データロガーとは?基本的な仕組み・種類・使用するメリットを解説
データロガーは、業務で温度や湿度、圧力などの環境データを継続的に記録したいときに有用な計測器です。品質管理や設備保全、環境モニタリングなど、製造業・インフラ・研究機関をはじめとする多様な現場で活用されています。
当記事では、データロガーとは何かという基礎知識や種類ごとの特徴、使用することで得られるメリットなどを分かりやすく解説します。現場の課題に沿ったデータロガーを選べる知識を身に付け、業務の効率化や品質の向上に役立てましょう。
1. データロガーとは
データロガーとは、温度・湿度・圧力・照度・加速度・振動などの物理量を自動で測定・記録する装置です。パソコンに接続しなくても単体でシステムが動作するため、現地での長期間の測定に適しているのが特徴です。
環境測定や工場の品質管理、製品試験などの分野で活用されており、記録された計測データはメモリやSDカードに保存されます。これをデータ化して分析することで、品質向上やトラブルの原因特定、業務効率の改善に役立てられます。
1-1. データロガーの仕組み・機能・用途
データロガーは、センサーを通じて温度や湿度、圧力などの環境データを自動計測し、メモリやSDカードに一定間隔で記録する計測機器です。測定データは本体内のプロセッサによって処理され、グラフなど数値解析がしやすい形式で保存されます。仕組みには、アナログ方式とデジタル方式の2タイプがあります。
アナログ方式 | 電圧値の波形をそのまま記録できる |
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デジタル方式 | ノイズの影響を受けにくくデータ処理や解析が容易 |
電池駆動が可能なため、長期間・無人でのデータ収集に適しており、遠隔地や屋外での測定にも対応できます。用途は多岐にわたり、気象観測や産業設備のモニタリング、農業、医療研究などで活用されています。測定対象や目的に応じて、接続するセンサーや測定パラメータを柔軟に選べるのも利点です。
2. データロガーの種類
データロガーには、測定対象・測定環境に応じてさまざまな種類があります。ここでは、温度や湿度、圧力、CO2など、代表的なロガーの特徴について解説します。
2-1. 温度ロガー
温度ロガーとは、温度を一定間隔で測定し、そのデータを自動的に記録するデータロガーです。内蔵センサー型や外付けプローブ型、熱電対入力型などがあり、用途に応じて使い分けが可能です。
温度の測定範囲や精度、記録間隔は製品によって異なりますが、長期間のデータ収集や無人環境での運用に適しているのは共通です。食品や医薬品の品質管理、冷蔵・冷凍設備の温度モニタリング、研究施設での実験管理など、温度変化の記録や温度管理が重要な場面で活用されています。
2-2. 温湿度ロガー
温湿度ロガーとは、温度と湿度を同時に測定し、記録するデータロガーです。センサー内蔵型や外付けプローブ型があり、設置場所や目的に応じて選択できます。一定間隔での測定・記録が可能で、長期間にわたる環境データの把握や異常検知にも役立ちます。
食品の保存管理や植物の栽培、倉庫やオフィスの空調・湿度管理、建築物の断熱性評価など、さまざまな分野で利用されています。湿度管理が品質や安全性に関わる環境に欠かせないツールです。
2-3. 大気圧ロガー
大気圧ロガーとは、大気圧を自動的に測定・記録するデータロガーです。気圧センサーを内蔵し、一定間隔で気圧の変化を記録します。製品によって測定範囲や精度が異なりますが、温度や湿度の同時測定に対応し、環境の包括的な監視が可能なモデルがほとんどです。
高精度な製品では、微細な気圧変動も検出できます。山岳地帯での気圧変動の記録、航空機内での圧力管理、試験室での大気圧制御など、正確な環境データが求められるシーンで幅広く使用されています。
2-4. 絶対圧ロガー
絶対圧ロガーとは、宇宙空間のような真空(ゼロ圧)を基準とした「絶対圧」を測定・記録するデータロガーです。一般的な圧力センサーが大気圧との差を基準とした相対圧を測定するのに対し、絶対圧ロガーは真空を基準とした精密な圧力測定が可能です。
真空状態から高圧領域まで幅広く対応できるため、化学プラントや製薬工場の滅菌処理、船舶・自動車・航空機の機械内部圧の管理などに活用されています。精度が求められる環境での圧力制御に必要となるツールです。
2-5. CO2ロガー
CO2ロガーとは、空気中の二酸化炭素(CO2)濃度を測定・記録するデータロガーです。CO2濃度は換気状態や人の滞在密度を把握し、室内の空気環境を適切に管理する上で欠かせない指標の1つです。CO2ロガーは、一定間隔で濃度を測定し、蓄積されたデータをもとに換気の必要性や空調の調整を判断できます。
オフィスや会議室、学校の教室といった閉鎖空間における空気質の改善に役立つほか、農場や植物工場でも光合成の促進や生産性の向上のために導入されています。IAQ(室内空気質)への関心が高まる中、CO2ロガーの重要性も年々増しています。
2-6. 照度・紫外線ロガー
照度・紫外線ロガーとは、光の明るさ(照度)と紫外線量を測定・記録するデータロガーです。光の影響を定量的に把握できるため、室内外の環境管理や製品評価の場面で活躍しています。測定値は自動的に記録され、時間経過による光環境の変化を正確に捉えることが可能です。
特に、美術館や博物館では、展示物の劣化や色あせを防ぐ目的で照度や紫外線の常時監視に用いられています。さらに、日焼け止めやサングラスの開発における紫外線テスト、植物の育成環境を評価する農業分野など、研究や製品開発の現場でも活用されています。
2-7. 衝撃ロガー
衝撃ロガーとは、物体に加わった衝撃や振動を検知し、記録するデータロガーです。X・Y・Zの3軸加速度センサーにより、「いつ」「どの方向から」「どの程度の衝撃が加わったか」を正確に把握できます。
衝撃が発生した瞬間のみ記録する仕様が多く、不要なデータの蓄積を避けられるのも特徴です。精密機器や医薬品の輸送、運送業における荷物の取扱監視、建設現場での設備保護など、衝撃の有無や影響を可視化する必要がある場面で幅広く導入されています。
3. データロガーを使用するメリット
データロガーは、さまざまな業界や現場での計測作業を効率化し、信頼性の高いデータ収集を可能にする装置です。以下に、データロガーの導入によって得られる主なメリットを紹介します。
- 長期間にわたる自動記録ができる
設定した測定間隔で、機器が自動的にデータを収集・保存します。これにより、人の手を介さずに長期的なトレンド把握や異常検知が行え、運用コストを削減できる可能性があります。 - 設置・運用が簡単で柔軟性が高い
多くの製品はスタンドアローンで動作し、屋外や狭小空間、電源の確保が難しい場所にも使用できます。温度・湿度・衝撃など、複数パラメータの同時測定が可能な機種もあり、測定対象や環境変化に応じて柔軟に対応できます。 - データ管理やデータ分析が容易に行える
記録データはUSBやWi-Fiでパソコンに転送でき、専用ソフトでグラフ化や解析が可能です。リアルタイムの監視や遠隔管理にも対応しており、業務の可視化と迅速な意思決定を支援します。 - 省電力設計でコストパフォーマンスが高い
低消費電力設計により電池交換の頻度が少なく、長期間の使用でもランニングコストを抑えられます。また、製品価格は幅広く設定されており、必要な機能に応じて選択できるため、導入コストと運用コストの両面でコストパフォーマンスに優れています。
まとめ
データロガーは、温度・湿度・圧力・照度・衝撃・CO2などのさまざまな物理量を自動で測定・記録できる装置です。豊富な種類があり、工場や研究施設、屋外環境などの多様な現場で活用されています。
スタンドアローンで長期間データを取得できるため、人手をかけずに安定した環境管理を維持でき、効率性の向上やトラブルの予防につながります。目的に合う機器を導入したい方は、まずはレンタルサービスを活用し、実際の現場に適したモデルを試してみることをおすすめします。