A特性とは?C特性・Z特性との違いや騒音の計測方法を解説

人の耳は低周波や超音波は聞き取れず、年齢を重ねた場合は高音域が聞こえづらくなるなどの特徴があります。一方で電子機器は、人間に聞こえない音も計測し、音の大きさを表示するため、人間が感じる音の大きさと、機械が計測する音の大きさにはギャップが生まれます。このギャップを改善する目的で作られた補正が、「周波数重み付け特性」の「A特性」です。

この記事ではA特性および、C特性・Z特性の3つの周波数重み付け特性と、騒音計による騒音レベルの計測方法を解説します。

1.音圧レベルにおけるA特性とは?

A特性とは、騒音を測定するときに用いる、周波数の重み付け特性の1つです。人間の聞こえやすさに合わせて騒音の音圧レベルに補正をかけるものであり、JIS規格「JIS C1509」に規定されています。

人間が聞き取れる周波数は約20Hz~20,000Hzの範囲と言われており、20Hzより低音域の周波数や20,000Hzより高音域の周波数は聞き取れません。特に聞き取りやすい周波数の範囲は約2,000Hz~4,000Hzで、人間が聞き取りやすい音域から離れるにつれ音が小さく聞こえます。例えば、50Hzの周波数で100dBの大きさの音が発生した場合、人間の耳には7割程度の音量に聞こえます。

A特性の測定値は、人間の聴覚に考慮し重み付けを行っているため、実際に聞こえる「うるささ」と似た値で騒音レベルが測定可能です。

1-1.そもそも音圧レベルとは

音圧とは、空気が振動し音が発生することによって生じる圧力変動を指しています。圧力変動の大きさをレベルで現したのが音圧レベルです。音圧レベルの単位はdBと呼ばれ、騒音などの尺度として用いられます。

音圧には基準となる値があり、これを基準音圧と呼びます。発生している音の音圧レベルは、基準音圧より「どれくらい大きいか表現した対数」です。音圧レベルの具体的な計算式は、「発生している音圧の2乗」を「基準音圧の2乗」で除した常用対数の10倍で求められます。

人間が聞こえる音圧レベルは約0dB~140dBの間で、日常会話が50dB前後と言われています。30dBより小さい音は、ひそひそ話や木の葉の音など、耳をすまさないと聞こえないレベルです。100dBより大きい音は、間近で聞く電車の走行音やクラクションなど、日常生活に支障をきたす程度の騒音です。

2.A特性とC特性・Z特性の違いと使い分け

周波数重み付け特性には、A特性・C特性・Z特性があり、使い分けがされています。C特性はかつて、大きな音の騒音レベルを測る目的で使われていました。現在は、補正の範囲が大きいA特性が主に使用され、C特性を計測に使う機会は少なくなっています。

A特性が多く使用されるようになったのは、C特性より人間の感覚に近い補正ができ、効率的に騒音を計測できるためです。C特性は現在、衝撃音やモーター駆動音を測定する際に使用される場合があります。

Z特性は、音圧レベルに補正値をかけないもので、「人間の耳にどう聞こえるか」に配慮されていません。平坦な周波数特性を持つZ特性は、旧規格の騒音計に「フラット特性」として規定されていました。Z特性は純粋な音を測定する際に適しており、環境騒音や音響信号の解析の際に用いられています。

A特性・C特性・Z特性の性能を比較すると、A特性は人間の聴覚に近い補正のため、補正の範囲は3つの中では最大です。C特性は平坦な周波数特性で、補正の範囲が小さい傾向があります。Z特性は、補正がされない自然な音圧レベルを測定します。それぞれの特性は、使用目的ごとに使い分けされ、3つの性質を適切に用いることで正確なデータを測定可能です。

3.A特性が利用されている騒音計

騒音計とは、周囲の騒音をマイクロホンで拾い、dBの数値で表す機械です。一般に用いられる騒音計は、人間の耳の聞こえ方に近いA特性を基準にしています。

騒音計は、感度によって用いる機器が異なり、JIS規格によって2種類のタイプに分かれています。1つ目のタイプは、普通騒音計と呼ばれ、基本仕様は20Hz~8000Hzの周波数の間で測定できる騒音計です。普通騒音計は、屋外・屋内問わずさまざまな場所で使用されており、価格は10,000円に満たない商品もあります。騒音測定の現場では、主に普通騒音計が使われています。

2つ目のタイプは、精密騒音計と呼ばれ、主に研究開発で用いられる専門家向けの騒音計です。精密騒音計は、測定できる周波数が20Hz~12,500Hzと広く、誤差も0.7dB以内のため、正確な測定を必要とする場面で使われます。価格も高額で、一般家庭や工事現場における計測に使用されることはほとんどありません。

3-1.騒音計の原理・仕組み

騒音計の外観は、周囲の音を拾うマイク部分と、音圧レベルを表示するデジタル液晶、電源オンオフ操作や測定レンジを調整するボタン部分で設計されています。内部の主な構成は、マイクロホン・フィルター・検波回路・表示回路などです。

マイクロホンで収集した音は、電気信号に変換・増幅され、周波数の重み付けが行われた後、画面に音圧レベルが出力されます。周波数の重み付けは、実際の「うるささ」を知るために重要な補正なので、人間の感覚に近いA特性が採用されています。

3-2.騒音の基準

騒音の基準と目安について、「環境基準」と「騒音障害防止の基準」という2つの視点から解説します。下記の表は、環境省が公表しているデータで、地域の種類ごとに基準となる騒音レベルを示しています。

騒音の環境基準

昼間 夜間
AA地域
(特に静穏を要する地域)
50dB以下 40dB以下
A地域
(専ら住居の用に供される地域)
およびB地域
(主として住居の用に供される地域)
55dB以下 45dB以下
C地域
(商業、工業等の用に供される地域)
60dB以下 50dB以下
A地域のうち2車線以上の車線を有する道路に面する地域 60dB以下 55dB以下
B地域のうち2車線以上の車線を有する道路に面する地域
及びC地域のうち車線を有する道路に面する地域
65dB以下 60dB以下
幹線交通を担う道路に近接する空間 70dB以下 65dB以下

出典:環境省「騒音に係る環境基準について」

一般的には50dBより大きい騒音になると「うるさい」と感じる人が増えることから、療養施設や福祉施設の集まるAA地域では昼間でも50dB以下が基準とされています。なお、夜間は22時~翌朝6時までの時間帯を指し、昼間よりも騒音レベルを5dB~10dB下げる配慮が必要です。

以下は、厚生労働省が公表しているデータを参考にした表で、騒音レベルが高い環境で働く人の健康を守るための指標です。

作業環境測定結果の評価

騒音発生源の近接地における平均値
85dB未満 85dB以上
90dB未満
90dB以上
騒音発生源を中心とした測定範囲におけるA平均値 85dB未満 作業環境の継続的維持に努める
  • 場所を標識により明示する
  • 保護具を使用する
  • 場所を標識により明示する
  • 保護具使用の掲示を行う
  • 保護具を使用する
85dB以上90dB未満
  • 場所を標識により明示する
  • 保護具を使用する
90dB以上
  • 場所を標識により明示する
  • 保護具使用の掲示を行う
  • 保護具を使用する

出典:厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドライン」

85dB以上の騒音は、地下鉄の車内やブルドーザーの音など「非常にうるさい」と感じるレベルです。85dB以上の騒音が出る現場の作業従事者は、耳栓やイヤーマフといった聴覚保護具を使用すると言った騒音対策が必要です。

3-3.騒音の測定・評価方法

騒音計を用いた測定は、騒音の元になる方向へ測定器を向けて行うのが基本です。事前の準備段階で騒音源を特定するほか、測定日の天候、風量、建物や地面の反射音からの影響などを確認し、測定しましょう。なお、環境基準の騒音を測定するのに用いる騒音計は、JIS規格「JIS C1509」の仕様に適合する製品を使用します。

なお、騒音調査は、時間や作業内容とともに変動する騒音を考慮し、一定時間測定した騒音レベルの平均値で評価することが求められています。

まとめ

A特性とは、人間の聞こえやすさに合わせて騒音の音圧レベルに補正をかける、周波数の重み付け特性です。A特性を利用することで、実際に聞こえる「うるささ」と似た値で騒音レベルが測定可能です。

周波数の重み付け特性には、A特性以外にも、平坦な周波数特性で補正範囲が小さいC特性・補正がされない自然な音圧レベルを測定するZ特性があります。3つの特性は使用目的ごとに使い分けされ、3つの性質を適切に用いることで正確なデータを測定可能です。

騒音計には、騒音測定の現場で主に利用される普通騒音計と、研究開発で使用される精密騒音計があります。工事現場や一般家庭では、普通騒音計を利用しましょう。

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