電流の計測方法と原理とは|電流計の使い方と選び方も解説

電気設備や工業機械の保守やメンテナンスの際には、電流を測定するケースがあります。電流の計測方法は複数あり、それぞれ原理やメリットが異なるため、用途に合ったものを選択しましょう。また、計測対象とする対象物によって、向いている電流計の種類も変わります。電流計を選ぶときには、いくつかのポイントを押さえるのがおすすめです。

この記事では電流の計測方法やそれぞれの原理、電流計の種類や使い方、電流計選びのポイントを解説します。

1. 電流の計測方法3種

電流の計測には、代表的な方法が3種類あります。それぞれの測定方式では、原理やメリットが異なるため、用途に合わせた方法を選ぶことが大切です。

電流の主な計測方法3種と、その原理について紹介します。

1-1. シャント抵抗方式

シャント抵抗方式とは、電気回路に抵抗器を組み込み、回路に流れる電流を検出することを指します。シャントには、「分路する」という意味があり、電気回路に並列に組み込む電流計をシャント抵抗と呼ぶようになったのが始まりとされています。

シャント抵抗器は、抵抗器の両端の電圧を測定し、降下した電圧と抵抗値から電流値を計算する仕組みです。主に、電子機器の省エネルギー化や安全性の向上を目的としたさまざまな制御を行うために使用されます。

シャント抵抗方式は電流検出の原理が簡単な方法である一方で、電流が流れると発熱し、抵抗値に測定誤差が生じる場合があります。また、電解コンデンサやICなど熱に弱い部品を使用している際には、部品に悪影響を与える可能性がある点に注意が必要です。

1-2. ホール素子方式

ホール素子方式とは、磁界が生じた際に、磁界と直交する方向に電圧を発生させる「ホール素子」を利用して電流値を測定する方法です。ホール素子方式は、直流と交流の両方の電流を測定することができます。

ホール素子方式は、回路に電流測定器を接続する必要がないため、ケーブルなど電気機器に流れる電流を測定するときでもケーブルを切断することなく測定可能です。この方法は乗用車をはじめとした輸送機器のバッテリー出力をモニタリングする際や、電源設備の定期点検、消費電力の把握などに使用されます。

ただし、ホール素子は温度や経年劣化の影響を受けやすく、電流値の測定精度があまり高くないというデメリットがあります。精密な電流値を出したい場合には、不向きな方法と言えるでしょう。

1-3. CT方式

CT方式とは、測定する電流回路に接続する1次コイルと、磁性体コアに巻きつけた2次コイルの2つのコイルを使用して電磁誘導を起こし、電流を測定する方法です。CTは「Current Transfomer」の略称で、日本語では変流器と呼ばれています。

CT方式を使用すると、電流の強さを扱いやすいものにでき、危険な高圧回路の電流出力の測定を安全に行うことが可能です。排水・下水処理ポンプの落水監視や発電所の発電量監視などの産業・インフラ設備によく使用されます。

ただし、電磁誘導の作用を利用して電流を測定するため、磁界が時間的に変化しない直流電流は測定できない点がデメリットです。

2. 主な電流計の種類と使い方

主要な電流計は、テスターとクランプメータの2種類に分けられます。さらに、テスターの中には、デジタル式とアナログ式の2種類があり、それぞれ特徴や用途が異なります。

主な電流計3種類と、それぞれの使い方について解説します。

2-1. デジタル式テスター(デジタルマルチメータなど)

テスターとは、内部の回路を切り替え、直流・交流の電流や電圧、抵抗などを調べられる計測器です。デジタル式テスターは、測定した電流が数値としてディスプレイに表示されます。電流数値をそのまま表示するため、読み間違いが起こりにくいメリットがあります。また、小数点以下5桁の数値を表示できる機械もあり、正確な値を確かめることが可能です。

デジタル式テスターは、まずスイッチを電流を示す「A」に切り替え、続いて測定部分に直列になるようにテスト棒を接触させることで電流を測定できます。

テスターに過度な電流がかかると故障の原因となるため、予測できない電流を測定する場合は、最大レンジから測定を始めて徐々に値を下げるようにしましょう。また、電流測定用の端子と電圧測定用の端子を間違えると、故障や感電の原因になる点に気をつけてください。

2-2. アナログ式テスター

アナログ式テスターは、測定した電流の値がメーターを使用して表示される機械です。針と目盛りを使って電流値を表示するため、電流の変化を視覚的に把握しやすい点がメリットです。デジタル式よりも反応が早く、素早く数値を確認できますが、目盛りなどの読み間違いが発生しやすく、数値の読み取りに慣れるまで時間がかかる場合があります。

アナログ式テスターの使い方としては、まず赤のテスト棒をプラス極に、黒のテスト棒をマイナス極に差し込みます。

次に、テスト棒の配線が断線していないか確認するため、レンジ切り替えを「Ω」に合わせて2つのテスト棒を接触させます。針が大きく右に振れた場合は異常ありません。その上で、レンジ切り替えを「A」に合わせ、電流を測定したい回路にテスト棒を直列に繋ぐと、電流の測定ができます。

2-3. クランプメータ

クランプメータとは、回路を切断せずに電線をはさみこみ、電流から発生する磁場を測定して電流値を表示する計測器です。運転中の電気設備などを停止させる必要がなく、通電状態で電流値を測定できるというメリットがあります。

ホール素子方式を採用したクランプメータであれば、直流・交流どちらの電流も測定できます。ただし、高い精度を求める際には、直流と交流それぞれに適したクランプメータを選定することが重要です。

クランプメータの使用方法はシンプルで、電流を測定したい回路をセンサー部分ではさむだけです。使用前には、ファンクションスイッチを測定したい電流値に合わせます。直流・交流どちらも測定できる機械の場合は、いずれかの電流のタイプを選択しましょう。

3. 電流計を選ぶときのポイント

電流計を選ぶ際には、いくつかのポイントに注意しながら機械を選ぶことが大切です。テスターとクランプメータに分けて、選ぶときのポイントを3つ紹介します。

テスターを選ぶポイント
サイズや形状 テスターには、ポケットに入るような小型サイズやフック付きのもの、ペン型などさまざまな種類があります。使いやすい形状とサイズ感を選びましょう。
使用用途 視覚的に素早く数値が知りたい場合はアナログ式、正確な数値を測定したい場合は、デジタル式がおすすめです。
機能性 測定レンジを自動で調節できるオートレンジ機能や測定結果を保存するホールド機能など、必要な機能があるかどうかもテスターを選ぶ際に重要なポイントです。

テスターを選ぶ際には、電流を測定したい対象物を明確にしておくとスムーズに選択できます。

クランプメータを選ぶポイント
サイズや形状 クランプメータには、フォークタイプとクランプタイプの2種類の形状があるのが特徴です。クランプタイプはさまざまなサイズのものが販売されています。フォークタイプは、先端部分のすき間に測定回路を差し込むだけで使用できるのがメリットです。
使用用途 大きな電流値を測る際には、負荷電流測定用を選びましょう。一方、漏電などを確認するために微少電流を測りたい場合は、漏れ電流測定用を選ぶことをおすすめします。
機能性 クランプメータは、直流・交流どちらの電流も測定できるモデルが販売されています。ただし、精度を重視する場合は、直流電流専用または交流電流専用を測定できる商品がおすすめです。

クランプメータには、テスター機能のあるモデルも販売されています。テスター機能があると、テスト棒を使用して電圧出力や内部抵抗値なども測定できます。

まとめ

電流の計測方法には回路に抵抗器を組み込むシャント抵抗方式、ホール素子を利用して電流値を測定するホール素子方式、コイルを使用して電流を測定するCT方式があります。これらの方式を利用して電流を測る計測器が電流計です。

電流計にはテスターとクランプメータの2種類があり、テスターはさらにデジタル式とアナログ式のバリエーションが存在します。テスターは直接回路に接続して電流を測り、クランプメータは回路を切断せずに電線をはさみこみ、電流から発生する磁場を測定して電流の値を表示します。電流を測定したい対象物によって、どのような種類の電流計が向いているかは変わります。

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