検電器の正しい使い方は?機器の特徴や仕組み・使用上の注意点を解説

検電器は、電気設備や配線の通電状態を確認するための重要な安全器具です。正しく使用すれば感電事故の予防に大きく役立ちますが、使い方を誤ると誤検知や事故につながる可能性もあります。検電器には種類があり、それぞれの特性に合った使い方を知ることが安全作業の第一歩です。

当記事では、検電器の正しい使い方や事前確認のポイント、検電時の注意点などを詳しく解説します。電気工事に携わる方や、作業現場で初めて検電器を使う方はぜひ参考にしてください。

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1. 検電器の特徴

検電器とは、電気回路が停電しているか通電しているかを判別するための装置です。電気工事や設備保守の現場では、感電や電気災害のリスクを未然に防ぐためにも欠かせません。労働安全衛生規則では、作業前に検電器具を用いて通電の有無を確認することが義務付けられています。

検電器は接地状態や配線方式、電圧の種類など現場の条件に応じた選定が必要となります。正しく使えば、作業環境の安全性を確保でき、事故防止に大きな役割を果たす機器と言えるでしょう。

 

1-1. 検電器の仕組み

検電器の仕組みとしては、検知部を電線やコンセントなどの被測定物に近づけることで、その通電状態を検知します。検電器は静電誘導によって発生する微小な交流電流を捉え、それを光や音で表示する構造です。

被測定物と検電器の間に静電容量が生じ、さらに検電器と人体、人体と大地の間にも同様の静電容量が発生します。被測定物が活電状態であれば、検電器および人体を経由して微小な交流電流が流れる仕組みです。

検電器内部には高抵抗が組み込まれており、微小な電流を検出し、視覚や聴覚で通電状態を知らせます。なお、流れる電流は1μA未満と極めて小さいため、人体への危険性はありません。

 

2. 検電器の正しい使い方

検電器は電気設備の安全確認に欠かせない器具であり、正しい使用方法を守ることが事故防止につながります。

以下に、安全に検電器を使用するための具体的な手順を紹介します。

1 検電器の種類を確認する
まず、検電器が使用する電路の電圧や種別に適しているかを確認します。高圧用を低圧で使うことやその逆は誤作動や危険を伴うため、絶対に避けましょう。
2 検電器の状態を点検する
本体に傷やひび、先端部の汚れがないかを目視で確認します。破損や汚れは正確な検電を妨げるため、清掃や交換が必要です。
3 動作確認を行う
電池内蔵型の場合はテストボタンで発光・発音の確認を行いましょう。チェッカーがある場合は、それを使用して検電動作の正確性を確認します。
4 安全装備を整える
検電作業時は、感電防止のためにゴム手袋やゴム長靴などの保護具を着用してください。高圧検電の際は「高圧絶縁ゴム手袋」「ゴム長靴」、低圧検電の際は充電部に触れる恐れがある場合や、湿度が高い場所で危険が予測される場合は「低圧絶縁ゴム手袋」を使用します。ただし、ゴム手袋の使用が不可な製品もあるため、よく確認しましょう。
5 検電を実施する
検知部を測定対象に対して平行に正しく当てます。被覆電線に当てる場合、心線の上にしっかりと押し当てることが重要です。角度がずれたり当たり方が弱いと、感知できない場合があります。

検電中は感電の恐れがあるため検電器の握り部以外に触れず、動作音や光の有無に集中しましょう。雷の音が聞こえるときや雨が降っている環境下では検電を中止し、安全を最優先に行動してください。

検電器では、パイロットランプの点灯やブザー音など、視覚と聴覚を用いた確認を行います。一人の判断に依存すると見落としが発生するため、可能であれば複数人で検証を行うのが理想的です。

 

3. 検電器の種類

検電器には、電気回路の通電を確認するための重要な役割があり、用途や構造によりさまざまな種類があります。まず、接触式と非接触式の2種類があり、非接触式は対象物に直接触れることなく電圧を感知します。ただし、非接触式は原理上、交流電圧しか検知できないため、使用する場面が選ばれるでしょう。

また、使用電圧に応じて、低圧用・高圧用・特別高圧用・低圧高圧両用などに分類されます。低圧用検電器には「ネオン発光式」と「電池内蔵式(電子式・音光式)」の2種類が存在します。

  • ネオン発光式検電器
    ネオン発光式は、充電部に直接触れることでネオンランプが発光し、通電を視覚で確認する方式です。電池を使用しないため構造がシンプルですが、絶縁手袋が使用できず、故障した際などは感電リスクが高いため取扱いには注意が必要です。
  • 電池内蔵式検電器
    電池内蔵式は接触せずに電圧を検知でき、安全性が高いことから広く使用されています。ただし、電池の消耗や近接電路からの影響で誤作動が起こる可能性もあるため、点検が欠かせません。

検電器には、交流専用・直流専用・交流直流兼用などの種類も存在します。そのため、使用する電路の電圧区分(低圧/高圧/特別高圧)や、測定したい電気の性質(交流電圧/直流電圧)を事前に確認した上で、用途に適した検電器を正しく選定することが重要です。

 

4. 検電器を使用する際の注意点

検電器は電気作業における感電事故を防ぐために欠かせない安全器具です。ただし、正しく使わなければその効果を十分に発揮できません。

ここからは、検電器を使用する際に注意すべきポイントについて詳しく解説します。

 

4-1. 使用前の点検を確実に行う

検電器を安全に使用するためには、日常的な点検と清掃を怠らないことが重要です。まず、検電器の表面に汚れが付着している場合は、乾いた布できれいに拭き取ってから使用してください。特に湿気を含んだ状態での使用は感電や誤作動の原因となるため、必ず乾いた状態で扱うようにしましょう。

次に、外観や構造にヒビや割れ、欠けがないかを入念に確認することも重要です。検電器は長年の使用により、外装の劣化やひび割れが発生しやすくなります。検電器に損傷があると内部に水分が侵入し、電子回路の故障や感電リスクを引き起こす恐れがあります。ヒビは物理的な衝撃だけでなく、アルコールなどの薬品が原因で発生する場合もあるので注意が必要です。

 

4-2. 低圧用検電器で高圧を検電しない

検電器を使用する際には、必ず使用電圧に適した種類を選ぶことが鉄則です。中でも特に注意が必要なのが、低圧検電器を高圧電路に使用してしまう誤った使い方です。

低圧検電器は高感度設計となっており、高圧電路に近づけると予期せぬ動作や誤作動を起こす可能性があります。高圧電路の周囲には複雑な電界が形成されており、電線配置や接地物の影響で電界分布が不均一になります。その結果、検電器が本来の耐電圧距離を超えて感電リスクのある範囲に入り込む恐れがあるでしょう。

実際に、6.6kVの高圧ケーブルを低圧用検電テスターで検電しようとした作業者が感電し、大きな負傷事故につながった事例があります。

出典:中部近畿産業保安監督部「令和5年度管内事故事例」

検電による電気事故を防ぐためにも、検電器の使用範囲と限界を正しく理解し、定められた用途を厳守する必要があります。

 

4-3. 正しく携行・保管する

検電器は、電気作業における感電事故を防ぐための重要な安全機器であり、正しい取り扱いが求められます。まず基本として、落下や下敷きなどの強い衝撃が加わらないよう丁寧に扱うことが必要です。

また、夏期には路面や車内など、高温になる場所に放置しないよう特に注意してください。高温環境では、検電器内部の電子回路や絶縁材が劣化する恐れがあり、動作不良の原因となります。

さらに冬期には、暖かい屋内から急に寒い屋外へ持ち出すと結露が発生することがあります。結露が内部にたまると、誤作動や絶縁不良につながり、感電リスクが高まるため注意が必要です。保管する際は、直射日光を避け、乾燥して清潔な室内の環境を選ぶようにしてください。

なお、検電器は法令上の定期検査義務はありませんが、安全指針では定期的な耐電圧試験を推奨しています。検電器は安全性を保つために、半年から1年に一度は耐電圧試験を行うとよいでしょう。

 

まとめ

検電器は、電気回路が活電しているかどうかを視覚や聴覚で確認できる便利な測定器です。使用にあたっては、事前の点検や正しい当て方、周囲の環境確認など、いくつかの基本的な手順を守ることで、安全性が高まります。

また、検電器には種類や構造の違いがあるため、電路の条件や作業環境に応じて、適切なものを選ぶことが求められます。誤った使い方をすると、感電や誤作動といった思わぬ事故につながることがあるため、慎重な取り扱いが必要です。検電器の正しい使い方を理解し、安全な現場づくりを心がけましょう。