遠隔臨場システムの導入はなぜ必要?導入メリットや課題を解説

ICT推進の一環として注目されているのが遠隔臨場システムです。離れたところから現場を確認できる遠隔臨場はコストの削減や人手不足の解消など、建設現場におけるさまざまな課題を解決できる可能性があります。

当記事では、遠隔臨場のメリットとともに導入時の課題や注意点を合わせて解説します。遠隔臨場を導入したいと考えている方は、当記事をぜひ参考にしてください。

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1. 遠隔臨場とは?

遠隔臨場とは、発注者の監督職員などが、建設現場から離れた場所にいながら段階確認や材料確認、立会といった業務を行うことを指します。身体に装着できるウェアラブルカメラやインターネットに接続できるネットワークカメラなどのツールを活用して行われることが一般的です。

遠隔臨場では、ウェアラブルカメラを装着したり、建設現場にネットワークカメラを設置したりして必要な部分を撮影し、監督職員がいる事業所などに映像を送ります。監督職員は送られてきた映像を見て現場の状況確認や管理をするしくみです。

一方的に現場の配信映像を見るだけでなく、監督職員が指示をだしたり現場作業員が質問したりすることで、リアルタイムでのコミュニケーションも可能です。

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1-1. 遠隔臨場が注目を集める理由

遠隔臨場は建設業界各社から注目を集めており、導入する事例が増えています。背景には、以下の3つの理由により、国土交通省が建設業界における遠隔臨場を推進している状況があります。

・ICTの推進

ICTとは情報通信技術を意味する言葉です。国交省は、建設業界の労働環境改善や生産性向上を目指し、あらゆる建設プロセスをICT化するプロジェクト「i-Construction」を推進しています。ICT活用の施策にはドローンを用いた三次元測量や3次元データの活用などさまざまなものがあり、映像通信を利用して業務を行う遠隔臨場もその一環です。

・ビジネスの変化

コロナ禍をきっかけとして起こったビジネス環境の変化も、遠隔臨場が推奨される理由の1つです。多くの企業で、感染リスクを下げるためにテレワークが積極的に行われるようになりました。建設工事でも、遠隔臨場ができれば監督者が現場を訪れる必要がなくなります。移動中や現場で人と接する機会がなくなり、感染予防対策として効果的です。

・コストの削減

遠隔臨場ができれば、監督職員はあちこちの工事現場へ実際に足を運ぶ必要がありません。移動時間や交通費などの費用が発生しなくなり、コストを削減できます。さらに空いた時間はコア業務に集中できるため、生産性の向上にもつながります。

 

2. 遠隔臨場を導入するメリット

監督職員が建設現場に出向いて現場確認する臨場は、移動時間や交通費がかかります。人材不足の場合は、臨場日を調整するのも大変です。

遠隔臨場を導入すると、臨場にかかわる諸問題の解決につながります。ここでは、主なメリットについて具体的に解説します。

 

2-1. コストを削減できる

遠隔臨場を導入するもっとも大きなメリットの1つが、臨場にかかるコストが抑えられる点です。工事現場を訪れずに状況確認ができるため、移動に伴う交通費やガソリン代などが発生しません。「遠隔地にある」「何度も確認する必要がある」といった現場では、特に遠隔臨場によるコストの削減効果が高いでしょう。

また、現場に出向く臨場は時間が大幅に取られるため、監督職員が残業せざるを得なくなることもあるでしょう。移動時間や現場での待ち時間がなくなって勤務時間内で仕事が終えられるようになれば、残業代の発生も抑えられます。

 

2-2. 安全性を高められる

遠隔臨場であれば、万が一トラブルが発生したときでもすぐに現場状況が確認でき、対応策を指示できます。また、映像を録画しておけば現場の状況をつぶさに確かめられ、見落としや確認漏れによるミスが発生しづらくなるため、現場全体の安全性を高めることにもつながります。

コロナなどの感染症対策としても、遠隔臨場は有効です。監督職員が現場に出向かなくてすむと人と対面で接する機会が減り、感染リスクを下げられます。

 

2-3. 人手不足を解消できる

建設業界の人手不足解消の一助となることも、遠隔臨場を導入するメリットです。建設業界は深刻な人手不足の状況にあり、業務の効率化は必要不可欠です。

遠隔臨場が可能であれば、監督職員は現場に赴く必要がありません。移動や待機による長時間の拘束がなくなり、臨場日の調整もしやすくなります。業務が効率化すれば必要な人員が減るので、人手不足の解消にもつながるでしょう。長時間勤務が減るなど労働環境が改善すれば、入職希望者の増加も期待できます。

出典:国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」

 

3. 遠隔臨場を導入する際の課題

メリットの多い遠隔臨場ですが、導入にあたってはいくつか課題やデメリットもあります。ここでは、主な課題と解決策について解説します。

導入を検討している方は、具体的にどのような課題があるか知っておきましょう。

 

3-1. 通信環境の整備が必要

遠隔臨場では、建設現場から事業所などに映像を送り、双方向でやり取りします。したがって、まずは通信環境の整備が不可欠です。

正確に現場の状況を判断し、適切なコミュニケーションを取るためには、通信が安定している必要があります。少なくとも「鮮明な画像が送れる」「音声が途切れることなくクリアに聞こえる」程度の水準は求められるでしょう。当然ながら、事業所だけでなく現場も通信環境の整備が必要です。

スマホの4GLTE回線でも対応は可能ですが、電波が入りにくい場所であればWiFiの導入を検討したほうがよいでしょう。通信は有線接続のほうが安定しますが、建設現場に有線ネットワークが常設されているケースはあまりないため、モバイルの通信環境を整備することが一般的です。

 

3-2. 初期投資が必要

通信環境の構築や撮影機器の用意が必要なため、遠隔臨場の導入時には一定の初期費用がかかります。通信環境の構築にはWeb会議システムなどを活用し、動画撮影用機器は以下のいずれかを用意することが一般的です。

・ウェアラブルカメラ

ヘルメットや身体に装着できるカメラです。装着しても両手が使えるので、作業の邪魔にならず便利です。多くの製品で、撮影だけでなく録画もできます。

・スマートフォンやタブレット

スマートフォンやタブレットにビデオ通話アプリを入れれば、そのまま通信に活用できます。ただし、撮影者が端末を持つ必要があるため、作業が止まる点がネックです。録画機能がないアプリも少なくなく、後で確認したり振り返りを行ったりできない場合があるので注意しましょう。

・クラウドカメラ

現場にクラウドカメラを設置し、常時録画する方法もあります。映像はクラウドで保存できます。設置にあたっては、角度や高さ、撮影範囲に注意しましょう。

ウェアラブルカメラやクラウドカメラは便利ですが、たくさん用意するとコストがかかります。購入ではなく、レンタルを利用すると費用が抑えられるのでおすすめです。

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3-3. 従業員への配慮が必要

遠隔臨場システム導入にあたっては、現場で働く作業員への配慮が欠かせません。現場の様子を常時録画している場合、作業員は監視されているように感じる可能性があります。

見張るためではなく、業務効率化や安全性向上が目的であると、事前にきちんと説明しておくことが大切です。

また、遠隔臨場にかかわる従業員の中には、IT機器の扱いに慣れていない方もいるでしょう。操作性に優れ、誰であってもスムーズに使える機器を選ぶことが大切です。取り組みの前に操作マニュアルを整備したり研修を実施したりするのもよいでしょう。

 

まとめ

実際に現場に行かずに、カメラやネットワークを使って現場の様子を確認し、指示を出すことを遠隔臨場と呼びます。遠隔臨場を導入すると、コストの削減を行えたり、業務の効率化を推進できたりなどのメリットが期待できるので、近年注目を集めています。

ただし、遠隔臨場を導入する際は通信環境を整え、カメラなどの機材を用意する必要があります。導入コストをできるだけ削減したい場合は、機材のレンタルを検討するのもおすすめです。ICTを推進するためにも、遠隔臨場をうまく導入し活用しましょう。

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