サーモグラフィとは?特徴や仕組み・導入事例を解説

感染症対策の一環として日常生活の中でも活用されているサーモグラフィは、他にも工事現場や設備点検の際に利用されています。非接触で広範囲の温度を一度に計測できるサーモグラフィは、どのような仕組みで温度を可視化しているのでしょうか。

当記事では、サーモグラフィの仕組みと導入事例、活用することのメリットを詳しく解説します。サーモグラフィを現場でも活用したいと思っている方は、ぜひ当記事を参考にしてください。

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1. サーモグラフィとは?

サーモグラフィとは、対象物から放射されている赤外線を検知し、対象表面の温度分布を可視化する装置または方法のことです。

正式には装置を赤外線サーモグラフ、方法を赤外線サーモグラフィと呼びます。しかし、一般的に名称を分けて表記されることはほとんどありません。

出典:一般社団法人 日本赤外線サーモグラフィ協会「赤外線サーモグラフィとは」

 

1-1. サーモグラフィの特徴

サーモグラフィには、下記に挙げる3つの特徴があります。

  • 広い面積の温度分布を可視化して表示できる
    サーモグラフィは対象物の一部分だけではなく、広い面積の温度測定ができます。広範囲の温度分布を可視化することにより、異常な温度がある場所や、温度の伝達を効率的に検出可能です。
  • 温度測定が非接触で行える
    サーモグラフィは対象物が放射する赤外線を利用するため、対象物には触れずに温度測定をすることが可能です。接触式の計測機器に適していない小さな測定対象や、接近が難しい対象物も、接触を必要としないサーモグラフィであれば簡単に温度測定ができます。
  • 温度測定がリアルタイムでできる
    サーモグラフィの撮影中は、モニターに表示される熱分布画像がリアルタイムで更新されます。対象物の温度変化を厳格に監視したり、測定温度を一定間隔で記録したりするときに、サーモグラフィは向いています。

出典:一般社団法人 日本赤外線サーモグラフィ協会「赤外線サーモグラフィとは」

 

2. サーモグラフィの仕組み

サーモグラフィは、物体から出る赤外線を検知し、温度に変換して色分け表示することで熱の分布を可視化します。ここでは、その仕組みを3つに分けて解説します。

 

2-1. 物体が放つ赤外線を検知して温度に変換する

サーモグラフィは、物体から放射される赤外線を検知し、その強さを温度に換算して測定する機器です。熱を持つ物体は赤外線を放っており、温度が高いほど放射されるエネルギーも強くなります。サーモグラフィはこの性質を利用し、対象に触れずに表面温度を把握します。接触式の温度計のように対象へ直接当てる必要がないため、稼働中の設備や高温部、手が届きにくい場所も離れた位置から確認できます。

なお、測定しているのは物体内部の温度ではなく、対象表面から出ている赤外線をもとに算出した表面温度です。そのため、設備点検や品質管理など、温度の変化を安全かつ効率的に確認したい場面で役立ちます。

 

2-2. 温度を色分けした熱分布画像として映し出す

サーモグラフィは、赤外線の強さを温度に変換した後、その温度差を色分けした熱分布画像として画面に表示します。赤外線は人の目では見えませんが、画像化することで、どの部分が高温で、どの部分が低温なのかを直感的に把握できます。一般的には温度が高い部分を赤や白、低い部分を青や黒などで表すため、数値だけでは分かりにくい温度ムラや異常な発熱を見つけやすくなります。

複数の場所を点で測る温度計とは異なり、面として温度分布を確認できる点も特徴です。設備点検や品質管理では、広い範囲を一度に確認できるため、目視だけでは気づきにくい異常箇所の早期発見や効率的な確認にも役立ちます。

 

2-3. 放射率を設定して表面温度を正確に求める

サーモグラフィで表面温度を正確に求めるには、測定対象に合わせて放射率を設定する必要があります。放射率とは、物体が赤外線をどの程度放射しやすいかを示す値です。同じ温度でも、材質や表面の状態によって放射される赤外線の強さは異なります。たとえば、つやのある金属は赤外線を反射しやすく、実際の温度と測定値に差が出る場合があります。一方、黒く塗装された面や樹脂などは比較的測定しやすい対象です。

そのため、対象物の材質や表面状態に応じて放射率を補正することで、より正確な表面温度を算出できます。設備点検や品質管理では、測定前に測定対象や設定条件を確認することが重要です。

 

3. サーモグラフィの種類

サーモグラフィには、設置方法や検出方式によって複数の種類があります。用途に合う機種を選ぶため、ここでは形状と検出方式の2つの観点から主な違いを解説します。

 

3-1. 形状による分類

サーモグラフィは、形状によって固定式とハンディ型に大きく分けられます。固定式は、三脚や壁、設備の近くなどに設置して使うタイプで、同じ場所を継続的に監視したい場合に適しています。一方、ハンディ型は手に持って測定するタイプで、点検場所を移動しながら使いやすい点が特徴です。

種類 特徴 主な用途
固定式 一定の場所に設置して、同じ対象を継続的に測定できる 工場設備の監視、製造ラインの温度管理、出入口での検温
ハンディ型 手に持って測定でき、複数の場所を移動しながら確認できる 配電盤や機械設備の点検、建物の外壁調査、巡回点検

固定式は継続監視、ハンディ型は巡回点検に向いています。測定する場所や頻度、対象範囲に合わせて選ぶことで、現場に適したサーモグラフィを導入しやすくなります。

 

3-2. 検出方式による分類

サーモグラフィは、検出方式によって冷却型と非冷却型に分けられます。それぞれ仕組みや得意な測定が異なるため、用途に合わせて選ぶことが大切です。

種類 仕組み 特徴 主な用途
非冷却型 赤外線によるセンサーの温度変化を電気信号に変えて測定する 冷却機構が不要で、小型・軽量化しやすい。扱いやすく、一般的な点検用途に向いている 設備点検、温度管理、建物調査、巡回点検
冷却型 検出素子を低温に冷やし、熱ノイズを抑えて赤外線を高感度に検出する 感度や応答速度に優れる。微小な温度差や高速で変化する対象を捉えやすい 研究開発、高精度測定、特殊な温度解析

一般的な設備点検や温度管理では、扱いやすい非冷却型が多く使われます。一方、より高い精度や高速な測定が必要な場合は、冷却型が選ばれます。

 

4. サーモグラフィのメリット

サーモグラフィには、下記に挙げる5つのメリットがあります。

  • 広い面積の温度分布を観察・比較しやすい
    サーモグラフィは広い面積の温度測定ができるため、温度分布の傾向を観察したり、異なる場所の温度を比較したりする用途に向いています。測定作業にかかる手間やコストを削減可能です。
  • 動いている対象物や、暗い場所も簡単に温度測定ができる
    サーモグラフィは非接触の温度測定方法であり、対象物が動いていても問題なく温度測定ができます。赤外線は暗闇の環境下であっても捉えられる光であり、撮影のために用意した光源の熱で、対象物の温度を変化させる心配もありません。
  • 微小な対象物も、温度の乱れを起こさずに温度測定ができる
    サーモグラフィは、電子機器の小型パーツや小さな生物などの温度測定にも向いています。対象物に計測機器を接触させる必要がなく、温度の乱れを起こさずに温度測定ができます。
  • 対象物を汚染せず、衛生的に温度測定ができる
    温度測定をする対象物によっては、計測機器を接触させたり計測者が接近したりすると、対象物を汚染する可能性があります。サーモグラフィは非接触であるため、対象物と距離を保ったまま食品や薬品などの温度を衛生的に測定できます。
  • 温度変化が激しい対象物や短時間の現象も、正確に温度測定ができる
    温度測定がリアルタイムでできるサーモグラフィは、対象物のわずかな温度変化も正確に捉えられます。温度変化が激しい対象物や、短時間の現象を観察したいときに向いている測定方法です。

 

5. サーモグラフィのデメリット・注意点

サーモグラフィは非接触で温度分布を確認できる一方、測定対象や環境によっては正確な測定が難しい場合があります。主な注意点は次の2つです。

  • 物体の内部温度は測定できない
    サーモグラフィが検知するのは、対象物の表面から放射される赤外線です。そのため、食品や部材、設備の内部温度を直接測定することはできません。内部の状態を確認したい場合は、接触式温度計など別の方法と併用する必要があります。
  • ガラス越しの測定や鏡面仕上げの金属の測定は難しい

    一般的なガラスやアクリルは、温度測定に使われる赤外線を通しにくいため、窓越しの測定には向きません。また、鏡面仕上げの金属は赤外線を反射しやすく、周囲の熱を映し込んで測定値がずれる場合があります。

    測定時は対象物の材質や表面状態を確認し、放射率設定や測定距離、周囲温度などの条件を調整することが重要です。必要に応じて赤外線を通す専用窓材や接触式温度計を併用すると、測定の信頼性を高めやすくなります。

サーモグラフィは暗い場所でも熱画像を取得できますが、壁や物体の裏側を透視できるわけではないため、測定対象がカメラから見える状態で使用します。

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6. サーモグラフィが導入されている事例

サーモグラフィはメリットが多く、さまざまな現場で導入されている温度測定方法です。

サーモグラフィが導入されている現場を5つの事例に分けて紹介し、具体的にどのような使い方がされているかを解説します。

 

6-1. 設備点検

工場や病院といった施設では電気系統などの設備トラブルを未然に防がなければならないものの、点検作業はなるべく施設の稼働を止めずに行う必要があります。サーモグラフィを使用すると、通電中・稼働中の機器を安全に点検することが可能です。

設備点検にサーモグラフィが導入される理由は、不具合部分に発生している熱を非接触で発見できるためです。サーモグラフィを使うと、ケーブルの劣化による異常発熱や配管の断熱不良などを確認できます。ガス漏れの可視化には、対象ガスに対応したガス検知用赤外線カメラを使用します。

表面からは確認が難しい場所や、高所・狭所などの調査が難しい作業環境も、サーモグラフィを使用すると簡単に点検できます。

 

6-2. 食品の管理

食品の製造や輸送・販売をする工程では、食品の温度を厳密に管理しなければなりません。食品の温度管理において、サーモグラフィは広く活用されています。

例を挙げると、食品の製造ラインにサーモグラフィを設置して、高温殺菌をする食品の温度が一定以上であるかがチェックされています。また、冷凍が必要な食品であれば、貯蔵用の冷凍庫内が規定の温度に保たれているかをサーモグラフィでチェック可能です。

サーモグラフィは非接触で温度測定ができるため、食品の管理を衛生的に行えます。

 

6-3. 医療現場

医療現場では、人体の温度分布を画像化することを目的としてサーモグラフィが活用されています。

サーモグラフィで撮影すると、人体の温度が高い部位と低い部位が視覚的に分かるため、血液の流れや炎症、冷え性などの症状を調べることが可能です。眼科領域では、サーモグラフィにより眼表面温度の分布や変化を非接触で測定する研究・検査用途があります。

また、治験や医療研究の分野においても、被験者の体温変化を測定する用途にサーモグラフィは役立っています。

 

6-4. 工事現場

工事現場では、建物の非破壊検査や断熱検査などでサーモグラフィが使われています。

サーモグラフィで建物の検査ができる理由は、建物・構造物の表面温度を調べることで、内部の状態が推測できるためです。

コンクリート内部に空洞がある構造物を例とした場合、日中にサーモグラフィで撮影すると、空洞がある部分の表面が周囲よりも高温で表示されます。

また、住宅の断熱検査であれば、断熱施工をした場所の温度変化を見ることで断熱性能が十分であるかを検査できます。

 

6-5. 感染症対策

サーモグラフィは、職場やイベント会場などでの感染症対策にも用いられています。広い範囲を一度に、かつ非接触で温度測定できるサーモグラフィは、大人数の体表面温度を測定できる優れた方法です。

感染症対策としてサーモグラフィを導入する場合は、職場や会場の入口に測定機器を設置します。計測場所を通る対象者をサーマルカメラで撮影し、測定担当者はモニターに表示される温度分布をチェックするだけでよいため、効率的に温度測定をすることが可能です。

発熱している方を発見した場合は速やかな対応ができ、感染症対策を強化できます。

 

7. サーモグラフィの選び方

サーモグラフィを選ぶ際は、測定対象や目的、必要な精度に合わせて性能を確認することが大切です。ここでは、選定時に押さえたい3つの基準を解説します。

 

7-1. 測定する対象と目的から必要な性能を決める

サーモグラフィを選ぶ際は、まず測定する対象と目的を明確にします。建築物の断熱状態や設備の異常発熱、工場の温度管理など、用途によって必要な性能は異なります。たとえば、広い範囲を確認したい場合は視野角、細部まで見たい場合は解像度が重要です。動く対象を撮影するならフレームレートも確認します。

対象までの距離や測定環境、記録や報告の方法も踏まえ、必要な機能を整理してから機種を選ぶことで、現場に合ったサーモグラフィを導入しやすくなります。選定前に用途を具体化することが大切です。

 

7-2. 必要な精度に合わせて解像度と温度分解能の条件を定める

サーモグラフィを選ぶ際は、必要な精度に合わせて解像度と温度分解能を確認します。解像度は熱画像の細かさを示す項目で、数値が高いほど対象の形や発熱箇所を鮮明に確認しやすくなります。温度分解能は、検出できる最小の温度差を示す項目です。

わずかな温度差を見分けたい場合は、温度分解能の数値が小さい機種を選ぶと、異常発熱や温度ムラを把握しやすくなります。設備点検や品質管理では、見たい範囲の広さと確認したい温度差を整理し、過不足のない条件を定めることが大切です。

 

7-3. 測定温度範囲とフレームレートを測定対象に合わせる

サーモグラフィを選ぶ際は、測定対象の温度に合う測定温度範囲を確認します。設備点検や建物調査では一般的な温度範囲で対応できる場合がありますが、高温の炉や産業設備を測る場合は、より高温域に対応した機種が必要です。

あわせて、1秒間に画面を更新する回数を示すフレームレートも確認しましょう。静止した対象なら低めでも対応しやすい一方、動く対象や移動しながらの測定では、高いフレームレートの機種を選ぶと、温度変化や動きをなめらかに適切に捉えやすくなります。

 

まとめ

サーモグラフィとは、赤外線を検知し、対象の温度を可視化する装置や方法のことを指し、建築現場や設備点検、医療現場でも幅広く活用されています。非接触で温度分布を可視化できるため、動いているものや暗い場所でも利用でき、一度に広範囲の温度確認も可能です。

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