温度計の種類|それぞれの特徴や仕組み・用途を分かりやすく解説

温度管理は、製造業や研究機関、医療現場など多くの分野で欠かせません。正確な温度の測定データは製品品質や安全性の維持に直結しており、用途に適した温度計の選定が大切です。

温度計には、センサーを対象物に直接当てて測定する接触式と、赤外線などを利用して離れた位置から測定する非接触式の2種類があります。

この記事では、代表的な接触式・非接触式の温度計について、構造や仕組み、メリットを解説します。選定に迷った際の参考資料としてお役立てください。

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1. 温度計には接触式・非接触式の2種類がある

温度計には、大きく分けて接触式と非接触式の2種類があります。

測定対象にセンサーを直接当てて温度を測るのが接触式で、気体や液体の内部温度を測定できる点が特徴です。

一方、非接触式は、対象物に触れずに赤外線などを利用して表面温度を測定します。測定時間が短く、移動物や高温物の計測に適しています。衛生管理や安全性が求められる場面でも有効です。

2. 代表的な接触式温度計の特徴と仕組み・用途

接触式温度計は、温度変化に伴う電気抵抗や圧力、膨張などの物理的性質を利用して計測するのが特徴です。種類によって精度や応答速度、対応可能な温度範囲に違いがあり、使用環境や用途に応じた選定が求められます。

以下では、主要な接触式温度計6種の仕組みと特徴を解説します。

2-1. 測温抵抗体

測温抵抗体(RTD:Resistance Temperature Detector)は、金属の電気抵抗が温度変化に応じて変化する性質を利用して温度を測定するセンサーです。

測温抵抗体は、極低温領域でも安定した測定が可能で、精度の高い温度制御が求められる装置や環境モニタリングで多用されています。

高精度で繰り返し性に優れていますが、高温環境には不向きです。そのため、精密な温度管理が必要な設備には測温抵抗体が、炉など高温域の計測には熱電対が選ばれる傾向にあります。

2-2. 熱電対

熱電対は、異なる2種類の金属を接合して作った回路に温度差を与えることで生じる電圧(熱起電力)を利用して温度を測定するセンサーです。この現象は「ゼーベック効果」と呼ばれており、1821年に発見されて以来、工業分野で広く応用されています。

熱電対の特徴は、広い温度範囲での測定が可能であること、および構造がシンプルでコストが比較的低い点です。高温に耐えうる性質を持ち、炉や加熱装置などの温度制御、製造工程の監視、さらにはエンジンやボイラーの熱効率評価などにも使用されます。

ただし、熱電対による温度測定では、基準接点を0度に保つ必要がありますが、実際の環境では維持することが困難です。そのため、基準接点の温度を別途測定し、温度に応じた補正を加える「基準接点補償」が必須です。

さらに、使用する金属の種類によっては、酸化や腐食などの劣化が進みやすく、測定精度が低下する場合があります。高温環境や腐食性ガスが存在する現場では、特定の熱電対しか使用できないこともあるため、使用環境に適したタイプの選定が重要です。

2-3. サーミスタ

サーミスタは、温度変化に応じて電気抵抗が大きく変化する半導体素子で、高精度な温度制御や温度計測に使用される接触式温度センサーです。

サーミスタには主に2種類あり、1つは温度が上がると抵抗が増える「PTC(正の温度係数)タイプ」、もう1つは温度が上がると抵抗が減る「NTC(負の温度係数)タイプ」です。PTCタイプは主に自動車の過熱防止や過電流防止などに使用され、NTCタイプはエアコンやスマートフォンの温度制御に使われます。

小型で応答が早く、繰り返しの精度にも優れていますが、測定可能な温度範囲が狭いため、高温環境での使用には不向きです。

2-4. バイメタル温度計

バイメタル温度計(バイメタル式温度計)は、熱膨張率の異なる2枚の金属を張り合わせた「バイメタル」を用いた温度計です。温度が上昇すると金属が反り返る特性を利用し、らせん状に成形されたバイメタルの動きが指針を動かして温度を表示します。

表示はアナログ針で、温度目盛の直読が可能なため、目視確認が求められる現場でも扱いやすく、耐久性にも優れている特長があります。電源を必要としないこともあって、工場やプラントなどの過酷な環境でも使用されてきました。温度範囲や精度に制約はあるものの、メンテナンス性とコスト面で優れた温度計の1つです。

2-5. 液体温度計

液体温度計は、封入された液体が温度変化に応じて膨張・収縮する性質を利用した温度計で、代表的なものとして、水銀温度計とアルコール温度計があります。

水銀温度計は-30~360度程度の温度範囲で使用され、反応速度や熱伝導性に優れていました。しかし、環境および人体への影響から、研究、計測器の校正および参考標準としての使用を目的とする製品を除き、2020年末以降は製造や輸出入が原則禁止されています。

アルコール温度計(赤液温度計)は、水銀温度計の代替としても使われる液体温度計です。低温域の測定に向いており、安価で安全性が高く、家庭用温度計や実験器具などでも広く使用されています。なお、現在はアルコールだけでなく、着色された白灯油なども封入されています。

2-6. 圧力温度計

圧力温度計は、密閉容器内に封入された液体や気体が温度変化によって膨張・収縮することにより内部圧力が変化する原理を利用した温度計です。

圧力変化はブルドン管などの機構に伝えられ、指針が動くことで温度を読み取ります。読み取りが容易で視認性が高く、現場での温度管理に適しています。また、電源を必要とせず、感度も良好なため、産業設備や大型装置の温度監視にも活用されています。

封入媒体には、用途に応じてエチルアルコール・ヘリウムなどが使用されます。特に液体封入式の圧力温度計の場合は対応温度範囲が狭い傾向にありますが、信頼性の高いアナログ計測が可能です。

3. 代表的な非接触式温度計の特徴と仕組み・用途

非接触式温度計は、測定対象にセンサーを接触させることなく、放射される赤外線を検出して温度を測定します。中でも代表的なものが、赤外線放射温度計とサーモグラフィーです。どちらも赤外線を利用していますが、測定方法や表示の仕組みに違いがあります。

以下では、赤外線放射温度計とサーモグラフィーの違いを解説します。

3-1. 赤外線放射温度計

赤外線放射温度計は、物体から放出される赤外線の強度を測定し、対象の表面温度を推定する温度計です。熱を帯びた物体が放射している赤外線のエネルギー量から、温度を求める仕組みになっています。

計測時には、対象物の「放射率」を適切に設定することが重要です。放射率が正しくない場合、実際の温度と異なる値が表示されることがあります。

赤外線放射温度計は、応答速度が速く、移動する物体の測定にも適した温度計です。レーザーマーカーを搭載したタイプであれば、測定範囲を目視で確認でき、作業効率も向上します。

一方で、測定可能なのは物体の表面温度のみであり、内部の温度や気体の計測には適しません。また、光沢のある金属やガラス越しの計測、粉塵・蒸気の多い環境では、精度が低下する点にも注意が必要です。

3-2. サーモグラフィー

サーモグラフィーは、赤外線カメラを使って対象物の表面温度を面として可視化する装置です。放射温度計と同じく赤外線を利用していますが、測定結果を画像として表示する点が違いです。画面上では温度の高い部分が赤や黄色、低い部分が青や紫で色分けされ、温度分布を一目で把握できます。

視認性が高いという特性により、設備の異常検知や高温部の安全確認、医療現場での炎症・血流異常の確認にも利用されています。非接触で測定できるため、対象物に影響を与えず、繊細な物体や危険箇所の温度確認にも適した温度計です。

また、面として広範囲を同時に計測できるため、複数の箇所を一括で監視する用途にも向いています。

ロガー付グローブ温度計 PGT-02


ロガー付グローブ温度計 PGT-02


直径約15cmの銅製の球体表面に、黒のつや消し塗装をした温度計です。球体内部に温度計が組み込まれています。
周囲の温度に加え、放射の影響を受けやすい場所の環境温度を測定し、人体または生物への影響を調べることができます。


ワイヤレス4ch温度計 CENTER521


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温度の計測、管理から報告書の作成(Excel、CSV)までの作業者の効率が向上するワイヤレス4ch温度計 CENTER521のレンタルです。
また、Bluetooth機能でスマートフォンやタブレットへのデータ収集も可能です。


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まとめ

温度計の種類ごとに仕組みや用途が異なることを理解すれば、現場のニーズに即した機器選定が可能になります。例えば、高精度が求められる環境では測温抵抗体やサーミスタが有効であり、過酷な高温現場では熱電対が適しています。また、設備の異常検知や非接触での測定が求められるケースでは、赤外線放射温度計やサーモグラフィーがおすすめの選択肢です。

それぞれの温度計には適した用途と環境が存在するため、汎用性だけで判断するのではなく、使用条件を踏まえた上で最適なタイプを選ぶことが大切です。

導入にあたっては、測定範囲、応答速度、視認性、メンテナンス性なども総合的に考慮すると、より効果的な温度管理が実現できます。

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