IVカーブとは?計測によって分かる内容と計測の目的を解説
IVカーブは、太陽光発電システムの性能評価に欠かせない重要な指標です。電流と電圧の関係をグラフ化したものであり、装置の動作特性や効率性を詳細に把握することができます。
この記事では、IVカーブの基本的な概念から、その目的や特徴、さらには異常が生じた際のパターンまでを解説します。さらに、IVカーブを計測する際に留意すべき注意点や、必要な機器についても紹介するので、太陽光発電システムの保守点検を担当する方は、ぜひ参考にしてください。
1.IVカーブとは
IVカーブ(IVカーブ特性)とは、太陽光発電システムの検査である「IVカーブ測定」において、電流値・電圧値の変化をグラフ化したものです。一般的に、電圧をX軸、電流をY軸に設定したグラフで表されます。
IVカーブ測定では太陽光発電システムを発電状態にし、専用の計測機器を使用して太陽電池モジュール・ストリングの性能を測定します。グラフ化されたIVカーブ特性が正常であるか、異常であるかを分析することにより、太陽電池の発電能力に問題がないかを確認することが可能です。
1-1.IVカーブを確認する目的
IVカーブ特性を確認する目的は、太陽光発電システムにおける発電性能の計測や、不具合の発見をすることです。
そもそも太陽光発電システムの動作確認を行う際は、ストリングの開放電圧測定を行います。
開放電圧とは、太陽発電システムの出力端子に何も接続していない状態における、出力端子の電圧です。乾電池を例とすると、乾電池に何も接続していない状態のときに、乾電池のプラス極・マイナス極間に存在する電圧が開放電圧となります。
太陽光発電システムの開放電圧を測定すると、ストリングが発生可能な電圧の最大値を測定可能です。
ただし、太陽光発電システムの開放電圧は、太陽電池に不具合がある場合でも正常な場合と同じ測定値を示します。開放電圧測定だけでは発電性能の変化が確認できず、不具合の発見につながりません。
太陽光発電システムの正確な性能チェックや故障診断をするには、発電回路に電気を流すIVカーブ測定を行い、IVカーブ特性を調べることが大切です。
2.IVカーブの特徴
IVカーブ測定によってグラフ化されたIVカーブ特性は、電流値と電圧値の変化が波形によって表されることが特徴です。
IVカーブ特性のグラフの見方は、特定の電圧をかけたときに、電流の値がグラフのどの位置に対応しているかを見ます。例として、グラフ上の電圧が200Vのときに電流値が2.2Aであれば、当該の太陽電池で200Vの電圧をかけると2.2Aの電流が発生する仕組みです。
IVカーブ特性のグラフ上で、特定の電圧をかけたときに対応する電流が得られる点を「動作点」と呼びます。電力の計算式は「電圧×電流」であるため、動作点からX軸・Y軸へと引いた垂直線とグラフの軸線で囲まれた四角形の面積は、太陽電池の出力(発電量)を表しています。
また、太陽電池の最大出力である「最適動作点」は、四角形の面積が最大になる動作点を調べることで確認可能です。
正常な場合のIVカーブ特性は、下向きに緩やかなカーブを描くグラフが表示されます。太陽電池の出力を表す四角形の面積は電圧値によって徐々に変化し、急激な出力の変化は発生しません。
2-1.異常が認められるときのIVカーブ
IVカーブ特性の形に異常が認められるときは、さまざまな原因が考えられます。以下ではIVカーブ特性の代表的な異常と、それぞれの原因を解説します。
・Iscが低い
Isc(短絡電流)とは、電圧値が0のときの電流です。Iscが低い場合のIVカーブは、正常な場合よりも電流の最大値が低下します。
原因としては「モジュールの構成が間違っている」「ストリングに影や汚れが均等に存在している」「計測時の日射強度が足りない」が考えられます。
・カーブに段がある
正常な場合のように緩やかなカーブではなく、カーブの途中に段があるグラフです。段差は浅い・深いの違いがあり、段の数も複数見られるケースがあります。
段差が浅い場合は「モジュールに小さな影や汚れがある」「小さなひび割れがある」が原因となります。深い場合は「大きな影や汚れがある」「大きなひび割れがある」が原因です。また、段の数が複数見られる場合は「複数のモジュールでさまざまな大きさの影や汚れがある」「さまざまな大きさのひび割れがある」などが原因と言えます。
・勾配の形が違う
短絡電流付近がなだらかに低下している、開放電圧付近の曲線が緩やかであるなど、正常な場合とは勾配の形が違うグラフです。
短絡電流付近がなだらかに低下している場合は「モジュールの経年劣化や漏れ電流がある」「太陽電池の並列抵抗が低い」が原因として挙げられます。
一方、開放電圧付近の曲線が緩やかである場合は、「モジュールが経年劣化を起こしている」「太陽電池の直列抵抗が高い」が原因です。
・一部分がえぐれている
カーブの途中で一部分がV字型にえぐれているグラフです。原因としては「モジュールの配線不良・半田不良」「計測機器側の接続不良」が考えられます。
・垂直に落ちている場所がある
カーブの途中で線が垂直に落ちている場所があるグラフです。原因としては「パワーコンディショナを太陽電池に接続したままの状態で計測している」ケースが考えられます。
3.IVカーブを計測するときの注意点
IVカーブを計測するときは、2つのポイントに注意しましょう。
・日射量によって計測結果が変わる
IVカーブ測定は太陽光発電システムを発電状態にして行う検査であり、ストリングの日射量によって計測結果が変わる可能性があります。特に計測中に日射量が大きく変わる「日射量急変」があると正確な計測が難しいため、計測時間はなるべく短くすることが大切です。
・計測時間が短すぎると正確な計測ができない
日射量急変を避けるには計測時間を短くする必要があるものの、計測時間が短すぎると太陽電池の出力が安定せず、正確な計測ができません。計測機器の仕様を確認し、定められている計測時間を満たせるように測定してください。
また、IVカーブ測定の作業効率を上げる3つのコツを紹介します。
- 測定対象特定や故障位置特定のためにストリング配置図を用意する
- ストリングに影がかかっていないか、周囲に遮光物がないかを確認する
- IVカーブ測定と同時に日射量とパネル温度も測定する
紹介した注意点を押さえ、作業効率を上げるコツも実践することで、正確なIVカーブ測定をスムーズに行えます。
4.IVカーブ特性の測定にはレンタル機器も使用可能!
太陽光発電システムは長期間使用する設備であり、設備点検・メンテナンスは定期的に行う必要があります。IVカーブ測定を行うために、計測機器の購入を検討する方もいるでしょう。
しかし、専用の計測機器は本体価格が数十万円であり、付属品の価格も相応に高価です。計測機器の校正も年1回行う必要があり、購入・管理に高いコストがかかります。
IVカーブ測定の専用機器は、購入するのではなくレンタルすることも可能です。
レンタル機器であれば、購入よりも比較的安いレンタル価格を支払うだけで、専用機器を一定期間使用できます。機器の管理はレンタル会社側が行ってくれるため、校正の必要もありません。
株式会社ソーキでは、IVカーブ測定に活用できる各種レンタル機器を用意しております。
まとめ
IVカーブは、太陽光発電システムの検査である「IVカーブ測定」で、電流・電圧の変化をグラフ化したものです。IVカーブを確認することで、太陽光発電システムにおける発電性能を計測できます。
株式会社ソーキでは、IVカーブ測定に欠かせないPV測定器をレンタルで提供しております。レンタルであれば、購入するよりも費用をかけずに検査を実施することが可能です。太陽光発電システムの保守点検に携わる方は、ぜひ株式会社ソーキのレンタル機器をご利用ください。