鉄筋探査の方法と原理を紹介|電磁波レーダー法と電磁誘導法の違い

建物や構造物を破壊・損傷させることなく、内部の鉄筋コンクリートの配置や状態を調べる方法を「非破壊検査」と言います。非破壊検査は、建物の建築中や竣工後の検査・品質管理のほか、メンテナンス・保守、改修工事の事前調査などさまざまなシーンで用いられる検査方法です。

また、建物の非破壊検査において、代表的な検査方法の1つとされているのが「鉄筋探査」です。探査機を用いて行う鉄筋探査には主に2つの技術があり、検査目的によって使い分けられます。

今回は、鉄筋探査の概要と目的から、鉄筋探査における2つの技術、さらに鉄筋探査機の選び方まで詳しく紹介します。構造物の内部調査を行いたいという方は、ぜひ参考にしてください。

 

1.鉄筋探査とは

鉄筋探査とは、コンクリート構造物内部に埋設された鉄筋や管などの位置、深さ、配筋状態を、専用の探査機を用いて表面から確認する検査です。

建物における非破壊検査の代表的な検査方法の1つであり、探査対象物を破壊・損傷させることなく安全かつ手軽に構造物内部の状態を評価できるので、広く利用されています。

なお、コンクリート構造物における代表的な非破壊検査は、鉄筋探査のほかにも超音波を用いた「超音波探傷法」やX線を用いた「ラジオグラフィー法(X線探査)」などが挙げられます。

これらの非破壊検査は検査目的に応じて使い分けられることが基本ですが、鉄筋探査とその他の非破壊検査を併用してコンクリート構造物の品質や安全性・耐久性を総合的に評価するケースもあります。

 

1-1.鉄筋探査の目的

コンクリート構造物に対する鉄筋探査は、主に下記の目的・ケースで実施されます。

●改修工事の事前調査

鉄筋コンクリート造の建物では、建物を構成する鉄筋の引張応力(引張力)がはたらくことによって、強度や耐久・耐震性が発揮されます。基本的に鉄筋は引張力に対して強い抵抗力をもっていますが、改修工事でコンクリートのコア削孔を行うときに鉄筋を傷つけたり切断したりすると、当然ながら引張力は低下します。

したがって、既存の鉄筋コンクリート構造物に対して改修工事を行う際は、内部の鉄筋に誤って触れることを防ぐための事前調査として鉄筋探査が実施されます。

●竣工時の検査

鉄筋探査は、新たに建築されたコンクリート構造物における品質検査としても実施されています。特定の部位に鉄筋探査を実施することで、「鉄筋の本数は適切か」「鉄筋のピッチはいびつでないか」「鉄筋のかぶりは浅くないか」など、構造物の品質評価に大きくかかわる情報を点検できます。

 

2.鉄筋探査の方法は?

鉄筋探査とひとくちに言っても、大きく「電磁波レーダー法」と「電磁誘導法」の2つの方法に分けられており、検査の目的によって使い分けることが基本です。

ここからは、それぞれの探査原理と仕組みに加えて、主な実施ケースについても詳しく説明します。

 

2-1.電磁波レーダー法の場合

電磁波レーダー法とは、専用機器を用いてアンテナからコンクリート表面に向けて電磁波を放射(送信)して行う鉄筋探査方法です。「パルス電磁波レーダー法」とも呼ばれます。

放射した電磁波は、コンクリートと電気的性質が異なる鉄筋や空洞、埋設管といった物質との境界面で反射された後、コンクリート表面へと再び出てから受信アンテナに反射信号として受信されます。電磁波を放射してから反射信号を受信するまでの時間で、鉄筋をはじめとした反射物体までの距離を検出できます。

電磁波レーダー法は、2Dの平面的な鉄筋探査と3Dの立体的な鉄筋探査が可能です。また、測定可能深度は200~600mm前後と、ある程度の深さまで探査できます。そのため、橋梁下部構造の品質管理を目的とした鉄筋探査や、深いかぶり厚の配筋の状況把握を目的とした鉄筋探査に適切です。

しかし、電磁波レーダー法は探査精度と探査深度がトレードオフの関係にあるほか、一般的に鉄筋の位置や分布を把握するために使用されることから、鉄筋の直径推定にはあまり適していません。鉄筋径推定には、基本的に電磁誘導法の鉄筋探査システムが用いられます。

 

2-2.電磁誘導法の場合

電磁誘導法とは、鉄筋とコンクリートがもつ電気的性質(導電率)と磁気的性質(磁性)の差異を利用した探査方法です。

専用機器に内蔵された試験コイルに交流電流を流すことによって発生する磁界(過電流による磁束)に調査対象物を配置し、コンクリート内部の鉄筋位置やかぶり厚を測定します。機器によっては、鉄筋径測定も可能です。

電磁誘導法におけるかぶり厚の測定では、コンクリートや水、樹脂といった透磁率の低い物質の影響を受けないことから、実際のかぶり厚に近い値を測定できます。そのため、橋梁上部構造の品質管理を目的とした鉄筋探査や、浅いかぶり厚の測定を目的とした鉄筋探査に適しています。

しかし、電磁誘導法の測定可能深度は10~100mm前後と電磁波レーダー法よりも浅く、非導電性の材料は磁界による影響が小さく、誘導される電流を十分に検出できません。そのため、電磁誘導法では空洞や塩ビ管の測定が困難となっています。

 

3.鉄筋探査機の選び方は?

鉄筋探査を実施する場合は、「鉄筋探査機」と呼ばれる専用の機器を必ず用いることになります。鉄筋探査機には多種多様な種類があり、対象物によっても向き・不向きが異なります。鉄筋探査機を選ぶ際は、下記の2点をポイントとしておさえておきましょう。

【鉄筋探査機を選ぶポイント】

  • 測定対象
  • 機器の種類

ここからは、測定対象によって選ぶ方法と、機器の種類によって選ぶ方法をそれぞれ詳しく説明します。

 

3-1.測定対象によって選ぶ

鉄筋探査機を選ぶときは、まず「測定対象となる埋設物の位置の深浅」を明確にしましょう。

埋設物が深い位置にあると想定される場合は、深いかぶり厚の測定に適した電磁波レーダー方式の鉄筋探査機がおすすめです。

反対に、埋設物が浅い場所にあると想定される場合や、特定の範囲における高精度な測定を求める場合は、電磁誘導方式の鉄筋探査機が向いています。

 

3-2.機器の種類によって選ぶ

鉄筋探査機はあらゆるメーカーから多くの機種が販売されており、メーカーや機種によっても特徴は大きく異なります。下記に、主要メーカーの鉄筋探査機の特徴を紹介します。

●ボッシュ|コンクリート探知機 D-TECT200JPS

探知結果がカラーディスプレイで表示される、使いやすさ・分かりやすさに優れた鉄筋探査機(コンクリート探知機)です。対象物の材料に応じて、7つの探知モードを選べます。

測定方式 電磁誘導法・電磁波レーダー法
最大探査深度 200mm

コンクリート探知機 D-TECT200JPS

●日本ヒルティ|ウォールスキャナー PS 85

間違った場所に穿孔・切断して埋設物を破損させてしまうリスクを最大限防げる、多目的鉄筋探査機です。軽量で大きなハンドルがついており、扱いやすさにも優れています。

測定方式 電磁波レーダー法
最大探査深度 200mm

ウォールスキャナー PS 85

●日本無線|ハンディーサーチNJJ200K

スマートフォンがディスプレイとして採用された、小型かつ軽量の鉄筋探査機です。「3D可視化ソフト」が付属されており、より高解像度で鮮明な探査画像を得られます。

測定方式 電磁波レーダー法
最大探査深度 450mm

鉄筋探査機 ハンディーサーチNJJ200K(3D可視化ソフト付)

ハンディサーチのレンタルはこちら

鉄筋探査機のレンタルはこちら

 

まとめ

鉄筋探査とは、コンクリート構造物の内部に埋設された鉄筋や管などの配筋位置、深さ、配筋状態を、専用の探査機を用いて表面から確認する検査です。

建物や構造物を破壊・損傷させることなく、内部の鉄筋コンクリートの配置や状態を調査できる非破壊検査の一種であり、改修工事の事前調査や竣工時の検査などさまざまなシーンで実施されています。

鉄筋探査機は、購入だけでなくレンタルで利用することも可能です。鉄筋探査機を低コストで用意したいという方は、ぜひ株式会社ソーキにお問い合わせください。

ハンディサーチのレンタルはこちら

鉄筋探査機のレンタルはこちら