工場・建設現場の騒音規制にかかわる法律とは?基準や罰則を解説
工場や建設現場では、設備の稼働や建設機械の使用によって大きな音が発生することがあり、周辺住民への配慮や法令順守が重要になります。実際には、騒音に関する苦情や近隣トラブルにつながることもあるため、事前に規制内容を把握しておくことが大切です。ただし、騒音規制といっても、環境基本法と騒音規制法では役割が異なり、規制対象となる施設や作業、騒音値や作業時間の基準も一律ではありません。
当記事では、工場・建設現場の騒音規制にかかわる2つの法律を整理した上で、特定工場・事業場や特定建設作業に適用される基準、違反時の罰則について分かりやすく解説します。
1.工場・建設現場の騒音規制にかかわる2つの法律
工場や建設現場の騒音に関する主なルールには、環境基準の考え方を示す環境基本法と、工場や特定建設作業に対する具体的な規制を定める騒音規制法があります。まずは、それぞれがどのような役割を持つ法律なのかを順に解説します。
1-1.環境基本法
環境基本法では、生活環境の保全と健康の保護に役立てるため、騒音に係る環境基準が定められています。基準値は地域の性質に応じてAA、A、B、Cの類型に分かれ、昼間と夜間で異なります。昼間は午前6時から午後10時まで、夜間は午後10時から翌午前6時までです。
たとえば、特に静穏が求められるAA地域では昼間50dB以下、夜間40dB以下、主に住居に使われるA・B地域では昼間55dB以下、夜間45dB以下、住居と商業・工業が混在するC地域では昼間60dB以下、夜間50dB以下とされています。なお、この環境基準は工場や建設現場そのものを直接規制する基準ではなく、地域の騒音環境の目安を示すルールです。
1-2.騒音規制法
騒音規制法は、工場・事業場や建設作業、自動車から発生する著しい騒音を規制し、生活環境の保全と健康の保護を図るための法律です。都道府県知事や市長などは、騒音を規制する必要がある地域を指定し、その地域内でルールを適用します。工場・事業場では、騒音を生じやすい特定施設を設置する事業場が対象となり、建設現場では、くい打機やびょう打機、さく岩機などを用いる特定建設作業が対象です。
また、自動車騒音についても基準が設けられており、地域や時間帯に応じた騒音対策が求められます。工場や建設現場の騒音規制を考える際は、まず指定地域の中でどの行為が規制対象になるかを確認することが基本であり、具体的な基準は自治体ごとの定めも踏まえて確認する必要があります。
2.騒音規制法による特定工場・事業場の規制内容
騒音規制法では、指定地域内の特定工場・事業場に対して、設置する設備や発生する騒音の大きさに関するルールが定められています。ここでは、まず規制対象となる特定施設の内容を確認し、その上で指定区域ごとの騒音基準について順に解説します。
2-1.騒音規制法の対象となる「特定施設」
騒音規制法では、指定地域内で特定施設を設置する工場・事業場を「特定工場等」として規制しています。特定施設とは、著しい騒音を発生しやすい機械や設備のことで、主な例は次の通りです。
- 金属加工機械
- 空気圧縮機、送風機
- 破砕機、摩砕機、ふるい、分級機
- 織機
- 建設用資材製造機械
- 穀物用製粉機
- 木材加工機械
- 抄紙機
- 印刷機械
- 合成樹脂用射出成形機
- 鋳型造型機
これらの施設を指定地域内に設置する場合は、事前の届出などが必要になります。また、対象になるかどうかは、機械の種類だけでなく、原動機の出力や構造などの条件もかかわります。工場や事業場が規制対象に当たるかを判断する際は、設備の名称だけでなく、政令で定められた要件や自治体の案内まで確認することが重要です。まず自社設備が特定施設に該当するかを整理することが出発点になります。
2-2.工場や事業場の指定区域における騒音値の規制基準
工場や事業場の騒音規制基準は、指定地域を第1種区域から第4種区域までに分け、時間帯ごとに定められています。まずは各区域の特徴を確認しましょう。
| 第1種区域 | 良好な住居環境を守るため、特に静穏の保持が求められる区域です。 |
|---|---|
| 第2種区域 | 主に住居として利用されており、静かな生活環境を守る必要がある区域です。 |
| 第3種区域 | 住居とあわせて商業、工業などにも利用されている区域で、住民の生活環境を保全するため騒音防止が求められます。 |
| 第4種区域 | 主として工業などに使われている区域で、住民の生活環境を著しく悪化させないよう、著しい騒音を防ぐ必要がある区域です。 |
区域ごとの規制基準の範囲は、次の通りです。
| 区域 | 昼間 | 朝・夕 | 夜間 |
|---|---|---|---|
| 第1種区域 | 45~50dB | 40~45dB | 40~45dB |
| 第2種区域 | 50~60dB | 45~50dB | 40~50dB |
| 第3種区域 | 60~65dB | 55~65dB | 50~55dB |
| 第4種区域 | 65~70dB | 60~70dB | 55~65dB |
実際の基準値は、この範囲内で自治体が定めるため、自社の所在地がどの区域に該当するかを確認した上で判断することが重要です。
3.騒音規制法による建設作業の規制内容
騒音規制法では、指定地域内で行われる特定建設作業に対して、対象となる作業の種類や、騒音値、作業時間などの基準が定められています。ここでは、まず規制対象となる特定建設作業を確認し、その上で騒音や作業時間に関する主なルールを順に解説します。
3-1.騒音規制法の対象となる「特定建設作業」
騒音規制法では、指定地域内で行われる著しい騒音を伴う建設作業を「特定建設作業」として規制しています。主な対象は次の通りです。
- くい打機、くい抜機、くい打くい抜機を使用する作業
- びょう打機を使用する作業
- さく岩機を使用する作業
- 空気圧縮機を使用する作業
- コンクリートプラント、アスファルトプラントを設けて行う作業
- バックホウを使用する作業
- トラクターショベルを使用する作業
- ブルドーザーを使用する作業
ただし、すべての作業機械が対象になるわけではなく、原動機の出力や構造、作業方法などの条件が定められています。たとえば、低騒音型建設機械として指定されたものは対象外になる場合があります。実際に届出や規制の対象となるかどうかは、使用機械の仕様と自治体の案内をあわせて確認することが重要です。
3-2.特定建設作業における騒音値や作業時間の規制基準
特定建設作業の規制基準は、指定地域を第1号区域と第2号区域に分けて定められています。まず、各区域の考え方は次の通りです。
| 第1号区域 | 良好な住居環境を守るため、特に静穏の保持が必要な区域です。 |
|---|---|
| 第2号区域 | 指定地域のうち、第1号区域以外の区域です。 |
区域ごとの主な規制基準は、次の通りです。
| 規制内容 | 第1号区域 | 第2号区域 |
|---|---|---|
| 騒音の大きさ | 敷地境界で85dB以下 | 敷地境界で85dB以下 |
| 作業時間帯 | 午後7時~午前7時は不可 | 午後10時~午前6時は不可 |
| 1日の作業時間 | 10時間以内 | 14時間以内 |
| 連続作業日数 | 6日以内 | 6日以内 |
| 作業日 | 日曜・休日は原則不可 | 日曜・休日は原則不可 |
このように、騒音値の基準は共通ですが、作業できる時間帯や1日の作業時間は区域によって異なります。なお、災害時など緊急の必要がある場合は例外となることがあります。
4.騒音にかかわる法令を破った場合の罰則
環境基本法は、環境保全に関する基本理念や政策の方向性、環境基準の考え方を示す基本法であり、騒音そのものに対する直接の罰則規定はありません。一方、騒音規制法は、指定地域内の特定工場・事業場や特定建設作業に具体的な規制を課す法律で、届出義務違反や改善命令違反などに対する罰則が設けられています。
たとえば、改善命令に違反した場合は1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金、届出をしなかった場合などは5万円以下の罰金が科されます。つまり、環境基本法は基準や考え方を示す法律、騒音規制法は具体的な規制と罰則を定める法律と整理できます。
まとめ
工場や建設現場の騒音規制には、環境基準の考え方を示す環境基本法と、具体的な規制を定める騒音規制法があります。騒音規制法では、特定工場・事業場や特定建設作業を対象に、指定区域ごとの騒音値、作業時間、作業日などの基準が設けられています。違反した場合は届出義務違反や改善命令違反に対する罰則もあるため、自社の設備や作業が規制対象に当たるかを確認し、自治体の基準に沿って適切に対応することが重要です。
騒音トラブルは周辺環境への影響だけでなく、事業継続や信頼にもかかわるため、早めの対策が欠かせません。騒音対策を適切に進めるには、まず現場の音を正確に把握することが重要です。騒音計のレンタルを活用すれば、基準値との比較や対策前後の確認を効率よく行いやすくなります。

















