ファイバースコープとは?原理や主な用途・似た製品との違いを解説
曲がった管、狭い隙間などの、人が直接目視できない場所を確認するために利用される機器にファイバースコープがあります。リアルタイムに入り組んだ場所の映像を伝達できることから、医療や工業などの幅広い分野でファイバースコープは活用されています。
この記事ではファイバースコープの原理や利用のメリット・デメリット、分野別の主な用途を解説します。また、ファイバースコープと似た機能を持つ製品についても記載しているため、検査用機器のレンタルを検討されている方は、ぜひご覧ください。
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1.ファイバースコープとは?
ファイバースコープとは、ガラスやプラスチックを素材とする繊維の光ファイバーを多数束ね、先端部にカメラを取り付けた機器のことです。主に、直接目視できない配管や建築物の内部、人の体内などの検査や観察と言った用途で利用されます。
ファイバースコープの特徴は、先端のカメラを自在に操作し、精緻な映像が撮影できる点です。ファイバースコープが入り組んだ対象物に入り、曲がった状態にあっても、光は反射しながらファイバー内を進んで正確に映像を伝達します。
ファイバースコープ誕生の起源は、日本の企業と研究者が1960年に開発した胃カメラにあります。当時、体内に入り込んで画像撮影できる胃カメラには、リアルタイムで観察できないという問題点がありました。この問題を解決したのが、光を末端から先端まで伝える光ファイバーとカメラを組み合わせたファイバースコープです。
ファイバースコープによってリアルタイムの映像伝送が可能となったことで、胃カメラの撮影技術は不要になり、診断の精度が大幅に向上しました。以来、ファイバースコープは医療のみならず、各種産業や災害救助などさまざまな分野へ活躍の場を広げています。
1-1.ファイバースコープの原理
ファイバースコープは、数千本から数万本の光ファイバーを束ね、束の末端に接眼レンズ、先端に対物レンズを装着しています。光ファイバーの直径は数マイクロメートルから数百マイクロメートルと極細で、柔軟に折り曲げられます。
対物レンズ側を対象物に挿入すると、光ファイバーの束を通して、検査や観察の対象領域を接眼レンズ側からリアルタイムで確認できる仕組みです。接眼レンズのズーム機能を調整して対象領域をより明瞭に映し出すことができます。
2.ファイバースコープのメリット・デメリット
細い管内や狭い場所に入り込み、リアルタイムで検査や観察できるなど、ファイバースコープにはいくつものメリットがある一方、デメリットも存在します。双方を比較検討した上で使用することが大切です。
以下では、主なメリット・デメリットをそれぞれ2点挙げて詳しく解説します。
2-1.メリット
ファイバースコープは極細で柔軟性があり、目的の場所にたどり着くまでの通り道である機械や内臓などを傷つけずに検査できる点がメリットの1つです。機械の内部や人の体内など、検査の対象となる部位は細く、入り組んでいるケースは少なくありません。ファイバースコープがあれば、安全に機械や体の中を目視確認できます。
もう1つのメリットは、ファイバースコープの先端部分が可動するため、検査の自由度が高いという点です。カメラを可動させて対象領域をあらゆる角度から検査できれば、機械の不具合や病巣の早期発見が可能となり、検査精度の向上につながります。
2-2.デメリット
ファイバースコープが抱えるデメリットの1つは、ファイバーが比較的繊細なため、扱い方次第でファイバーが破損する可能性がある点です。ファイバースコープによる検査時に、ファイバーに強い力をかけたり、極度に曲げたりして過度の負担を与えた場合、スコープが破損し、交換が必要になるケースがあります。
また、ファイバースコープは、蜂の巣(ハニカム)のように隙間なくファイバーを束ねたハニカム構造から成っています。このため、ファイバーの境界線が影となって映り込む点が2つ目のデメリットです。映り込んだ影は画像処理で解消できるものの、映像が鮮明でなくなる可能性があります。
3.ファイバースコープの主な使用用途
ファイバースコープは現在、幅広い分野において検査や観察を目的に利用されています。「製造業」「設備・建築業」「医療」の3つの分野での、主な用途について解説します。
3-1.製造業
製造業ではファイバースコープは、「工業用内視鏡」「工業用ファイバースコープ」などとも呼ばれる、機械の内部検査などに広く使用されている機器です。
例えば、自動車・航空機・鉄道・船舶など運輸関連メーカーでの用途は、エンジン・油圧部品・タービン・噴射ノズルといった部位の検査です。温度が100度以上になることがあるエンジンオイルの検査も、耐熱性があるファイバースコープを用いれば対応ができます。
金属製品などのメーカーにおける用途の1つは、製品製造の過程で異物が混入する場所の特定です。異物の混入は形成不良を招き、コスト高の原因となるため、成形機械などにファイバースコープを挿入して場所を特定する作業が行われています。
3-2.設備・建築業
設備・建築業においても、ファイバースコープは建物や道路、橋梁といった建造物の点検や修理作業に欠かせない存在です。
一例として、コンクリート製の建物を補修工事する際の事前調査や工事終了後の確認調査にはファイバースコープが利用されています。ファイバースコープによって、建物に大きな穴を開けるなどの大掛かりな作業は不要になり、より簡単な作業で正確な確認が可能です。
ほかにも、電設配管・ガス配管・排水管など各種配管、床下・天井裏・壁などの建物内の検査や点検にもファイバースコープが使用されています。
3-3.医療
1950年頃から1970年中盤にかけて活用されていた胃カメラの欠点を補い、小型化を可能としたのがファイバースコープです。
胃を検査対象としていた胃カメラに対し、ファイバースコープは気管支・食道・十二指腸・大腸などさまざまな部位の検査や診断に活用されています。
医療の現場におけるファイバースコープの役割は検査や診断だけにとどまりません。病理診断を行うために細胞を採取したり、ポリープなどを取り除いたりする器具を搭載した機器もあり、開腹せずに行う治療や手術にも多用されています。
4.ファイバースコープと似た製品の違い
直接目視できない場所の検査や観察を行える製品は、ファイバースコープだけではありません。基本的な仕様は似ているものの、用途や使用素材などが違う製品がさまざまな分野で活用されています。ファイバースコープに似た製品には、以下の3つがあります。
管内検査カメラ |
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ビデオスコープ |
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ボアスコープ |
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スコープの長さや先端の柔軟性、備わっている機能などが異なるため、それぞれの特性を知った上で、自社のビジネス用途に最適な製品を選ぶとよいでしょう。
まとめ
ファイバースコープとは、光ファイバーを多数束ね、先端部にカメラを取り付けた機器のことで、先端のカメラを自在に操作し、精緻な映像が撮影できる点が特徴です。極細で柔軟性があるため、細く、入り組んでいる場所の目視検査が可能です。
ファイバースコープは工業分野では機械の内部検査に、建築分野では建物の点検や配管の確認などに利用されるなど、幅広い分野で検査や観察を目的として使われています。
ファイバースコープと似た製品として、管内検査カメラ・ビデオスコープ・ボアスコープがあります。スコープの長さや先端の柔軟性、備わっている機能などが異なるため、自社のビジネス用途に合った製品を選びましょう。