降水量の測り方とは?雨量計による降水量計測方法もわかりやすく解説

降水量は、気象観測や災害対策、農業・建設分野など幅広い分野で活用される基本的な気象データの1つです。しかし、降水量をどのように測っているのか、その仕組みや手法について正しく理解している人は多くありません。降水量の測定には、気象庁などが活用する気象レーダーによる推定と、地上の雨量計による実測という2つの方法があります。特に実測では、正確な観測値を得るためには、精度の高い機器の使用に加えて、設置場所の環境にも注意が必要です。

当記事では、降水量の基本から雨量計による正しい測定方法まで、実用的な知識を分かりやすく紹介します。

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1. 降水量の測り方とは

降水量の測定には、主に2つの方法があります。1つは実際に地表に降った雨を測定する「雨量計」による方法、もう1つは空中から雨雲の状態を観測する「レーダー」による方法です。それぞれの測定原理について、以下で詳しく解説します。

 

1-1. 雨量計による測定の仕組み

雨量計とは、降水量を数値で記録するために使用される観測機器であり、気象庁では「転倒ます型雨量計」が主に用いられています。

転倒ます型雨量計には、口径20cmの受水器が設置されており、雨水を内部に導きます。内部には左右に三角形の転倒ますが2個備えられており、受水器から流れ込んだ雨水が片方のますに一定量(0.5mm相当)溜まると、バランスが崩れてますが傾き、もう片方が受け皿となります。

ますの転倒と同時に、支軸上の磁石がリードスイッチの前を通過し、スイッチが一定時間ONになることで電気信号が出力されます。この電気信号は処理装置へ送られ、転倒の回数に応じて降水量が自動的に積算されます。1回の転倒で0.5mm、2回の転倒で1mmと記録され、雨の強さや時間ごとの降水量が数値として把握されます。

雨量計の構造はシンプルでありながら、連続的かつ高精度に降水データを収集できることから、気象観測の基礎を担う重要な装置となっています。

出典:気象庁「観測機器について」

 

1-2. レーダーによる測定の仕組み

気象レーダーは、降水の強さや分布を面的に把握できる観測手段です。レーダーから発射された電波は、雨粒にあたって反射し、返ってきた信号の強度から降水強度を推定します。遠方や山間部も含めた広い範囲の降水状況を短時間で把握できる点が特徴です。

レーダーによる推定値は、気象庁や地方自治体などが設置している雨量計の実測データで補正され、より信頼性の高い降水量分布が得られます。こうして作成された「解析雨量」は、1km四方ごとに1時間降水量を示し、30分ごとに更新されます。速報版では、10分単位のより早い更新が行われています。

局所的な強い雨もとらえやすく、土砂災害や洪水の危険度評価、警報発表の判断材料として活用されています。雨量計の設置がまばらな場所でも、気象レーダーを活用することで精度の高い降水監視が可能となっています。

出典:気象庁「解析雨量」

 

2. 降水量の定義

降水量とは、雨や雪などの水分が地面に降り注ぎ、排水されずにそのまま溜まったと仮定したときの水の深さを示すものです。単位にはmm(ミリメートル)が用いられており、たとえば100mmの降水量は水深10cmに相当します。

1m2あたり100mmの降水があると、水量は100リットル、重さは約100kgになります。降水量は、観測時刻までの一定時間(1時間、10分間など)に降った水分の総量を表しています。たとえば「12時の降水量」は、11時から12時までの1時間に記録されたものです。降水量は気象現象の強さを評価する上で重要な指標です。

 

2-1. 1時間あたりの降水量と雨の降り方の関係

1時間あたりの降水量は、雨の強さや影響の程度を表す重要な指標です。気象庁では、降水量の大きさに応じて「やや強い雨」「強い雨」「激しい雨」などの予報用語を用いています。以下の表は、1時間の雨量とそのときの雨の様子、人への影響などの関係を示したものです。

1時間雨量
(mm)
予報用語 人の受ける
イメージ
人への影響 屋内(木造住宅を想定) 屋外の様子 車に
乗っていて
10以上~
20未満
やや強い雨 ザーザーと
降る
地面からの跳ね返りで足元がぬれる 雨の音で話し声が良く聞き取れない 地面一面に水たまりができる
20以上~
30未満
強い雨 どしゃ降り 傘をさしていてもぬれる 寝ている人の半数くらいが雨に気がつく ワイパーを速くしても見づらい
30以上~
50未満
激しい雨 バケツをひっくり返したように降る 道路が川のようになる 高速走行時、車輪と路面の間に水膜が生じブレーキが効かなくなる(ハイドロプレーニング現象)
50以上~
80未満
非常に
激しい雨
滝のように降る(ゴーゴーと降り続く) 傘は全く役に立たなくなる 水しぶきであたり一面が白っぽくなり、視界が悪くなる 車の運転は
危険
80以上~ 猛烈な雨 息苦しくなるような圧迫感がある。恐怖を感ずる

引用:気象庁「雨の強さと降り方」引用日2025/5/27

たとえば、20mm以上の「強い雨」になると、傘をさしていても衣服がぬれるほどの降り方になります。30mm以上の「激しい雨」では道路に水があふれ、交通にも支障をきたすようになります。さらに50mm以上になると「非常に激しい雨」となり、視界不良や交通事故の危険性が高まります。80mmを超えるような「猛烈な雨」は、息苦しさを感じるほどの異常な降り方で、命の危険すら生じる状況です。

このように、1時間あたりの降水量は、日常生活や災害リスクを把握する上で非常に重要な情報となります。気象情報を確認する際は、降水量の数値とともに雨の影響を具体的にイメージすることが、早めの行動につながります。

 

3. 雨量計を使った降水量計測のポイント

降水量を計測する際は、正確なデータを得るために、設置場所や機器の選定に注意を払うことが重要です。以下では、信頼性の高い計測結果を得るために押さえておきたい設置環境や使用時のポイントを紹介します。各項目を確認し、適切な方法で雨量計を使用してください。

 

3-1. 検定に合格した雨量計を使う

正確な降水量を観測するためには、検定に合格した雨量計の使用が推奨されます。雨量計の検定は、気象庁が指定する登録検定機関である気象業務支援センターが実施しており、測定機器の精度や性能が公的に保証されます。

特に、法律で定められた「観測施設の届け出」が必要な施設では、気象業務法により、検定済みの雨量計を用いることが義務付けられています。検定合格品を使うことで、観測データの信頼性と一貫性が担保され、公共性の高い用途でも問題なく活用できます。

出典:気象庁「より良い雨量観測のために」

 

3-2. 水しぶきがかかる・浸水しそうな場所は避ける

雨量計を設置する際は、周囲からの水しぶきや浸水の影響を受けにくい場所を選ぶことが重要です。たとえば、車両の通行によって道路から水が跳ねてくる場所や、雨水が集まりやすく浸水の可能性がある低地、海岸近くで波しぶきがかかるような場所は不適切です。

また、観測の正確性を高めるために、できるだけ平坦で気流が乱れない場所を選ぶようにしましょう。地面からの跳ね返りによる誤差を防ぐためには、舗装された場所に人工芝を敷くなどの工夫も有効です。くぼ地や傾斜地、高い建物の屋上の端なども避けて設置することが望ましいです。

出典:気象庁「より良い雨量観測のために」

 

3-3. 建物や樹木からはできるだけ離して設置する

雨量計の周囲に建物や樹木といった障害物があると、風の影響によって雨の流れが乱れ、実際よりも少ない降水量が観測されるおそれがあります。特に強風時には雨粒が遮られやすく、観測精度が著しく低下することがあります。

そのため、雨量計は建物や樹木などから十分に離れた場所に設置する必要があります。目安としては、障害物の高さの半分以上の距離を確保し、雨量計から障害物の上端への仰角が63°以下となるように設置します。より精度の高い観測を行うには、障害物の高さ分以上の距離をとり、仰角が45°以下になるような設置が推奨されます。

出典:気象庁「より良い雨量観測のために」

 

3-4. 高い建物の屋上では端から離して設置する

高層建築物の屋上に雨量計を設置する場合は、建物の構造や周囲の気流の影響により、風が局所的に強まって降水量が少なく観測されるおそれがあります。特に屋上の端に近い位置では、風の乱れが大きくなりやすいため注意が必要です。

やむをえず3階以上の屋上に設置する際は、屋上の端から少なくとも1m以上、できれば3m以上離した位置に雨量計を置くことが推奨されます。また、屋上にエアコンの室外機や排気装置などがある場合は、それらからの風の影響を受けない位置を選ぶ必要があります。風や構造物の影響を避け、安定した観測環境を確保することが大切です。

出典:気象庁「より良い雨量観測のために」

 

3-5. 寒冷地では凍結を防ぐ工夫をする

寒冷地においては、雨量計内部の転倒ますや流路が凍結すると、正確な降水量の計測が困難になります。そのため、ヒーター付きの雨量計を使用し、機器内部の温度を一定に保つことが重要です。ヒーター付き雨量計を使用することで、雪や氷が計測機構に影響を及ぼすのを防ぐことができます。

また、多雪地域では積雪によって雨量計が埋もれるおそれがあるため、地面から十分な高さに設置することも必要です。降雪量に応じて支柱の長さを調整することで、冬季の観測精度を確保できます。正確なデータ収集のためには、寒冷地特有の環境に配慮した対策が大切です。

出典:気象庁「より良い雨量観測のために」

 

まとめ

降水量とは、ある地点に一定時間内に降った雨や雪の総量を示す気象観測上の重要な指標です。降水量の測定には、大きく分けて天気図や気象レーダーによる推定と、雨量計による実測の2通りがあります。特に雨量計を用いた測定では、機器の精度だけでなく、設置環境も測定値の正確さを左右します。水しぶきや浸水の影響がない場所に設置し、建物や樹木からは一定距離をとり、高所では屋上の端を避けるなどの配慮が求められます。寒冷地では凍結対策も必要です。正しい方法で雨量計を設置することにより、信頼性の高い降水量データを得ることが可能になります。

なお、雨量計を短期間だけ使用したい場合や、複数の現場で使用したい場合には、レンタルの活用が便利です。ソーキでは、気象観測用の各種雨量計を揃えており、使用目的や設置環境に合わせた機種を選べます。詳しくは下記ページをご確認ください。

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