SS(浮遊物質量)は水質の基準!基準値と測定方法を解説
河川や排水が発生する工場では、環境保全のため水質を一定に保つよう求められます。水質の基準となるのがSS(浮遊物質量)であり、環境省・国土交通省によって基準値が定められています。基準値を超えないよう、企業は定期的にSSを計測することが必要です。
当記事では、SSとは何かを解説した上で、計測する方法を詳しく説明します。環境保護に注力し、行政の指導が入らないようにしたい方は当記事をぜひ参考にしてください。
1. 水質の基準となるSS(浮遊物質量)とは?
SSとは「Suspended Solid」の略称で、水中に浮遊する物質の量を指します。SSの対象となるのは、水中に浮いている粒径2mm以下の不溶性物質です。2mmより大きい落ち葉やプラスチック、動物の死骸などは水質分析の対象になりません。
SSに含まれる成分は、粘土鉱物に関係する微粒子、植物性プランクトン(死骸を含む)、下水、産業廃棄物内の金属粒子・有機物などです。SSが多いと、水生生物が死滅する、水中植物の生育に影響が及ぶ、といった環境悪化が懸念されます。なお、澄んだ河川には粘土性の物質が多く、汚染が進んだ河川には有機物が多い傾向にあります。
出典:岐阜県「浮遊物質量」
水質測定においては、法律によってSS値に基準が設けられています。SS値に基準が設けられている測定は、排水基準、河川や湖沼の環境基準、下水道への放流基準です。
1-1. SSと濁度の違いは?
SSは水中に浮遊する物質量を測るのに対し、濁度は水の濁り度合いを測定します。SSと濁度の違いは「水に含まれる成分に着目するのか」「濁り具合そのものを調査するのか」という点です。
濁度の測定は主に濁度計で行われ、カオリン標準液もしくはホルマジン標準液を使用して測定値を算出します。濁度計には「透過光測定方式」「散乱光測定方式」「透過光・散乱光演算方式」「積分球測定方式」という4つの方式があり、方式によって測定値に差異が出ます。多くの場合、調査対象の水が澄んでいるほど濁度が低く、濁っているほど濁度が高い傾向です。
なお、SSと濁度に直接的な相関関係はありません。濁度が低い場合も、肉眼で見えにくい水中の浮遊物質によって、SS値が高く出る場合があるためです。
2. SSの基準値
SSの基準値は、国土交通省と環境省によって決められています。ここからは、SSの基準値について、河川と水道の両面から解説します。
以下は、国土交通省と環境省が公表しているSSの環境基準値を示した表です。SSの単位は「mg/L」で表し、「1リットル中の浮遊物質のmg量」を示しています。
SSにかかわる環境基準
基準値(mg/L) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
AA | A | B | C | D | E | |
河川 | 25以下 | 50以下 | 100以下 | ごみ等の浮遊物が認められないこと | ||
排水基準 | 200(日平均150) | |||||
下水排除基準 | 40以下 |
表の「AA」~「E」は、河川における類型を示しており、それぞれの類型で河川の利用目的が異なります。「AA」~「B」は適切な浄水処理により水道水として使用できる河川です。「C」~「D」は工業用数や農業用水として使用され、飲み水には適していません。
河川における環境基準では、水産生物の生育に即したSS値を定めています。「AA」~「B」の河川におけるSS値「25mg/L以下」は、水生生物の生育環境が維持される程度です。浮遊物質の少ない河川でも、ある程度のSS値が測定されることが確認されているため「25mg/L以下」という基準を定めています。
「C」の「50mg/L以下」は、魚などの突然死が防げると言われている数値です。「D」の河川は工業用水や農業用水であり、農業試験場の実験結果により「100mg/L」を限度として定めています。「E」は、環境保全を目的に、日常生活で不快さを感じない程度が目安です。
なお、排水におけるSS値は、「水質汚濁防止法」に基づき、法に定める「特定事業場」で適用される基準です。また、下水排除基準のSSは「下水道法」によって定められており、基準を超える値が検出される工場排水などは適切な排水処理をする必要があります。
2-1. SSが高いとどうなる?
SSが高いと、魚の死滅や悪臭など、環境に悪影響を及ぼすおそれがあります。魚はエラで呼吸しており、浮遊物質によってエラを塞がれると、呼吸ができません。死滅した魚は腐敗し、さらなる汚濁や悪臭の原因となります。
また、水中の浮遊物質による太陽光の遮断は、水生植物の光合成を阻害する要因です。川底に沈んだ浮遊物質も、エビやカニ、水生昆虫などを死滅させるため、環境にマイナスの影響を及ぼします。水質汚染が進んだ河川が農作物に与える影響も見逃せないため、高いSS値によって被るダメージは深刻です。
水質環境にかかわる法令で定められたSSは、法的基準を超えると行政から指摘を受けます。行政から指摘文書が届いた場合、講じる改善策を文書で返答し、分析結果を提出しなければなりません。指摘を受けたまま対策せずにいると、罰則や施設の使用停止命令を受ける可能性があります。
3. 水質調査でSSを測定するには?
SSの測定は、ろ過法で行われるのが一般的です。ろ過法は手間と時間がかかるため、急を要する場合や、現場ですぐに数値を確認した場合には、測定器を使用することもあります。ここからは、SSを測定する具体的な方法を解説します。
3-1. ろ過法で測定する
ろ過による測定は、「ろ過する前のろ過材の重量」と「ろ過した後のろ過材の重量」を比較し、SS値を算出する方法です。ろ過を行う際の注意点として、粒径2mm以上の物質が入らないよう、試料内をふるいに通しておきましょう。
ろ過に必要なものは、孔径1μm・直径24〜55mmのガラス繊維ろ紙(ろ過材)、105〜110℃に温度が調節できる乾燥器です。手順はまず、ろ過材をろ過装置に取付けて洗浄し、乾燥機で加熱・冷却した後、質量を求めます。次に、質量を計測したろ過材を入れ、浮遊物質をすべてろ過材の上に落とせるよう吸引ろ過しましょう。最後に、ろ過材を乾燥機で加熱・冷却し、質量を測ります。
SS値を算出する式は、浮遊物質量=(ろ過乾燥後のろ過材と浮遊物質の総量-ろ過乾燥前のろ過材の質量)×(1,000/試料量)です。ろ過法は手間と時間がかかる分、誤差が少なく、正確な数値を算出することができます。
3-2. 専用の測定器を使う
測定器でSSを測る場合、通常の濁度計では測れないため、「SS濁度計」などの名称が付いた専用の機器を選びましょう。SSと濁度に直接的な相関性はないと言われているものの、一定の比例関係が認められています。測定器によるSS値の算出は、濁度からの換算による簡易的な方法です。
測定器は主に、試料を入れる部分、操作スイッチやレバー・ボタン、SS値が表示される画面で構成されています。手順通りに操作することで、専門知識がなくてもSS値が測れるのが測定器のメリットです。なお、センサー装置を測定対象の水に浸してSS値を測る手のひらサイズのポータブル機器もあり、持ち運びに便利です。
測定器によるSS測定は「測定器の電源をオンにする」「センサーと試料を接触させる」という2ステップで行え、ろ過法よりも用いる測定器具が少なくすみます。水質の良し悪しを判断するため、手軽な方法を選択するならば、測定器でのSS測定はおすすめの方法です。
まとめ
水質を計る際の基準となるのがSS(浮遊物質量)であり、SSが高いと環境悪化につながってしまいます。環境省や国土交通省はSSの基準を定めているため、特定事業場などではSSの数値の計測が必要になるでしょう。
正確なSSを測定する際はろ過法を用いますが、簡易的にSSの数値を確認できる「SS濁度計」などでも計測が可能です。SS濁度計はレンタルも可能なため、SSの数値を調べる必要がある方はぜひソーキにご相談ください。