トルクレンチとは?必要性・種類・使い方・選び方などを解説

トルクレンチは、ボルトやナットを適正な力で締め付けるための重要な工具です。トルクレンチを使うことで、締め付け具合を正確に管理し、部品の緩みや破損を防ぐことができます。

当記事では、トルクレンチの基本的な仕組みや種類、使い方、選び方、注意点について詳しく解説します。適正なトルク管理の重要性を理解し、適切な工具を選ぶことで、作業の安全性と効率を高めることができます。トルクレンチの基本を押さえて、正しい使い方を習得しましょう。

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1. トルクレンチとは?

トルクレンチとは、ボルトやナット、ねじを適正な力で締め付けるための工具です。作業中に使用するものであり、既に固定されているボルトやナットの締め付け具合を測るものではありません。

締め付けの強さを測る際は「トルク値」という単位を用います。トルク値とは、ボルトなどにかかる回転力のことで、長さ(メートル)に、力の強さ(ニュートン)を掛けて計算します。トルク値の単位は、N・m(ニュートンメートル)です。

 

1-1. トルク管理の必要性

ボルトやナットには、適正なトルク値が設定されています。締め付け力が弱いと、部品をきちんと固定できず、緩みや外れの危険性があります。一方で、トルクが適正値よりも高い場合も注意が必要です。

ボルトを締め付けるとき、ボルトには引っ張り力がかかっています。引っ張られたボルトは、元に戻ろうとして、部品に圧縮力をかけます。この引っ張り力と圧縮力のバランスがとれた状態が、適正な締め付け具合です。

規定値以上にボルトを締め付けると、ボルトにかかる引っ張り力が強くなり、ボルトが伸びて戻らなくなります。これを「オーバートルク」と言います。オーバートルクでは、ナット部分が破損する、ねじ山がつぶれる、などのトラブルが発生しやすく危険です。

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2. トルクレンチの種類

トルクレンチは、仕組みや機能によって、いくつかの種類に分かれています。また、ヘッドの形状やトルク値でも製品が変わるため、用途に合わせて選ぶことが大切です。ここでは、仕組み別にトルクレンチの種類を紹介します。

 

2-1. 直読式

直読式は、トルクレンチに表示された目盛りを直接読み取って作業するのが特徴です。直読式には、ダイヤル型と、プレート型の2種類があります。

ダイヤル型は、力点と作用点の中心部分に目盛りと針が設置されているタイプです。比較的正確に読み取れるため、検査や測定用途に向いています。ただし、機器が重く、高価である点がデメリットです。

プレート型は、力点の上部に目盛りが設置されています。一定の力を加えたときに生じる金属の歪みを測る仕組みで、ダイヤル型よりもシンプルな機構です。プレート型は比較的価格が安い一方、力点位置を正確に合わせないと精度が狂うため、操作に慣れが必要です。

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2-2. シグナル式

シグナル式では、あらかじめ設定したトルク値を超えると、音や振動が伝わります。目盛りを確認する手間がなく、連続作業に最適です。ただし、締めすぎるとオーバートルクになるため、音や振動に慣れる必要があります。シグナル式トルクレンチは、プレセット型、単能型に分かれています。

プレセット型トルクレンチは、使用前にトルク値を設定し、設定値に達すると「カチッ」とした音や振動が出る仕組みです。既存の工具に取り付けて使用できる、外付けタイプもあります。単能型は、プレセット型と同じ仕組みですが、トルク値が固定されていて変更はできません。

 

2-3. デジタル式

デジタル式は、機器にかかる力をセンサーで読み取るのが特徴です。デジタル式は、数値が表示される直読式と、音や振動が出るシグナル式、両方の機能を併せ持ちます。

デジタル式のメリットは、作業者によるブレが少なく、正確にトルク値を測れることです。汎用作業だけでなく、検査や測定などにも向いています。デジタルタイプは利便性が高い一方で、直読式やシグナル式よりも高価な傾向があります。

 

3. トルクレンチの使い方

トルクレンチの使用手順は、以下の通りです。

1 トルク値を設定する

プリセット型もしくはデジタル式のトルクレンチは、最初にトルク値を設定します。プリセット型は、ロックを解除してからグリップを回して目盛りを合わせ、再度ロックつまみを回します。デジタル式は、電源を入れ、説明書に従ってボタンで操作しましょう。

ダイヤル式は、トルク値の設定が不要です。作業に入る前に、ダイヤルの主針と置針をゼロに合わせておきましょう。

2 ボルトやナットにトルクレンチを装着する
トルクレンチは、正しい力点に力をかけることが重要です。基準点に印がついている場合は、印に中指を合わせて握ります。印がない場合は、グリップの中央が基準です。
3 設定値までボルトやナットを締める
トルクレンチをボルトやナットに装着したら、設定値まで締め付けを行います。シグナル型の場合は「カチッ」という音と振動が出るタイミングが目安です。デジタル式は、設定値になると通知音が鳴ります。ダイヤル式では、目標トルクまで目盛りを合わせます。
4 トルク値の設定を解除して保管する
締め付け作業が終わったら、トルク値の設定を解除して保管しましょう。特にプリセット型は、バネの力を利用しているため、そのままにしておくと機器に圧力がかかり、精度が狂う原因になります。デジタル式の場合は、本体の電源を落として保管します。

 

4. トルクレンチの選び方

トルクレンチを選ぶ際は、以下の3つを基準に判断しましょう。間違った機器を選ぶと、そもそも使用できない場合や、作業が不十分で思わぬ事故につながる可能性があります。

用途にあわせて選ぶ

トルクレンチは、種類によって、推奨されている作業内容が異なります。一般的に、連続作業に向いているのは、作業効率のよいシグナル式です。1種類のボルトを使う場合は、単能型が安価で便利です。

反対に、検査作業や計測にはダイヤル式が推奨されています。シグナル式は、作業者による誤差が生じやすく、検査などには使えません。

デジタル式は、あらゆる用途に適しており、データによる作業管理にも使用できます。

ボルトやナットの形状にあわせて選ぶ

トルクレンチの先端部分は、ソケットを装着するタイプが主流です。ソケットの差し込み口のサイズは、機器によって異なり、互換性はありません。

ソケットを装着するタイプ(ラチェットヘッド)以外にも、スパナタイプや、モンキータイプのヘッドがあります。ヘッド交換タイプは、先端部を自由に付け替え可能です。

ねじを締め付けるときのトルク管理には、トルクドライバーを使います。

トルク値にあわせて選ぶ

トルクレンチには、測定可能な最大トルク値が設定されています。設定したいトルク数が、機器の最大トルクと近すぎると、故障の原因になるため注意が必要です。設定トルク値が、最大トルク数の70~80%となるものを選びましょう。

 

5. トルクレンチに関する注意点

トルクレンチは精密機器であるため、正しく扱うことが重要です。工具本体の故障や工事の不備を防ぐためにも、以下の点に注意しましょう。

正しい位置でトルクレンチを握る

トルクレンチは、力点からの距離と、力の強さによってトルク値が計算されます。そのため、設定されている位置でトルクレンチを握らないと、正しい力配分になりません。正確にトルクを測るためには、正しい位置で持ち、ゆっくり力をいれることが大切です。

トルクレンチを反対に回さない

トルクレンチは、ボルトやナットの締め付けのみに使いましょう。本来の用法と反対に回すと、機器に過剰な負荷がかかり、精度の低下や故障の原因になります。

トルクレンチは、基本的に右回転・左回転が決められており、締め方向と反対に使用してはなりません。両方向に回せるタイプもありますが、ボルトを緩めるために使うのは厳禁です。締め付けを緩めたい場合は、通常のレンチを使います。

適切に保管する

トルクレンチは精密機器であるため、保管方法にも注意が必要です。高温多湿を避け、埃がつかないようにケースに入れて保管します。振動が多い場所に置くのも避けましょう。

また、トルクレンチ使用後は、トルク設定の解除も大切です。トルク値を最小にすることで、機器内部のスプリングにかかる負荷を抑えられます。トルクレンチの精度は定期的に確認し、安全に使えるようにしましょう。

 

まとめ

トルクレンチの種類には、直読式、シグナル式、デジタル式があります。それぞれの特性を理解し、用途や作業環境に合ったものを選ぶことが重要です。使用前にはトルク値を設定し、正しい位置で握り、設定値に達するまで締め付けを行います。

また、トルクレンチは精密機器のため、適切な保管とメンテナンスが欠かせません。正しく使うことで、機械の安全性を保ち、作業の効率を向上させることができます。この記事を参考にして、トルクレンチの基本知識を深め、適切な工具選びと使い方を実践してください。

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