膜厚計とは?種類ごとの原理・特徴と膜厚計の選び方を解説

製品や設備への塗装は変色や錆びの防止に必要である一方で、過剰な塗装はひび割れにつながり、製品の状態を悪くしてしまいます。塗装を適切な厚さで施すため、塗装の厚さを測定する際に使用するのが膜厚計です。

膜厚計にはさまざまな種類があるので、測りたいものの材質を鑑みて膜厚計を選びましょう。当記事では、膜厚計の種類と選び方を詳しく解説します。膜厚計の使用を検討している方はぜひ参考にしてください。

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1.膜厚計とは?

膜厚計とは、塗装の厚さである「塗膜」を計測する機械です。通常、家電製品・自動車・橋といった製品や設備にはペイント・メッキ・樹脂などの塗装が施されていますが、塗装が厚すぎても薄すぎてもトラブルが発生してしまいます。

例えば、塗膜が厚すぎると、表面にひび割れが起きる可能性があります。塗料を過剰に使うため、コストを増やすことにもなるでしょう。一方、塗装が薄すぎると、変色や錆びが発生し、製品や設備の劣化を招きます。

塗装された製品や設備を良好な状態で長く使用するためには、それぞれに適した分量を塗装する必要があり、膜厚計で厚さを的確に計測する作業が欠かせません。膜厚計は、製造ラインやプラント・構造物の修理や点検など、多様な場面で重要な役割を果たしています。膜厚計は製品や設備の品質管理をサポートする重要な機械でありながら、使用する際に特別な訓練などは不要で、取り扱い方法も簡単です。

2.膜厚計の種類

膜厚計には複数の種類があり、測定原理や測定方法、対応可能な素材などが異なるため用途に応じて使い分ける必要があります。以下では、6つの膜厚計を取り上げ、それぞれの特徴について解説します。

2-1.電磁式膜厚計

磁石を引っ張る力である「磁束密度」を利用して塗膜を計測する膜厚計で、磁石にくっつく金属が素地となっている場合に使用できます。測定針には電磁石が入ったコイルが採用されており、測定対象に接触させたときに磁束密度に起こる変化から塗装の厚さを算出する仕組みです。

磁束密度の数値は、塗膜表面から塗膜の下にある素地までの距離によって変わります。例えば塗膜が薄いと、素地とプローブとの距離が短くなり、磁束密度は高くなります。塗膜が厚ければ、素地とプローブとの距離は長くなるため、磁束密度は低くなります。この磁束密度の違いを利用して、塗装の厚さを計測します。

電磁式膜厚計を利用できるのは、鉄や鋼など磁性体金属の素地に、メッキや樹脂膜といった非磁性体の塗装を施した製品や設備です。磁気を帯びた塗装を施している製品や設備には使用できません。

2-2.渦流式膜厚計

過流式膜厚計は、測定針のプローブに電磁石が入ったコイルを採用していますが、電磁式膜厚計とは測定原理が異なります。渦流式膜厚計では、先端を測定対象に接触させる際に発生する過電流の強弱から塗膜を計測します。電流を利用するため、磁石にくっつかない金属に施された塗膜も計測できます。

過電流の強弱を左右するのは、測定対象の表面から素地までの距離です。塗膜が薄いと過電流は強くなり、塗膜が厚いと過電流は弱くなります。塗膜の算出方法には、過電流の振幅を用いる接触式、過電流の位相差を用いる非接触式があります。

過流式膜厚計は、非磁性体の金属上に施された絶縁性被膜の計測に最適な機械です。具体的には、アルミニウムや銅といった素地に、プラスチックや樹脂といった塗装を施した製品や設備の計測に適しています。ただし、電気を通す物質で塗装されている場合は使用できません。

2-3.デュアル膜厚計渦流式膜厚計

電磁式膜厚計と過流式膜厚計、双方の計測機能を備えた膜厚計です。鉄や鋼などの磁性体と、アルミニウムや銅などの非磁性体の金属のどちらも計測ができます。電磁式と過流式で異なる2種類の測定針を使用するタイプ、1本の測定針で双方に対応できるタイプなどがあります。

2-4.超音波式膜厚計

超音波の伝搬時間を利用して塗膜を計測する膜厚計で、非金属の素地にも利用できる点が特徴です。プローブを測定対象の表面に接触させ、プローブが発した超音波が素地までたどり着いた後、反射して戻ってくるまでの時間(音速)から塗膜の厚さを導き出します。

超音波膜厚計に適しているのは、コンクリート・木・ガラス・プラスチックといった素地の塗膜です。音速の数値は素材ごとにおおよそ決まっているものの、個々の塗膜で音速に差異が生じるため、測定対象に合わせた調整が必要となります。

2-5.分光干渉式膜厚計

光の干渉効果を活用して計測する膜厚計です。電子部品・医療関連機器・光学材料・半導体関連機器など、多彩な部材の膜厚を計測することが可能です。

光を膜に照射すると、膜の表面と膜の裏面での2つの反射光が発生します。光の強度は、反射光それぞれの波長が一致すると強まり、ずれると弱まります。各反射光の波長である位相に応じて光の強度が変化する現象が光の干渉です。

測定方法としては、ファイバーから光を測定対象に照射し、測定対象から反射した光をファイバーで受光することで光の干渉パターンを解析し、厚さを導き出します。表面が粗い膜や、多層膜などにも対応する点も分光干渉式膜厚計の特徴です。

2-6.赤外線膜厚計

赤外線の中でも特定の波長が塗膜の厚さと素材に応じて吸収されるという特性を基に、塗膜の厚さを計測する膜厚計です。測定対象に赤外線を照射した際に発生する透過光や反射光の分光スペクトルを解析して厚さを算出します。

赤外線膜厚計を用いると、測定対象の表面状態や色の濁り、振動などの影響を受けにくく、非接触で迅速に計測できる点はメリットです。塗膜の厚みを計測するのみならず、プラスチックフィルムをはじめとする単層膜・多層膜の厚さ計測にも活用されています。

波長の組み合わせに応じて、アクリル・ウレタン・シリコンなど多様な材質の厚さを計測できる赤外線膜厚計もあります。

3.膜厚計を選ぶポイントは?

膜厚計には複数の種類があるため、各機種の特徴や測定対象となる素材・目的に適したものを選ぶことが大切です。ここでは、膜厚計を選ぶポイントを3つ挙げ、詳しく解説します。

素地・被膜の素材は何か
測定対象の素地・被膜の素材は膜厚計を選ぶ際の重要なポイントです。例えば、素地が鉄や鋼といった磁性体の測定対象には電磁式膜厚計が、アルミニウムや銅など非磁性体の測定対象には過流式膜厚計がそれぞれ適しています。

被膜に関しては、メッキや樹脂膜といった非磁性体の素材には電磁式膜厚計を、プラスチックやゴムなど絶縁性被膜の素材には過流式膜厚計を選びましょう。

被膜の厚さはどの程度か
膜厚計の測定範囲は機種ごとに決まっています。このため、測定対象となる被膜の厚さがどの程度かをあらかじめ知っておくことも膜厚計を選ぶポイントです。被膜の厚さが膜厚計の測定範囲外であれば、計測できません。膜厚計を選ぶ際は必ず、製品の測定範囲が被膜の厚さに対応できるかどうかを調べてください。
継続的に計測するかどうか
計測の頻度によっても、適した膜厚計は異なります。同じ場所で継続的に使用するか、場所を移動して単発的に使用するかを考えましょう。

例えば、継続的な計測には、据え置き型の赤外線膜厚計や分光干渉式膜厚計が適しています。一方、場所を移動して行う計測に適しているのは、持ち運び式の電磁式膜厚計や過流式膜厚計、超音波膜厚計です。屋外で利用する場合は、悪天候下での作業も想定し、防水などの機能を備えた機種を選ぶことをおすすめします。

まとめ

製品や設備の塗装の厚さを測るときに用いられるのが膜厚計です。膜厚計は計測可能な素材や計測方法によって複数の種類に分けられるため、目的に合わせてどの種類を使用するか検討する必要があります。たとえば、磁性のある金属素材の上に非磁性体の塗装をしている場合は電磁式膜厚計を、磁性のない金属素材の場合は渦流式膜厚計を選びましょう。

膜厚計はレンタルも可能です。短期間だけ必要な場合や導入コストを抑えたい場合は、レンタルでの使用もご検討ください。

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