音の大きさを測定する方法とは?騒音計の使い方や選び方も解説

産業の現場において、騒音は作業の効率性や安全性に深くかかわる要素です。機械の稼働音や作業音は業務の一部として欠かせないものの、一定の閾値を超えると作業する方の健康や生産性に悪影響を及ぼす可能性があります。音の大きさを測定し、適切に管理すれば、より健康的な職場を作れ、生産性を向上できるでしょう。そのためには適切な騒音計の使い方や選び方を知っておくことが重要です。

この記事では音・騒音の特性や騒音計の仕組み・使い方、状況に応じた騒音計の選び方について解説します。

騒音計/振動計のレンタルはこちら

1. 音と騒音の違い

音は、空気や物体などを通じて伝わる振動で、大きさ・高さ・音色という3つの要素によって変わります。騒音測定に関わるのは、「大きい・小さい」を決める音圧dB(デシベル)と、「高さ・低さ」を決める周波数Hz(ヘルツ)です。なお、人の耳には聞き取りやすい周波数があり、同じ大きさでも200Hz~4000Hz程度の音は聞き取りやすいと言われています。

騒音は、多くの人がうるさくて不快に感じる音です。騒音に囲まれた生活が常態化していると、心身にさまざまな悪影響が生じる恐れがあります。例えば、騒音によって懸念されるのは、聴力の低下や睡眠障害です。騒音そのものがストレス要因になり、心身のバランスを崩す可能性もあります。

人間の可聴範囲内の音だけが騒音になることから、物理的な音の大きさと騒音の大きさは異なります。そのため、騒音の大きさを表現するときには、人間の聞こえ方に合った仕組みで計測された「騒音レベル」が使われます。

1-1. 音の大きさと目安

音の大きさはdB(デシベル)で表すことができます。下記は、音の大きさによってどれくらいの騒音に聞こえるのか示した表です。具体的な音の例も示しているため、日常生活における騒音の目安にしましょう。

音の大きさ 一般的な感じ方 音の例
20db以下 静かに感じる 葉ずれの音、寝息など
30db とても小さく聞こえる 夜間の外、ささやく声など
40db 小さく聞こえる 昼間の静かな屋外など
50db 普通に聞こえる 静かな職場など
60db 大きく聞こえる 日常会話、洗濯機、静かな車の走行音など
70db とても大きく聞こえる 賑やかな職場、掃除機など
80db とても大きく、うるさく感じる 線路の近く、飛行機の中、サイレンなど
90db きわめてうるさく、我慢できない 工事現場、叫び声など
100db以上 聴覚機能に支障が出る 飛行機のエンジン音、間近で鳴るクラクション、鉄道ガード下など

騒音を気にせず過ごせるのは40dB以下の環境であり、60dB以上の音量になると「うるさい」と感じる人が多くなります。80dB以上になると、緊急車両のサイレンと同じ程度で、日常生活に差し支えるレベルの騒音です。

工事現場など騒音発生源の近くで作業するときは、以下の通り、85dBを基準として適切な処置が求められています。

作業環境測定結果の評価

騒音発生源の近接地における平均値
85dB未満 85dB以上
90dB未満
90dB以上
騒音発生源を中心とした測定範囲におけるA平均値 85dB未満 作業環境の継続的維持に努める

・場所を標識により明示する

・保護具を使用する

・場所を標識により明示する

・保護具使用の掲示を行う

・保護具を使用する

85dB以上
90dB未満

・場所を標識により明示する

・保護具を使用する

90dB以上

・場所を標識により明示する

・保護具使用の掲示を行う

・保護具を使用する

出典:厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドライン」

2. 音の測定に使われる騒音計

騒音計とは、騒音レベルを数値化する測定器のことです。住宅街や工場の環境騒音や工事現場の作業騒音には基準が設けられており、適切な環境で生活したり作業をしたりするため、機器を用いて騒音を測定します。騒音計にはさまざまな種類があり、用途によって使う騒音計が異なります。

2-1. 騒音計の仕組み

騒音計は、周囲の音を拾い、内部の機械で解析・調整した騒音レベルを画面表示する仕組みです。音を拾う役割を持つマイクロホンは、収集した音を電気信号に変えます。マイクロホンが変換した電気信号をアンプで増幅し、「周波数重みづけ」と呼ばれる処理を行います。

周波数重みづけは、人間の聴覚に合わせた調整であり、実際の聞こえ方に近い騒音を測定するのに必要な設定です。画面にデジタル表示される数値は、補正した音圧から算出される騒音レベルになります。

騒音計は、周囲の音を正確に拾うと正しい結果が得られるため、マイクロホンの感度が大切です。また、重みづけする周波数特性も騒音レベルを算出する上で重視される要素です。騒音源や騒音を測る目的に合わせ、適した騒音計を選択しましょう。

2-2. 騒音計の種類

騒音計はJIS規格によって、簡易騒音計・普通騒音計・精密騒音計に分類されており、それぞれ用途や値段が異なります。

簡易騒音計は、家庭などで騒音チェックするときに用いる騒音計です。簡易騒音計に明確な定義はありませんが、JIS規格から外れている騒音計の総称と言われています。簡易騒音計は種類が多く、安価なものは数千円で購入できます。性能は普通騒音計や精密騒音計に劣るため、手軽に騒音を測るとき用いるのが簡易騒音計です。

普通騒音計は、JIS規格のクラス2または計量法に適合している騒音計で、精度の高い測定ができます。測定できる周波数は20Hz~8000Hzの範囲で、誤差は1.5dB以内です。普通騒音計は10万円前後で販売されている商品が多く、工事現場の作業音や住宅地の騒音計測などに用いられます。

精密騒音計は、JIS規格のクラス1または計量法に適合しており、研究データを取るときや音響製品の評価を目的に用いられる騒音計です。測定できる周波数は20Hz~12500Hz、誤差は0.7dB以内と精度が高く、公的機関に提出するデータとしても用いられます。精密騒音計は専門機関向けの騒音計で、価格も約20万円~100万円と高価です。

3. 騒音計を使った測定のやり方

騒音計を使うとき、正しい方法で測定しないと、実際の数値と異なる可能性があります。ただし、シチュエーションや機器の種類によって細かい操作方法に違いがある点には注意が必要です。以下では、適切な測定のやり方について要点を解説します。

3-1. 周波数重みづけ特性を設定する

人間の耳は音の周波数によって聞こえ方が異なるため、聞こえ方に合わせて音圧レベルを補正するのが周波数重みづけ特性です。周波数重みづけ特性には、A特性・C特性・Z特性などがあり、一般的にはA特性が使われます。A特性は、人間の耳の性質に沿って、騒音の音圧レベルに補正をかけるものです。

人間の聴覚は、高い音を拾いやすく、低い音を拾いにくい特徴があります。周波数においては1000Hz前後が最も聞こえやすく、1000Hz前後から離れた周波数になるにつれ、聞き取りづらくなります。騒音計のマイクロホンにはこのような特徴がないため、人間が感じる騒音の大きさを計測するには、A特性による重みづけが必要です。

騒音計の多くはデフォルトでA特性が用いられています。A特性やその他の周波数重みづけの特徴については、以下の記事を参考にしましょう。

A特性とは?C特性・Z特性との違いや騒音の計測方法を解説

3-2. 時間重み付けを設定する

時間重みづけ設定には、Fast・Slowの2種類があり、基本的にはFastで設定します。Fastは人間の耳が音を拾う感覚に近い設定で、Slowは数値の変動を平均化した設定です。

Fastは、作業音測定や環境騒音測定など、多くの現場で用いられます。Slowは鉄道騒音や航空機騒音など限られた場面で使用する設定です。

3-3. 騒音計を設置する

騒音計を設置するときは、音を収集するマイクロホンにノイズが入らないようにすることが重要です。

音が障害物にあたったときに出る反射音は、測定数値に影響します。壁や床からなるべく離れた空間に騒音計を設置し、音が障害物に反射しないようにすれば、精度の高い測定が可能です。人間の体も音を反射するため、騒音を正確に測定したい場合は、測定地点に三脚で騒音計を取り付けます。

また、屋外で測定するときは、測定値が風の影響を受けやすいことに注意しましょう。防風スクリーンには、風の音を軽減する役割やマイクロホンを保護する役割があり、必要に応じて利用すると正確に音を測定できます。

4. 騒音計の選び方

騒音計にはさまざまなオプション機能が搭載されており、利用シーンを広げてくれる一方、騒音計ごとに搭載機能は異なります。シチュエーションに応じてどの騒音計を利用するのが望ましいか確認し、適切なものを選びましょう。

特定の音を絞り込んで計測する場合、測定レンジ計測機能があると便利です。測定レンジ計測機能は、特定のdBに絞った測定が可能になるため、測りたい音より大きすぎる音や小さすぎる音を除外して測定できます。

暗所で使うなら、バックライト機能付きのデジタル騒音計がおすすめです。バックライトによって液晶画面が読み取りやすくなり、暗所で懐中電灯を準備しなくても騒音計が使えます。

データ測定の結果を記録・保存したいときは、記録機能を搭載した騒音計を選択すると便利です。データの記録方法は、出力端子にケーブルを繋いでパソコンなどに記録するタイプや、本体のSDカードに記録するタイプがあるので、使うシーンに合わせて選びましょう。

状況によって最適な騒音計は違うため、必要に応じて騒音計をレンタルするのもおすすめです。特に騒音計を常用しない場合は、レンタルを利用すれば低コストで的確に騒音を計測できるでしょう。

まとめ

多くの人がうるさくて不快に感じる音を騒音と呼びます。騒音を長時間聞いていると聴覚機能に支障をきたす可能性もあるため、騒音発生源の近くで作業する場合は85dBを基準として保護具の使用などの基準が定められています。

騒音を測定する際には騒音計が利用されます。騒音計は周囲の音をマイクロホンで拾い、解析・調整した音を周波数重みづけし、画面表示する機械です。JIS規格によって簡易騒音計・普通騒音計・精密騒音計に分類されており、価格や精度は異なります。

騒音計にはさまざまな機能が搭載されており、利用するシチュエーションによって必要な機能は変化します。レンタルを利用すれば、低コストで必要に応じて騒音計を使った計測が可能です。

騒音計/振動計のレンタルはこちら