超音波厚さ計とは?使い方や原理・測定精度を高める選び方のポイント

超音波厚さ計は、鉄やステンレスなどの金属、樹脂、ガラス、プラスチックといったさまざまな素材の厚さを非破壊で正確に測定する装置です。トランスデューサーと呼ばれる超音波センサーを対象物の片面に当てるだけで厚さを計測できるため、測定が困難な場所でも簡単に使用できるのが特長です。

当記事では、超音波厚さ計の基本的な使い方や測定原理、そして測定精度を高めるための選び方のポイントについて詳しく解説します。測定の信頼性を高めるために、知っておくべき基本情報を確認しましょう。

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1.超音波厚さ計とは

超音波厚さ計とは、鉄、ステンレスなどの金属や樹脂、ガラス、プラスチックといった素材の厚さを把握するための測定装置です。対象の片面にトランスデューサーと呼ばれる超音波センサーを当てるだけで厚さを測定できるため、ノギスやマイクロメーターでは測定できない部分の測定などに用いられます。

超音波厚さ計で利用される超音波は、人間の耳には聞こえない20キロヘルツ以上の音波です。超音波が持つ、物質の境界面で反射する特性と、物質ごとに伝わる速度が異なる性質が、超音波厚さ計に利用されています。

 

2.基本的な超音波厚さ計の使い方・測定方法

超音波厚さ計の測定方法にはさまざまな種類があり、測定対象物や予想される腐食・減肉の進行度合いによって適切な使用方法を選ぶことが大切です。今回は、6つの基本的な超音波厚さ計の使い方を紹介するので、参考にしてください。

 

2-1.1回測定法

名前の通り測定箇所にトランスデューサーを1回だけ当て、表示された厚さを測定値とする使い方です。超音波厚さ計の最も基本的な測定方法であり、対象物の腐食・減肉の程度が小さい場合に適しています。

 

2-2.2回測定法

1回測定法で厚さを測定した後に、トランスデューサーを90度回転させ、同じ場所をもう一度測定する方法です。例えばパイプを測定する場合、1回目にパイプに対して垂直に測定したら、2回目は平行にして測ることになります。2回の測定結果のうち、表示された厚さが薄いほうを測定値として採用します。

2回測定法は、1回測定法に比べて精度が高い減肉検査ができる点が特徴です。そのため、腐食が進行していることが考えられる部分は、2回測定法を採用するのがベターと言えます。

 

2-3.多点測定法

測定する部分を中心とする円または楕円の内側を多数回測定する方法です。測定結果のうち、最も厚さが薄い値を測定値として採用します。

多点測定法は、局部腐食している場合の測定に有効な方法です。測定に用いる円または楕円の大きさは、腐食・減肉の状況によって判断します。測定範囲に指定がない場合は、測定する部分を中心に直径30ミリメートルの円内を測定するのが一般的です。

 

2-4.精密測定法

腐食が著しく進行している可能性がある部分に対して、減肉の分布状況の確認を目的として行う測定方法です。一般的には、測定点を中心に50×50ミリメートルの範囲を10ミリメートル間隔の格子状に分割し、交点で測定を行います。

精密測定法の測定結果の採用方法には2パターンあります。1つは、減肉が著しい部分の厚さと位置を記録する方法です。もう1つは、表示された厚さを等高線などで平面表示する方法となっています。

 

2-5.連続測定法

測定対象の厚さの変化を把握するための測定方法です。測定線上を連続的に測定(スキャン)することによって厚さの変化を確認します。指定がない場合は、測定線上を1回測定法によって5ミリメートル間隔で測定するケースもあります。

連続測定法は、測定断面の厚さの変化により、裏面の状況を推測する場合などに用いる方法です。測定結果は、事前に定めた厚さ以下だった測定値および測定した位置を記録するか、測定線に沿う厚さの変化を断面表示します。

ニ振動子探触子を使って測定する場合は、音響隔離面の向きを測定線と直角に保つことが大切です。なお、スキャンモード搭載の製品を選べば連続測定法を簡単に実施でき、広範囲の厚さ測定も可能になるため、必要に応じて購入やレンタルを検討するとよいでしょう。

 

2-6.管材の測定方法

配管やパイプといった管材は、外径が25ミリメートル以上か25ミリメートル未満かによって厚さの測定方法が異なります。誤った方法を採用すると正しい厚さが測定できないため注意が必要です。

管材の外径が25ミリメートル以上の場合、トランスデューサーを管材の軸方向に対して垂直に接触させる必要があります。管材の外径が25ミリメートル未満の場合は、まず外径25ミリメートル以上の場合と同様の測定方法を実施しましょう。次に、管材の軸に対してトランスデューサーを平行に接触させ、測定します。垂直・平行の測定結果のうち、薄い値を測定値として採用します。

 

3.超音波厚さ計の原理

超音波厚さ計で物体の厚さを測定するのに利用されている原理は、「パルス反射法」と「共振法」の2つです。超音波厚さ計を使って正しい測定をするためには、原理への理解が必要になるケースもあります。超音波厚さ計の原理2つについて解説するので、一度確認しておくとよいでしょう。

 

3-1.パルス反射法の原理

超音波厚さ計の原理として一般的なのがパルス反射法です。パルス反射法は、物体の中を超音波が往復する時間を測ることによって厚さを測定する方法を指します。超音波厚さ計においては、超音波パルスが発信されるのがトランスデューサーです。そして、測定対象物の表面と裏面で反射した超音波がトランスデューサーに戻ってくるまでの時間を測定することで、厚みを割り出します。

パルス反射法は広い範囲の厚さ測定に向いており、物体の片面から測定できる点が大きな利点です。ただし、材質にはそれぞれ固有の音速があり、超音波は材質ごとの音速で物体の中を伝わります。測定対象物の材質が変われば音速調整が必要になるため、正しい測定をするためには測定対象物の音速を正確に把握しておくことが大切です。

 

3-2.共振法の原理

共振法は、トランスデューサーから超音波を連続的に発信して共振周波数を測定する方法のことです。トランスデューサーから超音波を発信すると、測定対象物の内部で何度も反射を繰り返して、特定の周波数で共振が発生します。この周波数によって測定対象物の厚さを測定することが可能です。

共振法を採用した超音波厚さ計は、薄い材料の厚さ測定に適しています。共振法では高度な測定ができるという大きな利点がある一方、測定できる厚さの範囲が限定的で、測定対象物の両面から測定する必要がある点には注意が必要です。

 

4.超音波厚さ計の選び方

超音波厚さ計の選び方としては、以下の3つのポイントを踏まえることが重要となります。

  • 測定対象に応じて適切なものを使用する
  • 測定物の厚さや測定精度の高さを考慮する
  • 操作性や機能性を確認する

超音波厚さ計によって測定範囲が異なるため、測定対象となる物が何か、厚さはどのくらいかを考慮することが大切です。測定対象物の形状や材料によっては、一般的な超音波厚さ計を用いても正しく測定できないケースがあります。

また、測定したい厚さの範囲を考慮することも大切です。厚い材料もしくは極薄の材料を測定する場合は、測定範囲を確認の上、高精度測定が可能な超音波厚さ計を選択する必要があります。

操作性や機能性など、機器の使いやすさの面を確認するのも重要と言えます。ユーザーインターフェースは直感的か、メモリ保存機能つきかなど、ニーズに合った要素を備えた機種かをチェックしておきましょう。

初めて超音波厚さ計を使う場合、用途に適した機種を選べるか心配になる方も少なくありません。超音波厚さ計を本格的に導入する前に、以下のリンクをはじめとするレンタル商品を利用して、実際に使用感を確かめてみるのもおすすめです。

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まとめ

超音波厚さ計は、多様な素材の厚さを非破壊で測定できる優れたツールであり、その選び方と使い方によって測定精度が大きく変わります。測定対象物の特性に応じた測定方法を選択することで、正確で信頼性の高いデータを取得できます。

また、パルス反射法や共振法といった測定原理の理解も、超音波厚さ計を効果的に使用するためには欠かせません。導入を検討する際は、使用環境や測定精度に応じた最適な機種を選ぶことで、測定作業の効率と品質を向上させることができるでしょう。