3Dスキャナーとは?測定の仕組みや導入メリット・活用事例を紹介

建築・土木業界、製造業界、プラントなど、さまざまな業界で活用されている機器が「3Dスキャナー」です。3Dスキャナーは3次元の立体物をデータ化し、3Dモデルとして活用できるため、測量や検品、リバースエンジニアリングと言った工程の効率化が可能です。技術の発達により非接触式の3Dスキャナーが生まれたことにより、活用できる範囲はますます広がっています。

この記事では3Dスキャナーを利用するメリットや測定方法、業界別の活用事例について紹介します。

1. 3Dスキャナーとは?

3Dスキャナーとは、3次元の立体物をデータとして取り込む「3Dスキャン」を行う装置のことです。近年、3Dスキャナーの技術は大きく発展しており、製造業や建築業など幅広い業界で活用されています。

スキャニング方法は、データを取得したい対象物にレーザーを照射する方法や、センサーで接触する方法などさまざまです。いずれの方法でも基本的に、対象物の凹凸を読み込み、正確なサイズや形状といった座標をまとめた点群データを取得することでデータ化を行います。

3Dスキャナーと関係がある装置に「3Dプリンター」があります。立体物からデータへと変換する装置が3Dスキャナーであるのに対し、データから立体物へと変換する装置が3Dプリンターです。3Dプリンターは、3Dスキャナーが取得したデータを基に、樹脂や金属と言った素材を用いて立体物を製作します。

2. 3Dスキャナーのメリット

3Dスキャナーが近年注目を集めている理由は、ビジネスへの導入がもたらす効果やメリットが多方面にわたる点です。主な3つのメリットを取り上げて解説します。

・複雑な形状の立体物をデータ化できる

複雑な形状の立体物を正確にデータ化できる点は、3Dスキャナーを導入する大きなメリットです。小型の工業製品から大規模な建築物までさまざまな対象物の形状・表面の凹凸・厚さといった各データを正確に取り込めます。

・リバースエンジニアリングに役立つ

リバースエンジニアリングとは、実用化されている既存製品などの仕組み・技術・設計などを分析して明らかにする行為です。設計図面がない製品であっても、3Dスキャナーを活用すると、リバースエンジニアリングを迅速かつ容易に行えます。

・製品や設備の不具合を確認できる

3Dスキャナーで取り込んだ対象物のデータは、製品や設備の不具合を確認する手段としても有効です。例えば、3DのCADデータと比較・照合することで実物との差異が明確となります。従来の解析に要していた時間を短縮でき、作業の効率化につながるでしょう。

3. 【測定原理別】3Dスキャナーの種類

3Dスキャナーの種類を測定原理の違いによって分類すると、「接触式」と「非接触式」の2種類に大別できます。さらに、非接触式にも「光投影法」や「レーザー切断方式」といった異なる種類があります。

3Dスキャナーの種類によってスキャニングに適した対象物が異なるため、それぞれの特徴を知った上で自社のニーズに合った製品を選択することが大切です。

以下では、「接触式3Dスキャナー」「光投影法非接触3Dスキャナー」「レーザー切断方式非接触3Dスキャナー」のメリット・デメリットについて詳しく解説します。

3-1. 接触式3Dスキャナー

接触式3Dスキャナーとは、センサーや、「プローブ」と呼ばれる探針を対象物に接触させて凸凹の点群データを取得する装置です。非接触式が登場する以前から存在する3Dスキャナーの測定原理であり、製品の計測や検査などに使われています。

データの測定精度が非接触式よりも高い点は、接触式の大きなメリットです。また、非接触式では測定不可能な対象物にも対応しています。

一方で、測定に要する時間が長く、測定可能な対象物や測定範囲の大きさには限りがあります。加えて、探針が入り込めない複雑な形状をした対象物の測定が困難である点もデメリットです。

3-2. 光投影法非接触式3Dスキャナー

光投影法光投影法3Dスキャナーとは、縞模様などのパターンがある光を対象物に投影し、パターンの変化やゆがみからデータを取得する装置です。装置の種類には据え置きタイプと、軽量で持ち運び可能なハンディータイプがあります。

高速で正確にスキャニングできる点は光投影法非接触式のメリットです。光源にLEDを用いていることから、人体にも使用でき、医療分野で広く活用されています。

光を投影するため暗い場所での作業が欠かせず、明るい場所で測定できない点はデメリットです。

3-3. レーザー切断方式非接触式3Dスキャナー

レーザー切断方式非接触式3Dスキャナーとは、対象物にレーザーを照射した反射光を活用してデータを取得する装置です。三角測距の原理で、対象物に対する角度や距離などによってデータを取得します。

レーザー切断方式非接触式3Dスキャナーが取得するデータの精度は高く、光投影法と異なり明るい場所でも計測作業ができます。また、光沢面の測定が可能な点もメリットです。

一方で、装置の種類によっては測定に時間を要したり、長い距離の測定が困難だったりする点はデメリットです。

4. 3Dスキャナーの活用事例

3Dスキャナーは現在、業務の効率化や精度の向上を促進するツールとして、製造業をはじめ、医療や建築などさまざまな業界において活用されています。主な3つの分野を取り上げて活用事例を紹介します。

4-1. プラント・工場

プラント・工場においては、安全性の確保やコストの削減に向けた周期的な設備の交換や新増設のために、3Dスキャナーが重要な役割を果たしています。

プラント・工場には通常、多くの配管や機器が設置され、高熱や高所などの危険な場所も少なくありません。3Dスキャナーを活用すれば、配管間の死角や危険な場所でも正確で安全に測定できます。

プラント・工場が稼働していない短時間のうちに作業を終え、生産性への影響を最小限に抑えることができるのも3Dスキャナーのメリットです。また、配管増設を繰り返すなどして、図面がないプラント・工場でも正確なデータの取得が可能です。

4-2. 製造

製造業では、3Dスキャナーは製品図面の作成や、検品の工程などに利用されています。

例えば、3Dスキャナーにより、正確な図面が残っていない製品のデータを取得し、3Dモデルの制作が可能です。3Dモデル化により、製品を量産化するための金型成形・技術の蓄積・新製品の開発・既製品のリバースエンジニアリングなどが効率よく行えます。

部品の検品工程においては、適正品と不良品をスキャニングして比較することで、両者の誤差を迅速に発見できます。複雑な形状の部品も3Dスキャナーは正確に測定できるため、わずかな誤差も発見しやすいという点もメリットです。

4-3. 建築・土木

建築・土木業界において、3Dスキャナーが特に活用されているのが測量の現場です。

従来の測量作業には一定以上の人員と時間を確保する必要があります。対して、3Dスキャナーを使うとわずかな人員と時間で作業を終えられるため、コスト削減が実現できます。取得するデータが精緻で、高所など危険な場所も安全に測定できる点もメリットです。

3Dスキャナーは、建築物のデータベースであるBIM(Building Information Modeling)にも活用されています。3Dスキャナーで取得したデータは、建築物の施行計画などを可視化するのみならず、歴史的建造物や遺跡などの研究や修復などにも貢献しています。

まとめ

3Dスキャナーとは、3次元の立体物を測定し、データ化を行う装置です。複雑な形状の立体物をデータ化でき、リバースエンジニアリングや製品検査に役立つことから、さまざまな業界で活用されています。

3Dスキャナーには測定原理の違いによって「接触式」と「非接触式」の2種類があります。また、非接触式の3Dスキャナーは「光投影法」と「レーザー切断方式」の2つの測定方法に分かれます。それぞれ異なったメリットとデメリットがあるため、自社の利用目的に合った3Dスキャナーを選択しましょう。

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