
第7回目は、「トンネル工事」について第2弾です。
前回から現場おやじのもっとも得意とする『トンネル』についてですが、その第2弾は『トンネルができるまで?』『日本の難工事トンネルの紹介?』『トンネルで使用される機械、計測機器』などについて語ります。
トンネルができるまで?
トンネルは以下のサイクルの繰り返しでできていきます。
①掘削
掘削方法には機械掘削と発破掘削があります。軟らかい地質は機械掘削で、機械で掘れない時はダイナマイトを使った発破掘削で行います。
機械掘削にはもぐらみたいなロードヘッダーや油圧シャベルの先にイボイボがついたツインヘッダーなどの機械を使います。
発破掘削はジャンボという機械で孔を掘り、その中に人力でダイナマイトを詰めて、スイッチを入れて山を爆破する方法です。トンネルって狭い空間なので、発破した時の爆破音はすさまじいです。飛び上がるほど、ビックリします。
機械掘削状況
発破掘削状況
ロードヘッダー
ツインヘッダー
②ずり出し
掘削した土(ずりと言います)をトンネルの外まで運ぶ作業です。大きく分けて、ダンプトラック式とベルトコンベアー式があります。トンネルの大きさによって、ダンプトラックが10t級ダンプだったり、重ダンプ(大きいダンプ)だったりします。
ずり出し状況(ダンプトラック式)
③支保工
掘削が終わったところに支保工(アーチ状になったH型の鋼材)を建込みます。エレクターと呼ばれる特殊な機械で行います。
支保工建込み状況
④吹き付け
バッチャープラントで作ったコンクリートを、吹き付けロボットという機械で、先ほど建込んだ支保工を間に吹き付けます。天(上部)の方など吹き付けたコンクリートが落ちてこないように、急結材(すぐ固まる薬材)を混ぜてコンクリートを吹き付けます。
吹き付け状況
⑤ロックボルト打設
吹き付けたコンクリートにロックボルト(鉄筋棒)を打設します。
ロックボルト打設状況
①→②→③→④→⑤がトンネル作業の1サイクルです。このサイクルをず~と繰り返していきます。1サイクルで進むのは1.0m~1.5mです。1日昼夜作業でだいたい4サイクル=4.0m~6.0m/日ぐらい、地道な作業の繰り返しです。
⑥防水シート張り
①~⑤の作業が終了した箇所から次に防水シートを張っていきます。山の中には多くの地下水がありますので、どうしても掘ったところから水がしみ出てきます(湧水)。その水を防水シートという薄い(厚さ1.0mm)ビニールシートで防水します。
防水シート張り状況
⑦二次覆工コンクリート打設
防水シートの内側にコンクリートを打設します。厚さは20cm~35cm、セントルという巨大なアーチ状の移動式型枠を使ってコンクリートを打設。この内側の面がいつも走っているトンネルで見ている風景になります。このコンクリート打設は昼勤で行いますので、地元の生コンクリート工場から出荷されます。
二次覆工コンクリート打設状況
ここまでが、トンネル掘削工事になります。その後に行う舗装工事は専門の道路会社が行い、施設(案内板、消火設備など)設置も専門業者が行い、別発注工事になります。
日本の難工事トンネル
・飛騨トンネル(東海北陸自動車道・岐阜県)
道路トンネルとしては日本で3番目の長さで、総延長はL=10.71kmあります。このトンネルは、『高圧大量湧水、軟弱地盤、崩落』による難工事で、道路の開通が当初予定から3年9か月も遅れました。あまりの難工事の為、当時の小泉首相が視察に訪れ、ニュースにもなっていました。
・北陸トンネル(JR北陸本線・福井県)
福井県の敦賀駅~南今庄駅間に位置しており、総延長はL=13.87kmあります。ここは、急勾配の厳しさのみならず、地盤の脆弱さによるがけ崩れ、冬期には雪国特有の雪害にも悩まされていました。1972年11月には、北陸トンネル内を通過中であった急行の食堂車で火災が発生し、30名の犠牲者を出した事故もありました。
・親不知トンネル(北陸自動車道・新潟県)
富山県から新潟県に入ったところから連続して続くトンネルの一つです。飛騨山脈(北アルプス)の日本海側の端にあたり、断崖が続いています。越後と越中の間を往来する旅人は、この断崖を海岸線に沿って進まねばならず、古くから北陸道(越路)最大の難所として知られてきました。
トンネルおよびその間の橋梁工事もこの断崖絶壁と豪雪による難工事になっています。
因みに、親不知・子不知の名称の由来は、断崖と波が険しいため、親は子を、子は親を顧みることが出来ない程に険しい道であることから、とされています。
トンネルってどうやって作るの?
①建設機械
トンネルで使用される建設機械は前述の通り、ジャンボ、ロードヘッダー、吹き付けロボットなど特殊機械がほとんどです。建機レンタル会社からレンタルされる商品は路盤整備、排水溝掘削などで0.25立方メートルクラスの油圧シャベルやハンドローラー、コンクリート打設時のバイブレーター、機械修理に使用する溶接機や発電機、計測や点検で使用する高所作業車、休憩用のハウスやトイレ、現場で使用する現場車、軽トラック、散水車、クレーン付トラックなどになります。
②計測機器
トンネルで使用する計測機器は、トンネル坑内の環境測定に【粉じん計・風速計 粉じん計】(トンネルを掘削する際には、『ずい道建設工事における粉じん対策に関するガイドライン』に粉じん濃度を測定する規則になっています。)、【有害ガス検知器 マルチ型ガス検知器】だったり、発破で発生する振動、騒音を計測する【音響・振動計測器 騒音計、振動計】、覆工コンクリートを打設する時のコンクリートの充填状況を確認する【鉄筋探査・コンクリート試験 ジューテンダー】、コンクリートの養生温度を測定する【気象・水文観測機器 記録温度計】、測量機関係【測量機 レベル、トータルステーション】になります。