超音波流量計とは?測定原理やメリット・流量計の種類も解説

配管の中を通る気体や液体の流れる量を測る際に使用するのが流量計です。流れる量をどのような方法を用いて測るかによって、流量計はさまざまな種類に分類され、超音波を利用する「超音波流量計」もその中の1つです。

当記事では流量計の種類とともに、超音波流量計の仕組みや特徴、使用する際の注意点を詳しく解説します。計測器を扱うときは、目的や状況に合った機器を使用することが大切です。どのような流量計を使えばよいのかを考える際、ぜひ当記事を参考にしてください。

1. 超音波流量計とは?

そもそも流量計とは、配管や溝の中を通る液体・気体・蒸気などが流れる量を測定する機器のことです。

流量計にはさまざまな種類があり、中でも超音波を使用して流量測定をする機器が「超音波流量計」と呼ばれます。

超音波とは、人の耳では聞き取れない高い周波数の音波です。超音波には物体の内部を透過して伝播する特性や、異なる物質に当たったときに反射する特性があります。

超音波流量計は、物体内部を伝播した超音波の速度や周波数変化を調べることで、流量測定ができる計測機器です。

1-1. 流量計の種類

流量計は、測定法によってさまざまな種類が存在します。

以下では超音波流量計以外の種類を5つ挙げて、特徴を簡単に説明します。

・容積流量計

容積流量計は、楕円形の歯車が2つ内蔵された計量室に流体を流し、歯車の回転数によって流量測定をする流量計です。流体が歯車を動かすエネルギーによって測定を行うため、粘度の高い流体の流量測定に向いています。反面、粘度の低い流体や異物を含む流体の測定には不向きです。

・コリオリ流量計

コリオリ流量計は、物体の回転に伴って力の方向がずれる「コリオリの力」を利用した流量計です。コリオリ流量計の内部には2本のU字チューブが設けられていて、チューブ内に流体を流すと流入側と流出側で力の方向が逆になり、チューブが回転しようとねじれます。チューブのねじれをセンサーで調べて流量測定を行うことが、コリオリ流量計の原理です。ねじれの強さは流体の質量に比例するため、コリオリ流量計は流体の質量を調べる「質量計測」ができます。

・タービン流量計

タービン流量計は、羽根車を内蔵した計量室に流体を流し、羽根車の回転数によって流量測定をする流量計です。高精度の測定が可能であるものの、粘度の高い流体や異物を含む流体の流量測定には向かないデメリットがあります。

・熱式質量流量計

熱式質量流量計は、ヒーターを内蔵した計量室に流体を流し、流体がヒーターから奪う熱量を調べることで流量測定をする流量計です。主に気体の流量を測定するケースで使用されています。

・電磁式流量計

電磁式流量計は、電磁石で磁界を作った計量室に導電性の流体を流し、電磁誘導によって導電性の流体が起こす起電力から流量測定をする流量計です。流体の温度・圧力・粘度などの影響を受けず、異物を含む流体の流量測定もできるメリットがあります。ただし、導電性のない流体や気体の測定はできません。

2. 超音波流量計の仕組み

超音波流量計には「ドップラー式」と「伝搬時間差方式」の2種類があり、流量測定をする仕組みに違いがあります。

以下では、各方式の流量測定をする仕組みと、優れている点・注意点を紹介します。

2-1. ドップラー式の仕組み

ドップラー式は、音に関する現象である「ドップラー効果」を利用し、超音波で流量測定をするタイプの超音波流量計です。

そもそもドップラー効果とは、音の発生源や観測者が移動すると、音の聞こえ方(周波数)が変わる現象です。ドップラー効果は音の発生源や観測者が移動する速度とも関係があり、周波数の変化を調べることで移動する速度を計測できます。

ドップラー式では、流体の中にある気泡や固形物に超音波を当て、反射した超音波を調べて得られる周波数の変化を計測しています。周波数の変化から流体の速度(流速)が分かり、パイプ内を流れる流量も計算可能です。

ドップラー式は気泡や固形物に超音波を当てる必要があるため、気泡などが存在しない流体の流量測定には使えません。汚水・排水などのように、不純物が多く存在する流体の流量測定に適しています。ただし、伝搬時間差方式と比べると計測結果の誤差が大きくなりやすいデメリットもあるため、注意が必要です。

2-2. 伝搬時間差方式の仕組み

伝搬時間差方式は、パイプ内を横断するように超音波を発信して、受信側が受信するまでの時間差を計測するタイプの超音波流量計です。

パイプ内を横断するように超音波を流したとき、超音波が伝わる速度は流速に影響されます。例として、上流から下流に向けて超音波を流すと、流速の分だけ超音波が伝わる速度は速くなるでしょう。

伝搬時間差方式は、超音波が伝わる速度の時間差から流速を求めて、パイプ内を流れる流量を計算する仕組みです。

伝搬時間差方式は超音波をパイプ内で横断させる必要があるため、不純物が多く存在する流体は正確に測定できません。不純物がある程度除去されている流体や、超純水などの不純物が全くない液体・気体の流量測定に適しています。

3. 超音波流量計のメリット

超音波流量計の代表的なメリットを3つ紹介します。

・クランプオン型がある

超音波流量計は、超音波の送受信器をパイプ内に設置する「接液型」と、送受信器を配管外側に取り付ける「クランプオン型」の2種類があります。パイプ内への設置工事が必要な流量計が多い中、超音波流量計にはクランプオン型の製品がある点がメリットです。

クランプオン型は配管外側に装置を取り付けるだけで流量測定ができるため、配管工事の手間がいりません。パイプ内の流れを妨げるパーツがなく、流体の圧力損失が起こらない利点もあります。

・測定精度が高い

超音波流量計は、ドップラー式も伝搬時間差方式も超音波の特性を利用しており、流量を高い精度で計測できます。流体の温度・圧力・粘度などの影響も受けず、さまざまな流体の流量測定が可能です。

・計測結果の応答が早い

超音波流量計で使用する超音波は音速であるため、計測開始から結果が出るまでの応答が速いメリットがあります。流量の変化にも素早く対応でき、流体の圧力が周期的に変動する脈動流の測定や流量管理にも適しています。

他の種類の流量計と比べた場合、超音波流量計には「ポータブルで手軽に計測できる」「流量計を組み込んでいない配管設備にも利用できる」といったメリットもあります。

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4. 超音波流量計を使用する際の注意点

超音波流量計を使用する際は、下記の2点に注意してください。

・直管部が必要

超音波流量計はパイプの直管部に設置する必要があります。曲げパイプや絞りパイプの内部では流体の流れが変化し、測定結果に誤差が生じるケースがあるためです。

・気泡に弱い

超音波をパイプ内で横断させる伝搬時間差方式の超音波流量計は、気泡に弱い特徴があります。わずかな気泡でも正確に測定できない、もしくは動作停止する可能性があるため、気泡が発生するパイプでの使用には注意してください。伝搬時間差方式の超音波流量計を使用する際は、気泡が発生しやすい場所から十分に離して設置するか、パイプに気液分離機を設置することがおすすめです。

なお、ドップラー式の超音波流量計であれば、気泡が存在するパイプ内でも流量測定が行えます。

まとめ

超音波流量計とは、超音波を利用して配管や溝の中を流れる液体・気体の量を計測する機械です。流量計は仕組みによって容積流量計やコリオリ流量計、タービン流量計など多くの種類がありますが、超音波流量計は測定精度が高く、パイプの外部に機器を設置できるクランプオン型がある点が特徴です。

超音波流量計の中にも、精度は高いものの不純物や気泡に弱い「伝搬時間差方式」と、不純物の多い流体の計測に適した「ドップラー式」の2種類があります。超音波流量計を使用するときは、目的に合った計測器を選ぶことが大切です。

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