地盤沈下はなぜ発生する?主な原因や対策・地盤調査の重要性も解説!

地盤沈下とは、地表面が徐々に沈んでいく現象を指します。地下水の過剰な汲み上げや自然災害が主な原因で、特に日本では工業化や都市化が進む中で地盤沈下が広範囲にわたって発生し、都市部のインフラや農地に深刻な影響を与えました。

地盤沈下には「広域地盤沈下」と「不同沈下」の2つの種類があり、それぞれ原因や影響が異なります。当記事では、地盤沈下の原因と対策方法を詳しく解説します。地盤沈下を防ぐために、当記事をぜひ参考にしてください。

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1. 地盤沈下とは?

地盤沈下とは、地表面の高度が徐々に下がっていく現象です。主に地下の水分が減り、粘土層が収縮することで起こります。地盤沈下が社会問題化となったのは大正時代の初期頃からです。地盤沈下現象は、地盤の性質や条件によって2種類に分類されます。

1つ目は「広域地盤沈下」で、広範囲にわたって地盤が沈下する現象です。過剰な地下水利用が主な原因で、都市部や農業地帯でよく見られます。基本的に、個人での対処が難しく、行政レベルでの地盤沈下対策が必要です。

2つ目は「不同沈下」で、特定の建物や構造物の下で局地的に地盤が沈む現象です。地盤の強度が均一でない場合や、軟弱地盤の上に重い建物を建てた際に発生しやすいタイプの地盤沈下です。不同沈下が進行すると、建物が傾いたり、ひび割れが生じたりしかねません。

いずれにしても地盤沈下量が自然に戻ることはなく、建物や生活環境に大きな影響を与えるため、土地のリスク把握と予防・対策が不可欠です。

 

2. 広域的な地盤沈下(広域地盤沈下)の原因

広域的な地盤沈下は、広範囲にわたって地盤が沈むため、建物や道路の損壊、農地の浸水被害、地下施設の破損など、深刻な影響を引き起こします。自然現象としては地震や地下水の変動が挙げられ、人為的な要因では過剰な地下水採取量が主な原因です。

 

2-1. 地震による地殻変動・液状化

地震によって地下の土壌や岩盤が揺れ、構造が変形すると、広範囲にわたって地盤が沈下することがあります。2011年の東日本大震災では、岩手県や宮城県、福島県などの沿岸地域で広範囲の沈下が報告されました。

また、液状化現象も地盤沈下の大きな要因です。液状化とは、地盤を構成する要素の結合バランスが地震の揺れによって崩れて流動化し、軽い砂と水が地表に押し出される現象です。液状化現象が起きると地面が急速に沈むケースが多く、建物が傾いたり、基礎部分が破壊されたりします。

液状化は、激しい揺れが一定時間継続することで広範囲に発生する場合があります。ただ、地盤の条件がそろっていれば、震度4程度の揺れでも起こり得ます。特に沿岸部や埋め立て地で発生しやすく、東日本大震災では千葉県浦安市などで大規模な液状化が観測されました。

 

2-2. 地下水の汲み上げ・自然現象による変動

地下水の過剰な汲み上げは、広域的な地盤沈下の代表的な人為的原因です。地下水を大量に汲み上げ、地下の水位が下がると帯水層や粘土層が収縮し、地盤全体が沈みます。

高度経済成長期の日本では、工業用水として大量の地下水を使用したことから、東京や大阪などで大規模な地盤沈下が発生しました。ただ、1956年に「工業用水法」、1962年に「建築物用地下水の採取の規制に関する法律」が制定されて以降、地下水揚水量は減少しています。

出典:e-Gov 法令検索「工業用水法」

出典:e-Gov 法令検索「建築物用地下水の採取の規制に関する法律」

また、自然現象による地下水変動も、地盤沈下の原因となる場合があります。たとえば、台風や豪雨などにより地下水位が急上昇し、その後急激に低下することで、地盤が不安定になるケースです。このような沈下はゆっくりと進行するため、発見が遅れることもあります。

 

3. 局地的な地盤沈下(不同沈下)の原因

局地的な地盤沈下、いわゆる不同沈下は、地盤の一部が不均一に沈む現象です。不等沈下とも呼ばれ、建物が歪んだり亀裂が生じたりする恐れがあります。不同沈下は、建物の構造や居住環境に大きな影響を与える上、日常生活にも支障をきたしかねません。

不同沈下を引き起こす原因はさまざまですが、主に「圧密沈下」と「工事による周辺地盤への影響」が挙げられます。

 

3-1. 圧密沈下(経年圧密)

圧密沈下とは、地盤を構成する粒子が自然に圧縮され、地盤の体積が減る現象です。特に、盛土や埋戻し土などの人工的に形成された地盤や、水分量が多い地盤、粘土層・混入物が多い軟弱な地盤では、圧密沈下が発生しやすくなります。これは、時間の経過とともに地盤や建物の重みによって地盤内の水分や空気が排出され、地盤が押し固められるのが主な理由です。

圧密沈下の進行は長期にわたるケースが多く、数年から数十年かけて少しずつ沈むため、建物の傾きやひび割れなどの症状が徐々に現れます。このため、建物を建設する前の正確な地盤調査が重要であり、地盤状況に応じて改良工事を施さなければなりません。早い段階で適切な対策を取らない限り、不同沈下が避けられない可能性が高まります。

 

3-2. 工事による周辺への影響

工事が原因で不同沈下が発生することもあります。特に、建設工事や地下掘削で地盤を深く掘った場合、周辺の地盤の土圧が低下し、地盤沈下が引き起こされるケースが珍しくありません。これは、工事によって地中のバランスが崩れ、周囲の土が流出したり、支えが弱まったりするためです。

たとえば、大規模な地下駐車場やマンションの基礎工事を行う際、適切な土留め対策を施さなければ、周辺の地盤が崩れて周囲の建物に被害が及ぶ場合があります。また、地下水を含む地盤で掘削中に水分が外へ流出し、地盤が不安定になる場合もあります。このような影響を防ぐためには、施工前の十分な調査と、適切な土留め工事が欠かせません。

 

4. 地盤沈下への対策

地盤沈下の原因によっては、事前の対策で防げるケースが少なくありません。そのため、建物を建てる前にしっかりと地盤を調査し、その土地の特徴を把握して適切な地盤沈下防止対策を講じることが重要です。

 

4-1. 入念に地盤調査を行う

地盤沈下を防ぐ第一歩は、専門の会社による地盤調査です。地盤強度や特性を正確に把握することで、どのような対策が必要かが分かります。調査方法には「ボーリング調査」「スクリューウェイト貫入試験(SWS試験)」などがあり、建築予定の建物や地盤の深さ・強度に応じて選びます。建築前の地盤調査は法律で義務づけられており、地震や沈下リスクに備えるためにも欠かせない工程です。

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4-2. 地盤改良工事を行う

地盤調査の結果、地盤が弱いことが判明した場合には、工事を行って地盤を補強・改良しなければなりません。地盤改良の代表的な工法として以下の3つが挙げられます。

  • 表層改良工法
    地盤表面の浅い部分を改良する方法です。深さが2m程度までの軟弱地盤に対して、セメント系固化剤を混ぜて地盤を強化します。この方法は比較的コストが低く、工期も短いのが特徴です。狭い土地でも施工可能ですが、地下水位が高い場合や地形が複雑な場所では適用が難しい場合があります。
  • 柱状改良工法
    地中に円柱状の改良杭を打ち込み、建物を支える工法です。深さが2~8mの軟弱地盤に穴を開け、セメントミルクを注入しながら地盤を固めます。比較的費用が抑えられ、支持層がなくても施工でき、建物の基礎をしっかりと支えられる工法です。ただし、地盤の種類によっては固化不良が起こる場合があり、施工後は地盤の原状復帰が難しいというデメリットもあります。
  • 小口径鋼管杭工法
    鋼管を使って深い地盤に杭を打ち込み、建物を支える方法です。この工法は地中30m程度までの深い地盤改良が可能で耐久性も高く、重量のある建物や狭小地にも施工できます。ただし、工事中の騒音や振動が大きく、支持層のない地盤には適用できません。

いずれの工法を選ぶにしても、メリットとデメリットがあります。土地の状態に応じた適切な工法の選択が、建物の沈下リスクを減らすことにつながります。

 

まとめ

地盤沈下は、生活環境や建物に重大な影響を与える自然現象です。特に広域的な地盤沈下は、都市部や農村地域で深刻な損害を引き起こし、社会問題化にもなっています。また、不同沈下についても、建物や構造物の安全性に直接関わるため注意が必要です。

沈下を防ぐためには、建物の建設前にしっかりとした地盤調査を行い、その結果に基づいて適切な改良工事を行うことが重要です。調査方法や工事内容に応じた対策を講じて地盤沈下のリスクを軽減し、安全で安心な暮らしを守りましょう。

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