風速計の測定用途別の選び方|5つの風速計の種類と原理も解説

風速計は複数種類あり、それぞれに向き不向きがあります。そのため、使用場所や計測したい項目などの用途に合わせて使い分けるのが一般的です。風速計を導入する際は、機器の原理についても把握しておきましょう。原理を知ることで、導入での失敗を防げます。

当記事では、風速測定に利用する風速計の概要から、風速計の主な種類と原理、風速計の選び方までを詳細に解説します。風速計の導入を検討している方は、ぜひ当記事を参考にしてください。

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1.風速測定に利用する風速計とは

風速計は、その名の通り風の速さを測定する機器です。

風速測定は、建設現場の安全管理や工場の環境測定など、多様な場面で使われています。工事現場では風速を1つの基準として安全管理をしていることから、風速測定は重要な役割を担っています。屋内の空調設備のメンテナンスや検査にも風速測定が使われることが特徴です。

風速を測ると一口に言っても、測定する風が「屋外にあるエアコン室外機の風」と「屋内の空調設備の風」では、利用する風速計が異なります。正しく風速を測るためには、用途に適した風速計を選ぶ必要があります。

1-1.そもそも風速とは

そもそも風とは、地面が静止しているとみなしたとき、地面に対する空気の動きのことをいいます。空気は常に動いているため、速さや方向は一定ではありません。

風速とは空気が移動する速さであり、単位はm/sで表します。1秒間に空気が何m移動したかを表し、風速15m/sの場合は1秒間に空気が15m移動したということになります。

最大風速が54m/s以上である場合、猛烈な台風と定義されます。54m/sは空気が1秒間に54m移動することを表すため、「猛烈な台風」と言われます。

2.風速計の主な種類と原理・特徴

風速計にはさまざまな種類があり、それぞれの原理や特徴を理解することで、より風速計への理解が深まります。ここでは、風速計の主な種類について、原理や特徴を解説します。

2-1.風車式(ベーン式)風速計

風車式(ベーン式)風速計は、ベーンと呼ばれるプロペラで受けた風による回転数から風速を算出します。風車式風速計の特徴としては、下記の3つが挙げられます。

  • 屋内、屋外を問わず使用可能
  • 構造が比較的シンプルで操作も簡単
  • 微風速の測定や小刻みな風速の変化への対応には不向き

風車式風速計は、風車の原理を利用しているため構造や操作が比較的シンプルで、測定する上での作業も煩わしくなく、屋内・屋外を問わずに使用できるメリットがあります。コンパクトなハンディタイプで安価なものも多く、気軽に手に入れやすい風速計です。

一方、小刻みな風速変化や微風の測定には向いていないなど、測定範囲が限られています。

2-2.風杯型風速計

風杯型風速計は、3〜4個の風杯(カップ)で風を受けたときのカップの回転数で風速の値を計算する風速計です。風杯型風速計の特徴は大きく分けて2つあります。

  • 屋外や高所での風速測定に最適
  • データ記録が可能なため長期測定にも対応可能

風杯型風速計は屋外現場の単管パイプやクレーンに取り付けて測定するため、主に屋外や高い場所の風速測定で使われます。また測定データの記録が可能なため、長期的に測定してデータを観測したい場合にも有効です。

風杯型風速計には、天候を気にせずに使用できる防水カップ式の機器もあります。

2-3.熱式風速計

熱式風速計は、加熱された細い金属線やセンサーを用いて風速を測定する風速計です。加熱された物体に風が当たると、その分冷却されて熱が失われます。熱が失われることで電気抵抗が少なくなった分を風速に換算して測定する仕組みです。

以前は熱線式風速計と呼ばれていましたが、最近は線ではない発熱体も多く使われているため、熱式風速計とも呼ばれています。熱線式風速計の特徴は次の4つです。

  • 屋内での測定に向いている
  • 微風速を高い精度で測定できる
  • 小型で軽量なものが多い
  • 温度測定などが可能なものもある

熱式風速計は、測定中の温度差が少ない屋内での測定に適しています。風速以外に風温や湿度・風音・風量・圧力なども同時に計測できる機能をもつ機器もあり、ニーズに合わせて商品を選べます。複数の測定項目を同時測定できるのは、大きなメリットです。また、小型で軽量な機器が多く、測定したい場所のスペースが狭い場合でも風速測定が可能です。

2-4.超音波式風速計

超音波式風速計は、向かい合わせた超音波送受信器の間を、超音波パルスがどれだけの速さで送受信されるかによって風速を測定する風速計です。特徴は大きく分けて下記の3つがあります。

  • 水平(2次元)だけでなく、鉛直(3次元)の風速測定が可能
  • 風速測定精度が高い
  • 湿度や気圧などの周囲環境に影響されにくい

超音波式風速計は他の風速計と異なり、水平(2次元)の風速だけではなく、吹き上げや吹き下ろしといった鉛直(3次元)の立体的な風速測定が可能な点が大きな特徴です。また、どのような速度の風でも高い測定精度を保てることも特徴的です。機械的に動く構造ではないため、周囲の環境変化にも対応できます。一方で、センサーが大型であること、価格が高いことが懸念として挙げられます。

2-5.風向風速計

風向風速計は、一方にプロペラ、もう一方に垂直尾翼が取り付けられており、風が吹いた時にプロペラの回転数から風速を、垂直尾翼が向く方向から風向を測定する機器です。特徴は大きく分けて2つあります。

  • 風向と風速の両方が測定可能
  • 種類が豊富

風向風速計は、風向と風速の両方を測定できます。そのため、台風や竜巻などの風向が重要となる自然災害対策にも有効です。また風向風速計は種類が豊富なため、環境重視なのか精度重視なのかなど、重視したいポイントに基づいて使い分けすることもできます。

3.【用途別】風速計の選び方

風速計は種類によって向いている用途が異なるため、使用用途に合わせて風速計を選ぶことが大切です。風速計の選定ポイントは、まず屋内と屋外で大別され、使用場所からさらに細かい用途に分かれます。ここからは、用途別に風速計の選び方を紹介します。

3-1.屋内の風速測定

屋内の風速測定に向いている風速計は「風車式風速計」「熱式風速計」「超音波式風速計」の3種類です。

屋内と一言で言っても、換気扇・クリーンルーム・住環境など、屋内のどこを測定するのかによって、向いている風速計は異なります。それぞれの主な用途は下表の通りです。

風車式風速計
屋内での主な用途
  • 室内の対流測定
  • 換気扇の風速測定
  • 空調設備の排気測定
熱式風速計
屋内での主な用途
  • クリーンルームの空気環境調査
  • 製造現場の室内環境調査
超音波式風速計
屋内での主な用途
  • クリーンルーム内の気流変化確認
  • 住環境や冷蔵庫内

3-2.屋外での強風監視や安全管理

屋外の風速測定に向いている風速計は「風車式風速計」「風杯型風速計」「超音波式風速計」「風向風速計」の4種類です。各風速計の主な用途は次の通りです。

風車式風速計
屋外での主な用途
  • エアコンの室外機
  • ドローン飛行
風杯型風速計
屋外での主な用途
  • 高所の強風監視
  • 鉄道やリフトなどの安全監視
超音波式風速計
屋外での主な用途
  • 工事現場の安全管理用
  • 交通機関の安全運転用
風向風速計
屋外での主な用途
  • 気象観測
  • 環境調査

ドローンの飛行や工事現場の安全管理は、風速が1つの指標となります。特に安全管理として風速計を使用する場合は、用途に合った機器で計測しましょう。

3-3.長期気象測定

気象観測や環境調査には風車式風速計も使われますが、長期気象測定には基本的に風向風速計を使います。風向風速計はデータ容量が大きいタイプが多いため、風速データを長期間残すことが可能です。

例えば、風の状態は航空機などの滑走距離や操縦性に大きく影響することから、空港では風向風速計が使われています。滑走路の決定や離着陸の許可などにおいて、風速計は重要な役割を担っています。

まとめ

風速計は、風の速さを測定できる機器です。安全管理が必要な工事現場などにおいて風速計が活用されます。

屋内・屋外や用途によって適切な風速計の種類があります。場所や用途に適した風速計を選ぶことで、より正確に計測することが可能です。

屋内には「風車式風速計」「熱式風速計」「超音波式風速計」、屋外には「風車式風速計」「風杯型風速計」「超音波式風速計」「風向風速計」が向いています。また、長期気象測定をする場合は風向風速計が最適です。

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