道法第4条に基づく水質基準」

水質基準項目は安全性の高い水を供給するために設定されており、pHが基準範囲外になると、水の味や品質に影響を与えることがあります。

たとえば、pHが低い酸性の水はわずかに酸味を感じたり、配管の腐食を引き起こしやすくなったりします。反対に、pHが高いアルカリ性の水は苦みを感じやすく、肌に触れるとヌメリを感じます。一方、中性であれば特に味を感じることもなく、人間の体液のpH値に近いため、健康への影響もほぼありません。

水道水は地域や水源によってもpHが異なります。水質を一定に保つため、浄水場ではpH調整剤が使用され、問題のない範囲になるよう管理されています。

 

2-2.ミネラルウォーター

ミネラルウォーターのpH基準値も、水道水と同じく5.8~8.6と定められています。これは、飲料水として適切な範囲を維持し、健康に影響を与えないための基準です。

ミネラルウォーターの味は、pH以外にも、含まれるミネラル成分によって変化します。カルシウムやマグネシウムが多い「硬水」は独特の飲み心地がある一方、ミネラル含有量が少ない「軟水」はまろやかな口当たりが特徴です。

硬水はミネラル補給に適しており、スポーツ後やカルシウム摂取を意識する場合によく選ばれます。しかし、消化器官が敏感な人には負担になる可能性があるので注意が必要です。軟水は石鹸の泡立ちがよく、ミネラル分が残留しにくいため、洗濯や機器類のメンテナンスに向いています。用途に応じて、適切なミネラルウォーターを選ぶことが大切です。

 

2-3.排水

工場や施設からの排水は、環境への影響を防ぐために厳しく管理されており、pH5.8~8.6の範囲内に収めなければなりません。ただし、海に排水する場合は、より広い範囲のpH5.0~9.0が許容されています。

出典:環境省「水・土壌・地盤・海洋環境の保全」

出典:国防省「日本環境管理基準 第三部第9章 排水及び雨水」

排水のpHが基準を超えると、河川や湖沼に悪影響を与えたり、生態系を損なったりしかねません。酸性度の高い排水は金属物質を溶かして水質を悪化させ、アルカリ性度の排水は水中の生物に有害となる恐れがあるためです。

また、建設工事で発生する汚濁水も、pH調整が必要です。排水のpH管理は、環境保全と企業の社会的責任の観点からも重要です。

 

2-4.土壌

土壌のpHは、作物の成長に大きく影響を与えます。一般的に、農作物がもっともよく育つ土壌のpHは6.0~6.5の弱酸性です。しかし、作物によっても適したpHは異なり、酸性を好むものだけでなく中性寄りの性質を好むものもあります。

たとえば、酸性寄りのpH5.0~5.5では、サツマイモやミカンが代表的です。中性に近いpH6.5~7.0では、ホウレンソウやブドウが適しています。土壌のpHが適切でない場合、栄養の吸収が阻害され、作物の生育が悪くなりかねません。

出典:農林水産省「らくらく土壌診断の手引き 2土壌pH・ECの診断」

出典:東京都「土壌診断基準」

土壌のpHを目標値に近づけたい場合、石灰を使って酸性を中和したり、硫安を施用してアルカリ性を抑えたりする方法が挙げられます。定期的なpH測定と調整により、作物の品質を安定させ、収穫量の向上につなげられるでしょう。

 

3.pHを測定するには?

pHの測定方法は用途によって異なります。

学校の実験では、リトマス試験紙やBTB溶液などの指示薬で検査するのが一般的です。これらは試験紙や液体の色の変化によって酸性・中性・アルカリ性を判別できますが、正確な数値までは得られません。

工業分野や精密な測定が求められる場面では、ガラス電極法がよく用いられます。ガラス電極法は、ガラス電極と比較電極を組み合わせて電位差を測定し、pH値を算出する方法です。精度が高く、広範囲の液体の測定が可能なため、水質検査・管理や環境調査などの分野で活用されています。

 

3-1.pH測定器の選び方

pH測定器は、測定対象や使用環境に応じて適切な種類を選ぶことが大切です。

簡易的な測定には、コンパクトなテスター型が適しています。小型で持ち運びがしやすく、液体に直接浸すだけでpHを測定できる測定器です。ただし、精度はハンディ型ほど高くないため、排水や工業用水の管理など、より正確な水質分析が求められる場合は、ハンディ型のpHメーターが適しています。

測定対象によっても適した機器が異なります。水質測定なら一般的なpHメーターで問題ありませんが、土壌のpHを測定する場合は土壌酸度計が必要です。粘度の高い液体や化学薬品を測定する際は、詰まりにくい構造の測定器を選ぶと機器の寿命を延ばせます。

pH測定器は、精密なものほど高価になります。短期間の使用や特定のプロジェクトでのみ使う場合は、測定器のレンタルを活用するのも1つの方法です。レンタルなら初期費用を抑えながら、必要な性能の機器を使用できます。

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まとめ

pHは、液体や土壌の酸性・アルカリ性を示す指標です。水質管理や農業、工業排水などにはpHの適正値が定められており、pHの管理をきちんと行う必要があります。

pHの測定は、リトマス試験紙や指示薬でも行えますが、工業・産業分野ではpH測定器が使われます。pH測定器にもさまざまな種類があるので、用途に応じて選びましょう。適切な測定と管理を行うことで、水質や土壌の健全性を保ち、安全で快適な環境を維持できます。

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