暑さ指数とは?算出方法や目安・計測方法を分かりやすく解説
熱中症を防止するためには、気温だけでなく、暑さ指数にも着目する必要があります。暑さ指数とは、気温や湿度・日射の強さを総合的に考慮して熱中症の危険度を示す指標です。
この記事では、暑さ指数がどのように計算されているのか、どの程度の数値であれば熱中症を警戒しないといけないのかについて詳しく解説します。熱中症の予防する具体的な方法についても説明するため、暑くなる季節に備えてぜひ当記事をご覧ください。
1. 暑さ指数とは?
暑さ指数とは、「気温」「湿度」「日射・輻射熱」の3つの要素を取り入れて、熱中症の危険度を可視化した指標です。WBGT(湿球黒球温度)とも呼ばれ、熱中症の予防を目的として1954年にアメリカで提案されて以降、世界中で活用されています。
暑さ指数の単位は摂氏(℃)です。暑さ指数が高いときは熱中症が発生しやすいため、職場において熱中症予防対策を講じる必要があります。
1-1. 暑さ指数の算出方法
暑さ指数を測定するときは、まず専用の機器を使用して黒球温度・湿球温度・乾球温度の3つを計測します。
黒球温度 | 黒色に塗装した銅板の中空球内部に温度計があり、球からの熱輻射を計測します。弱風時の日なたにおける体感温度とよい相関があるとされている温度です。 |
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湿球温度 | 温度計の球部に濡れたガーゼを巻き、球部表面の水分が蒸発することによる冷却熱の影響を受けた温度を計測します。湿球温度が気温よりも低いほど環境の湿度が低いことを示し、汗が蒸発するときに涼しさを感じやすくなります。 |
乾球温度 | 通常の温度計を使用して、環境の気温を計測します。 |
出典:熱中症予防情報サイト「暑さ指数(WBGT)の詳しい説明」
黒球温度・湿球温度・乾球温度の3つを計測した後は、計算式に当てはめて暑さ指数を算出します。
暑さ指数の計算式は、環境が「屋外」「屋内」のいずれであるかによって異なり、それぞれは下記の通りです。
屋外の場合 | 暑さ指数(℃)=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度 |
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屋内の場合 | 暑さ指数(℃)=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度 |
暑さ指数の計算式では湿度を示す「湿球温度」の割合が大きく取られていて、汗の蒸発によって体温を下げやすい温度かどうかが分かります。
1-2. 最高気温との違いは?
熱中症のなりやすさを考えるとき、最高気温を参考にする方も多いでしょう。
しかし、熱中症になりやすい環境かどうかを把握するためには、最高気温よりも暑さ指数のほうが適しています。熱中症のなりやすさは、気温よりも湿度の高さや日差しによる輻射熱のほうが大きく影響するためです。
最高気温だけで熱中症のなりやすさを判断すると、湿度や日差しに対しての注意がおろそかになって、熱中症発生につながる可能性があります。熱中症の危険度を判断するには、暑さ指数を活用しましょう。
2. 暑さ指数の目安
暑さ指数は、労働環境などにおける熱中症の危険度を示す指針として有効性が認められています。
日常生活での暑さ指数の目安は、下記の通りです。
暑さ指数(℃) | 熱中症危険度 | 注意事項 |
---|---|---|
31以上 | 危険 | 通常の生活活動でも熱中症になる危険性が高い。 |
28以上31未満 | 厳重警戒 | 通常の生活活動を行うだけでも熱中症になる危険性がある。 |
25以上28未満 | 警戒 | 激しい運動や重労働を行うと熱中症になる危険性がある。 |
25未満 | 注意 | 熱中症リスクは低いが、激しい運動や重労働により発生する危険性がある。 |
また職場では、身体作業強度などに応じた暑さ指数の基準値を超える場合に、適切な熱中症予防対策を行う必要があります。
身体作業強度などに応じた暑さ指数の基準値は、下記の通りです。
身体作業強度 | 暑さ指数の基準値(℃) | |||
---|---|---|---|---|
熱に順化している人 | 熱に順化していない人 | |||
安静 | 33 | 32 | ||
軽作業 | 30 | 29 | ||
中程度の作業 | 28 | 26 | ||
激しい作業 | 気流を感じるとき | 気流を感じないとき | 気流を感じるとき | 気流を感じないとき |
26 | 25 | 23 | 22 | |
極めて激しい作業 | 25 | 23 | 20 | 18 |
出典:職場のあんぜんサイト「暑さ指数(WBGT値)[安全衛生キーワード]」
職場の暑さ指数を測定した上で、業務内容で想定される身体作業強度の基準値を暑さ指数が上回る場合は、熱中症予防対策を徹底しましょう。
2-1. 暑さ指数の指針を左右する要素
熱中症のなりやすさは作業強度だけでなく、服装によっても左右されるため、衣服の種類に応じて暑さ指数に補正値を加える必要があります。
衣服の種類によって加えるべき補正値は、下記の通りです。
衣服の種類 | 暑さ指数に加える補正値(℃) |
---|---|
作業服や布製のつなぎ服 | 0 |
単層のポリオレフィン不織布製つなぎ服 | 2 |
二層の布製服 | 3 |
つなぎ服の上に長袖ロング丈の不透湿性エプロンを着用した場合 | 4 |
フードなしの単層の不透湿性のつなぎ服 | 10 |
フードつき単層の不透湿性のつなぎ服 | 11 |
服の上に着たフードなし不透湿性のつなぎ服 | 12 |
フード | 1(フードなしの着衣組み合わせの補正値に加算) |
該当する衣服を作業員に着用させている職場では、観測データの実測値に補正値を加えた値を基準値と比較しましょう。
3. 熱中症を予防するには?
職場で発生する熱中症を予防するために、企業は対策を講じる必要があります。
熱中症対策はさまざまな方法があるので、主な方法を把握しておき、自社に合った対策を導入しましょう。
主な熱中症対策を3つ紹介します。
3-1. 休憩場所を設ける
作業場所の近くに冷房を備えた休憩場所を設けて、従業員が定期的に休憩できるようにしてください。休憩場所は、従業員が足を伸ばして横になれる程度の広さが必要です。
休憩場所には、経口補水液やイオン飲料などの水分補給ができる飲み物を用意します。汗によって水分とともに塩分が失われているため、梅干しなどの塩分補給ができるアイテムも置いておきましょう。
また、冷たいおしぼりやシャワー・水風呂なども、従業員が身体を適度に冷やすために役立つ設備です。
3-2. 従業員の作業管理を行う
従業員が熱中症になりやすい行動を取らないよう、下記のような作業管理を行う必要があります。
- 作業に定期的な休憩時間を設け、暑熱環境での連続作業時間を短くする
- 天候や作業現場の環境条件などに応じて、身体作業強度を調整する
- 暑熱順化の期間を設けて、従業員の身体が熱に順化できるようにする
- 定期的な水分塩分補給を促す
- 従業員に透湿性や通気性のよい服装をなるべく着用させる
- 作業中の巡視を行い、従業員の健康状態を把握する
従業員の作業管理は、作業中における従業員の健康状態を企業側で管理する上で重要な取り組みです。
3-3. 従業員の健康管理を行う
熱中症のなりやすさは、従業員個人の健康状態によっても変わります。例を挙げると、睡眠不足や二日酔い、下痢による脱水などは、熱中症リスクを上げる要因です。
企業側は従業員の健康状態を把握し、必要に応じて作業時間の調整や中断を行ってください。従業員が高齢者であったり、糖尿病などの疾患があったりするときにも適切な健康管理が必要です。
健康管理の方法としては、企業が定期的に実施する健康診断のほかに、体温計・心拍計や体重計による日常的な健康状態の把握があります。休憩場所には体温計・心拍計・体重計なども設置し、従業員の健康状態を把握できる体制を整えましょう。
4. 暑さ指数を把握するには熱中症指標計がおすすめ
熱中症を予防するためには、暑さ指数の基準値との比較ができるように、職場で暑さ指数を測定することが大切です。
暑さ指数を測定できる機器は「熱中症指標計」と呼ばれます。熱中症指標計はほとんどの製品がボタン操作のみで暑さ指数を測定できるようになっており、利用するために特別な知識・技術が必要ありません。
職場に熱中症指標計を導入することで、真夏日や猛暑日のときに職場の暑さ指数を測定できて、熱中症予防対策を講じられるようになるでしょう。
熱中症指標計は機器の購入だけでなく、レンタルすることも可能です。職場で導入する熱中症指標計をレンタルしたい方は、下記のページから自社に合う製品を探してみてください。
まとめ
熱中症危険度を確認する際の目安となる「暑さ指数」は、気温だけでなく湿度や日射を含めて計算されるため、より正確に熱中症の危険性を把握できます。暑さ指数をもとにして、休憩場所の設置や作業員の管理によって熱中症対策を進めましょう。
暑さ指数は、熱中症指標計を使用することで測定できます。熱中症指標計はレンタルでも利用できるので、職場での熱中症を防ぐために、職場への導入を検討してもよいでしょう。