水質検査のやり方は?水質検査が必要な分野や実施のポイントも解説

水質検査とは、日常生活において欠かせない「水」の安全性を評価するために行われる重要なプロセスです。見た目には清潔そうな水でも、設備の劣化や外部からの汚染によって、有害物質や細菌が含まれることがあります。水質の劣化が進むと、健康被害や感染症を引き起こすリスクが高まるため、適切な水質管理は不可欠です。

当記事では、水質検査の必要性やその実施方法について詳しく解説します。日常生活や事業活動において、安全で清潔な水を維持するための基礎知識を身につけましょう。

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1.水質検査とは?

水質検査とは、水の色味や臭い、硬度などの性質、有害物質や細菌の有無といった項目が、使用目的の基準に合っているかを判定するための検査のことです。実際の検査内容は、対象となる水の種類や検査場所などによって異なります。

水は日常生活に欠かせないものですが、常に安全性が保たれているとは限りません。無色透明な水でも、給水設備などに異常が発生した場合、気付かない内に水質悪化や雑菌の増殖につながる恐れがあります。

水質が悪化した水を飲用または使用すると、健康被害や感染症が発生するリスクがあるため注意が必要です。加えて、水質が悪化した水が河川や地下水を汚染したり、蒸発して空気中に放出されたりすれば、環境や人間以外の生物にも悪影響を及ぼす恐れがあります。給水設備などの管理者は、常に水質の維持管理に努め、利用者に安全な水を提供することが大切です。

 

1-1.水質検査の種類

水質検査にはいくつか種類があり、多くは水を介した食中毒や感染症などを未然に防ぐために行われます。水質検査は法律で義務化されているため、事業者などは十分に理解した上で実施することが大切です。

以下では、水質検査の主な種類と、それぞれの検査項目について解説します。

・水道法に基づく水質検査

水道法の水質基準は「水道法」によって定められています。水道法の対象となるのは主に上水道や簡易水道、専用水道であり、水道事業者から供給されている水道水です。水道事業者は定期および臨時に水質検査を行い、水道水が水質基準に適合しているかを検査・記録・保管しなければなりません。なお、検査は定められた51項目について行う必要があります。

・生活用水の水質検査

お風呂の浴槽水やプールなど、主に生活の中で飲用以外に使用している水が対象です。基準や検査頻度は検査項目ごとに異なります。

・ビル管理に基づく水質検査

不特定多数の人が利用する建築物については、「ビル衛生管理法」によって水質検査などが義務づけられています。ビル管理に基づく水質検査は基本的に16項目です。前回検査で16項目すべてが基準値に適合していた場合、次の検査では一部の項目を省略することが認められています。

・飲用井戸の水質検査

井戸水を飲料水として使っている場合や規模の大小によっては、井戸も水質検査の対象です。飲用井戸の場合、基本的には51項目の検査を実施します。

出典:環境省「水道水質基準について」

出典:厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」

出典:千葉県「飲用井戸の衛生管理について」

 

1-2.水質検査が必要な分野

水道水を飲用として提供する業者やビル管理法に該当するすべての業者は、水道法に基づいて水道検査を実施しなければなりません。具体的には、以下の分野の業者に水質検査が義務づけられています。

・食品製造・加工工場など

食品製造・加工などの分野では、「食品製造用水(26項目)」をはじめとする複数の検査の実施が必要です。基本的には、惣菜製造業者や菓子製造業者、添加物製造業者、調味料製造業者などのうち、水道水以外の水(井戸水など)を使用している業者が対象となります。ただし、水道水を使用している業者でも水質検査の対象となるケースがあるため注意が必要です。

・飲食・旅館・サービス業など

飲食店・旅館をはじめとするサービス業は、水道水を飲料として提供している場合、水質検査が義務づけられます。水質検査は6か月以内に1回の実施が必要です。

・温泉施設・プールなど

フィットネスクラブや銭湯、老人ホーム、ホテル・旅館といった施設は水槽水の水質検査が義務づけられています。温泉施設・プールなどの水質検査を実施する主な目的は、レジオネラ属菌など感染症を引き起こす危険性がある菌の発生防止です。また、学校のプールは「学校保健安全法」によって水質検査が義務づけられています。

 

2.水質検査の方法

水質検査は法律によって義務化されているため、対象となる事業者は確実に実施しなければなりません。しかし、水質検査をどのように実施すればよいのか分からない事業者もいるのではないでしょうか。

今回は、水質検査の主な方法を2つ紹介します。

 

2-1.業者に依頼する

基本的に水質検査は専門的な行為であり、知識がない方が行うのは簡単ではありません。水質検査を実施するだけではなく、検査結果を報告書にまとめて保健所に提出する必要があります。また、多くの人が利用する施設の水質検査を行えるのは、専門業者やビル管理士のみなので、多くの場合は専門業者に依頼して水質検査を行うことになります。

専門業者の水質検査実施者は、さまざまな登録要件を満たした国家資格を有しています。水質検査を怠ると法律によって罰せられる可能性もあるので、水質検査を確実に行うためにも業者への依頼を検討するとよいでしょう。

 

2-2.自社で行う

庭への水やりといった私的な利用や、水質検査が義務付けられていない小規模な一般企業の事務所などであれば、水質検査を自社で行うことも可能です。水質検査を自社で行う場合、検査キットや水質測定器を用いる方法があります。以下のリンク記事から水質測定器をレンタルできるため、一度チェックしてみてください。

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検査キットや水質測定器を使った水質検査は一般の方でも簡単に実施できるものの、検査項目数が少ない点や、精度が高くない可能性があるといった注意点があります。また、小規模な事業者であっても、水質検査が必要な分野に該当する業種であれば法律に基づいた水質検査の実施が必要です。

 

3.水質検査を行う際のポイント

水質検査を行う際は、採水のやり方に注意する必要があります。採水の際に注意すべきポイントは主に以下の通りです。

  • 採水前に水でよく手を洗う
  • 蛇口のホース・浄水器・シャワーヘッドなどは可能な限り取り外してから採水する
  • 採水前に数分程度蛇口を開いて放水する
  • 採水容器はほかの臭いなどが付着しない清潔な場所に保管する
  • 採水容器の中に対象となる水以外のものが混入しないようにする
  • 採水後は蓋を確実に閉めて漏水を防ぐ
  • 採取した水は速やかに冷暗所または冷蔵保存する

採水前の手洗いには特に注意する必要があります。事前に石けんを使って手を洗ったり、アルコール消毒を行ったりした場合、石けんやアルコールの残留物が検査に影響を与える可能性があります。そのため、採水前には必ず水で十分に手を洗い流してください。

また、採取した水にほかの水や物質が混ざった場合、検査の正確性が損なわれる可能性が高くなります。採水の際には、採水容器の中に手指や衣服が触れないようにし、雨天時に採水する場合は雨具や傘についた水滴が混入しないように注意しましょう。

水質検査においては、臭いも重要な要素です。採水容器の保管の際には、タバコや香料、石油を近くに置かないようにしてください。

 

まとめ

水質検査は、安全で衛生的な水を供給・使用するために欠かせない手段です。特に、事業者や施設管理者は法令に基づいた水質検査を怠らず、定期的な検査と適切な管理を行う必要があります。

水質の悪化は、健康被害や感染症の発生リスクを高めるだけでなく、環境汚染にもつながるので、日常的な水質管理が求められます。また、個人や小規模な事業所でも、水質の安全性を確保するために自社で簡易的な水質検査を行うなど、適切な対応が必要です。水質検査を通じて、安全な水環境を守り、安心して生活や事業活動を続けましょう。

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